人間の本質Ⅱ
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「ちょちょちょ!何を言って」
爆弾発言に思わずバルトラの頭を掴んで下げさせようとするが、既に張本人は三人の近くへと歩み寄っていた。
(な、何考えてんのよほんとに!?あの三人に喧嘩を売るなんて、馬鹿にも程が……)
第一声を発したのは、三人組の一人。
眼鏡をかけた青髪の男だった。
「君、聞き間違いじゃなければ、今僕たちの事を馬鹿にしてなかったかい?」
「あぁ。馬鹿にっつーか、事実を言ったまでな」
「ふぅん。そんなに僕たちの事が嫌いなのかな?」
三人の周りにいた生徒達の一部は、バルトラに対して何か文句のような事を言っているが、彼はその情報をシャットアウトして、三人の言動に目を配る。
(この眼鏡は冷静そうだが、問題はこっちだな)
腹の探り合いのような会話を続けながら、青髪男の隣にいる、今にもこちらに襲いかかってきそうな桃色の髪をした女生徒を警戒していた。
「いいや?お前達の事なんて知りもしねーよ」
「なに……?僕たちの事を何も知らないというのかい?」
「おう。名前もさっぱり」
(あの好戦的な感じ……。入学当初のクリスを思い出すな)
からかうような手振りで青髪男を煽ると、見事に火がついたのか、男の眉間には少し皺が寄っていた。
「そうか……。君はつまり、身の程を弁えずこの場にのこのこと現れた哀れな男、という認識で良いのかな?」
「うーん。身の程、か。その言葉、そっくりそのまま返しておこうじゃねぇの」
男の真似をして尊大な態度で言葉を返すと、寄っていた皺が更に寄り、同時に警戒していた女生徒が殴りかかってきた。
(やっぱりなぁ!)
それとなく準備を進めていたバルトラは、女が踏み出した一歩で槍をインベントリから取り出し、出された鋼鉄の拳を受け止めた。
「!!!」
「おいおい危ねぇな。今はお話中だろ?ピンク縦ロール」
「ちぃっ!!!」
今まで感じた事の無い異様な雰囲気を感じ、女は咄嗟に元の位置へと戻る。
視線を再び青髪男へと戻すと、その顔は先ほどの怒りのようなものではなく、驚きのようなものに変わっていた。
(どうした?今ので驚く要素はあったか?)
「おいおいどーしたよ。せっかくのイケメンフェイスが崩れてるぞ?」
「っ……。今のはまぐれだ。そうに違いない……」
「なんて?聞こえねーんだけど」
困惑が見えた青髪に、バルトラは更に油を注ぐ。
「あ、まさか!こんな弱い奴に縦ロールの攻撃が塞がれる事はない!とかたかを括ってたんじゃねぇの?」
「ち、違う!」
(食いついた)
「そうかぁ?まぁ最も、お前が手を出したわけでも無いくせに驚くのも意味が分からねぇけどな。この根性なし」
「言わせておけばぁっ……!」
最初に見せていた余裕はどこへやら。
既に男の堪忍袋の尾は切れかかっており、今にもバルトラへ切先を向けんとしている。
(だが来ない……。流石にこの場で暴れるのは、とでも思ったんだろうな)
取り巻きにいた生徒達も、バルトラへ向ける視線は怒り一色。
だが、その中でも最後のグループのリーダー__金髪で糸のような細い目をした生徒だけは、どれだけ煽ってもただ笑みを浮かべてこちらを眺めているだけだった。
(伊達にハイクラスじゃ無い、って事だな……)
先ほどのピンク縦ロールの攻撃を受け止めた時にも感じた。
(技術的なレベルはまだ分からねぇが、ハイクラスなだけあって魔導機自体の質は高い。青髪の手に持ってる剣もそうだ。綺麗にまとまって雑になってない。戦闘の勘って言う面で見るなら縦ロールもやれるな)
ピンク縦ロールの攻撃を受け止めた時、バルトラは既にインベントリの中から研いだ槍を取り出そうとしていた。
(あいつは受け止められたことに驚くだけじゃなく、今の状態だと刺されることを悟って後ろに跳んだんだ。
煽られて向かってくる奴が下がる理由なんて、それくらいしかねぇしな)
そして目の前で散々煽り倒した青髪も、結局剣をバルトラへ向ける事なく、自ら深呼吸をして怒りを鎮めようとしている。
(流されやすいが、自分の怒りをある程度はコントロールできている。ま、四年生なら当然だろ)
そう考えている間に、青髪男は落ち着いたのか、再び人を小馬鹿にしたような態度で話し始めた。
「ふん。まぁ良い。そこまで僕たちを目の敵にしていると言うのなら、勝負してやっても構わないよ?」
「はぁぁ?勝負ぅ?」
「そうさ!僕たちがミドルやローの奴らにわざわざ教えにきている所に押しかけて来ているんだから、僕たちを認めたくないんだろう?」
何やら確定事項のように話されているが、バルトラにははなから勝負する気などなかった。
(なんでそんな話になってるんだよ……。お前らを認めたくないもなにも、よく知らんし)
突っかかったのは、あくまで発展会を作ったメリーの努力が報われないことに腹が立っただけである。
(こういうのって、乗っとくべきなのか?)
考えている間にも、青髪男は勘違いでどんどん調子に乗っていく。
「どうした?何も言えないのかい?そうだろうそうだろう。なんせ僕たちは最強なんだから。君が認めたくないと思っていても、その事実は揺るがないからねぇ!!」
(なんかあいつの気分が良くなりだしたぞ)
「ほら。言ってみなよ。勝負してくださいってさ?あ、言えないかぁー?言っちゃったら口だけなのがバレちゃうもんねぇー??」
先ほどまで何も言えずにいた反動か、元々こういう感じだったのか分からないが、完全に男はバルトラが勝負など出来る訳がないと思い込んではしゃいでいた。
(乗ってもしょうがないとは思ってたが、ここまで言われると流石に癪だな……)
自分たちはもうすぐ卒業する身であり、そこには当然メリーも含まれている。この四年生より下の学年の生徒達も多くこの場に訪れていることだろう。
ということは、この暗黙の了解とやらは、こいつらが卒業した後でも続いていくに違いない。
そうなってしまえば、彼女が発展会を作った意図が全て無駄になってしまう。
(自分自身でならともかく、他人が広げてくれたチャンスを他のやつらが台無しにすんのは、最悪だ)
無論、今後の魔導の発展や諸々の事も考えた上で、バルトラが取った行動は____
「いいぜ。勝負しよう。内容はお前達が決めて良い。どんな場所で、どんな事をし、勝敗はどうするのか。
終わった後に勝敗条件を変えるなんてのは、するはずねぇよな?」
「え、ほんとにやるんですか?!」
一連の会話を静観していたマルファは、思わず大きな声で叫んでしまった。
(ほんっとに何考えてるのこの人!?あなたみたいな人がこの三人に勝てる訳が……)
だが彼女は、決めつけていた。魔導学園に新たな風をもたらした五年生たちの事を何も知らず、発展会のルールすら知らないような人が、あの三人に啖呵を切れるほどの能力を持っているはずが無いと。
「受けるんだね?身の程知らずのお馬鹿くん」
「おいおい、大馬鹿に言われたかねーよ」
「ぐっ……!まぁ良いでしょう。その勝負、受けて立ちますよ。3日後、ここにまた来てください。後はその時に言います」
「いいぜ。3日後だな」
トントン拍子に決まっていく対決日程に、マルファは更に頭を抱えてしまう。
(はぁ……。とんだアホの人と知り合いになっちゃった)
「これだけは言っておきます。この勝負に貴方が負けたら、この学園から即刻出ていってください。学園のルールを守らない奴は要らないのでね!」
(言われなくても後一年で出ていくっつーの)
「あぁ。構わねぇよ」
両者共に余裕そうな笑みを浮かべた後、バルトラがマルファ達の方へと戻っていこうとした所、青髪男が呼び止めた。
「君への手向だ。名前くらいは名乗っておこう。僕はザルディン・ネル・アトモス」
「カナリア・ツイ・イースだごらぁ!」
「アラヤ・ユル・レーテ……」
「さぁ。君の名前も、一応聞いておいてあげようじゃないか」
少し考えた後、バルトラは三人の方を向いて言った。
「バルトラ。お前達にはそれだけで十分だ」
(えっ……?)
そうして、バルトラは再び背を向け、マルファ達がわらわらといる場所へと戻った。
「さ、続きを開始しようか。僕たちに聞きたい事がある人はまだいるんだろ?」
ザルディンの一声で再開された発展会。
その輪の中にマルファは入り込む事なく、一人でその場を離れたバルトラを追っていた。
「あ、あの!バルトラって、もしかして」
その名は、兄から聞いた事がある。
誰よりも才能を持ち、努力を怠らない天才が、自分たちのクラスメイトにいたと。
しかし、その人物は一年生の時にいなくなったとも聞いた。
「あれ?俺のこと知ってんの?」
「多分、ですけど。バルトラ・フォウ・グリストさん……ですよね?」
「お、よく分かってんじゃん」
その頃、入り口付近でその様子を見ていたメリーは___
(誰?誰ですのあの人は?わたくし達以外にバルトラ様を知っている人がいると言うの?いや待てわたくし。ミドルやローの方で五年生の方なら一年生の時に見かけているはず。でもバルトラ様と親しく話されていたと言うことはそれほどの仲ということ。一年生の時では他のクラスと話す機会があったとは考えにくい。であれば本当に誰なんですの……?あの方は)
会場で起きた事よりも、バルトラと話している女生徒の事で頭がいっぱいになっていた。
いかがでしたか?
いかにも小物感ぷんぷんな奴らですが、ちゃんとハイクラスなんで……。
お楽しみに!




