心の行方
――……あの冬の出来事が一瞬で過ぎ去っていく。
あいつらのところに戻るのも、嫌だ。
元々一人だから平気だ。強がりじゃない、その方が楽だった、と、無理に環境を変えた結果改めて思ったんだ。
マンションに急ぐ帰路の途中、スマホが震えた。
通知に、大きな溜息が思わず出る――。
近くのチェーン店に入ると、
「新しい恋人はできた?」
「いきなり呼び出してそれかよ」
周りの視線を奪うほど整った顔立ちの沢城が、テーブル席にいる。
地味な俺とは大きく違う。
わざと跳ねさせた髪型で、茶髪はさらに明るくなっていた。
「で、何の用」
「何の用って、もうすぐ冬休みだからさ、今年は帰省しないの?」
「するけど、それだけなら別にスマホで」
「ちゃんと会って話すのは大事だよ。他愛のないことでも、ね」
こいつに言われるとは……。
「はいはい、その通りだな」
実際、今付き合いがある奴らと話すより穏やかになれるし、楽だ。
隣に、彼女がいるんじゃないかって気が、微かにある。
空っぽの隣を横目で覗いてしまう。
「いいなぁ」
「何がだよ」
「俺の隣にいないんだもん」
「俺の隣にもいない」
お互い鼻で笑う。
バカにしあうこの関係はいつまで続くのだろう、腐れ縁、悪友。
顔を見るたびに思い出す、あの冬。
こいつと一緒に死んで詫びよう、そう毎日考えた。
大学に進学するまでの間、何度あの現場に通っただろう。
毎晩、毎時、沢城に会うので嫌気が差したこともあった。
今思えば、お互いに阻止しあっていたのかもしれない。
「あー生きちゃったなぁ」
沢城の爽やかな笑みを訝しげに睨んだ。
「ずっと空っぽ、ないんだ」
「……俺もだ」
「でも、ひとつだけ」
「俺もある」
「はは、気持ちわる」
「ほんとにな」
好きだ。今も、変わらない。
彼女のことを愛している。忘れることはない。
美化してもいけない、彼女を消してしまったのは、俺達だ。
死んではいけない。俺を殺していいのは、彼女だけ。
迎えに来てくれたら、いつだって会いに逝くよ……――。




