思い出探し
家族葬……でも家族って、心と父親だけ。
帰省したところも、誰か親戚がきたこともないはず。
祖父母すらいるのか分からない、よくよく考えたら不思議な関係の親子だった。
沢城から送られてきた動画を見る覚悟ができず、ずっとスマホを片手にふらふら歩く。
空っぽのカーポート、あれから1週間経ったけど、一度も帰ってこない。
「春斗、もう空き家になってる」
振り返ると、父さんがやってきた。
皴を少し寄せて、目を細くさせている。
「空き家って、引っ越したの?」
「そう、引っ越したんだ。挨拶もさっさと済ませて……もう空っぽだよ。思い出の写真くらい分けてもらえるか、聞いてみたんだけど……ないって一蹴されて終わり。悪く言いたくないが、心ちゃんのお父さんは、類を見ないくそ野郎だ。内緒にしといてくれ」
「叩いたりしたから?」
「以前からな。おいで、春斗……ツライか? どんな気持ちだ?」
どうって、なんか何もかも空っぽな気がする。
最初は父さんの言葉を信じられなかったし、内容すら入ってこなかった。
後悔とか悲しみとか怒りとか、感情が全て持っていかれたような気がした。
「分かんない……今、なにも感じなくて……ツライとかむかつくとか、なくて……でも、俺が酷いことして」
「自分を責めちゃいけない。今はまだ無力感や独りぼっちだって感じるかもしれないが、ずっと続かせちゃいけない。この現実を、明らめ、勇気をもって受け入れる努力を、しなくちゃならない」
そういう父さんの声は微かに震えていて、感情を抑え込もうとしているのが分かった。
「父さんは、つらい?」
「あぁ、めちゃくちゃ。素直で優しい子で、母さんも、娘みたいに思ってたんだ……真実も分からない、葬儀すら参列させてもらえない……分かってたけど、所詮、他人だからな……」
「真実……」
「何も分からないんだ、事件性がないって、それで終わり」
徐々に赤く染まっていく、父さんの目をジッと見た。
片手にぶら下がるスマホを、ギュッと握りしめる――。




