魔皇戦第四回戦〜信念〜
更新できずすみません。
最新話です!!
第三回戦での異常事態から少し経ち。
一時はこのまま中止になることも考えられていたが、運営が三人の無事を確認したことで、魔皇戦を続ける事が決まった。
そして今、円形広場では激闘が繰り広げられていた。
「ちっ……。あの女の射撃めんどくさいねん!」
(それに、矢の本数が減っとる気がせえへんのよな……)
四方八方に次々と放たれる矢を、時には避け、時には魔法で相殺しながら、魔法学校代表のラルファス・カサンドラは叫んでいた。
「めんどくさい……。これだけ打ってるのに当たらない……」
(打つのをやめたら……こっちがやられる……!)
一方。
絶え間なく矢を放つ魔導学園代表のトレーネ・クァンセも、大量の矢を的確に捌くラルファスに苦手意識を感じていた。
そんな中、この壮絶な弾幕の中を切るような声が響く。
「はっはー!!二人だけで遊んでると、僕嫉妬しちゃうなー!」
そう彼女が叫ぶと、一帯を飲み込みそうなほどの強烈な竜巻が発生し、2人に襲いかかる。
『おぉっとー!ここでレイア・オリエント選手の風砂が吹き荒れるぅ!!皆さん目を瞑った方が良いですよぉ!!席自体は守られてますから大丈夫ですけどねぇー!!』
レイアが発動したのは第5階層魔術の風砂。
大きな砂嵐を起こして自身で操作し、自分の身を隠したり嵐に乗せて攻撃をすることができる魔術である。
「僕の姿も見えないよねー!さぁ、まだまだ行くよ!
空刃、二重!」
レイアによって作り出された無数の刃が、風に乗って二人を襲う。
「当たったらすこーし、痛いかもね?」
砂嵐の波に乗りレイアの声が聞こえるが、どこからでも聞こえてくるようで、居場所の見当がつかない。
「本人はあのデカい砂嵐の中にいるみたいやな……」
不規則な風と砂が舞い、時折見えない刃も飛んでくる状態では、先程まで戦いを繰り広げていた二人も手を止め、避けたり矢で撃ち落としたりしてなんとかその攻撃を凌いでいた。
「こっちもこっちでめんどくさいねん!しかも多っ!」
「これじゃ……矢が飛んでくれない……」
ラルファスとしては、矢が飛んでくる頻度が減るため一瞬良いことなのかとも考えたが、かえってこれでは二人を見失って自分が危なくなると考え直す。
トレーネに至っては矢を飛ばしても標的に真っ直ぐ飛んでいくことが難しくなるため、攻撃の手段が減ってしまっていた。
「しゃあないな……!真名解放や!」
「魔力伝導……。仕留める……!」
迫り来る砂嵐を前に、二人は全力を解放することにした。
最初に動いたのはラルファス。
「こう言うめんどいやつはな。こっちも使えばええねん。
俺が倒さなあかん。
複写」
そう呟き、胸の前で手を合わせた次の瞬間。
砂嵐が、もう一つ発生した。
巻き起こる砂の嵐が二つになり、さらに広場の様子が見れなくなっていく。
「はっはー!これでお前の嵐を殺したるわ!」
「おぉ!レイアがもう一つ風砂を発動したぞ!これは攻めに行ってるなぁ!!」
「頑張れー!!!」
観客達は新しく発生した砂嵐がレイアがもう一つ発動したものだと思い、彼女への歓声が大きくなっていた。
しかし、当のレイアは違和感を感じる。
「あららー?!僕の風砂がなんでもう一つあるのー?僕二重を発動した覚えないんだけどなー」
「そんなこと言っても遅いんとちゃう?」
「えぇ?ぐっ……!!」
その最中。
ラルファスのブラストが、レイアの鳩尾へと炸裂する。
風砂の圧倒的な隠蔽性能にたかを括り、レイアは油断していたのだ。
「な"っんでっ……!ここに……!!」
「あんた、この力に自信を持ちすぎやで。もっとバリエーションっちゅうもんを考えんとなっ!」
「がはっ……!!」
鳩尾にほぼゼロ距離からブラストを受けたレイアは、勢いに任せ吹っ飛んでいく。
『ふぉぉ!!この砂嵐の中、乙女に強烈な一撃が決まったぁぁ!流石に危ないかレイア選手!!』
ろくに防御態勢も取れていないように見えたレイアに、観客達はラルファスの勝利を確信していたが、ラルファスは追撃を仕掛けるために吹っ飛んだ先へと駆けていた。
(まだや!あいつが戦闘できんようになってたら、魔力で作られたこの砂嵐と俺が移した砂嵐が無くなっとるはず。やけど消えてないってことは……!めんどくさいで全く!)
魔術は自身の持つ魔力を使って発動させるもの。魔力の供給がなければ、魔術は必然的に消えてしまう。
そして、ラルファスの動きと連動するように、後に発生した砂嵐が、レイアの風砂にぶつかっていく。
その光景は、イグナチアや魔術学院の生徒には理解し難い現象だった。
『おおっと!?風砂がぶつかり合っているぞぉ?!そんなことしたら威力が低くなって……あ!!
ま、まさか!ラルファス選手が魔術を発動したのかぁぁ?!そんなことできんのかよぉ!』
「えぇ!!そ、そんなことあんのかよ!」
「聞いたことない……」
観客達も別の都市の技術を使える人間がいる、と言う事例は聞いたことが無く、観客席は驚きで包まれていた。
一方、最高権力者が観覧している特別席では、魔法学校長と教皇が不敵な笑みを浮かべていた。
「フハッ!魔術を自らに映したな!さすが我が魔法学校だ!なぁ教皇」
「フン……。心魂魔法は千差万別の魂の魔法。限りがある魔術では相性が悪い時があるというものよ」
「ちぇー。もっと怒ると思ったのに。教皇冷めてるぅー」
場面は戻り。
二つの砂嵐がぶつかり合い、さらに風が不規則になっている中。
トレーネは後に出てきた砂嵐に違和感を感じていた。
(おかしい……最初の女の子と魔力が同じ……)
通常、人間の中に流れている魔力は一人一人の魂で作られているため、ある程度似通ったものはあれど完全に同じ魔力というものは存在していない。
だが、今ラルファスが使っている砂嵐からは、レイアと全く同じ魔力を感じているのだ。
(となると……あの男の人の力……?私の真似はできる……?)
トレーネはラルファスの力によるものだと考え、まずはその能力を調べていくことにした。
吹き荒れる砂嵐の中、翡翠色のラインが走った自身の弓、幻を狩る弓を構え、同時に三本の弓をつがえる。
「まずは……様子見……!」
引き絞って放たれた三本の矢は、レイアにとどめを刺すべく駆けるラルファスの方へ飛んでいく。
「おや、俺狙いかいな。やけど、この砂嵐で真っ直ぐ飛ばすんはむずいんやない、んなっ!」
先ほどまでなら砂嵐により矢の軌道は不安定になり、当たる心配など無かった。
しかも今は二つの砂嵐が発生しており、尚更その状況など起こるはずが無いとラルファスは踏んでいた。
しかし、その予想は外れることになる。
「さっきとは……大違い……!」
トレーネが放った矢が、砂嵐の中を彷徨うことなくラルファスを捉えているのだ。
「ちっ!」
咄嗟に回避を試みようとしたが、矢は尚もラルファスを追ってくる。
「なんやこれ!着いてくるなんて聞いてないで!」
次はファイアで迎撃しようとするが、矢はそれでも勢いを落とすことは無かった。
「っつ……!!」
(あかん……!魔力がもう……!)
その時、二つの砂嵐が止まった。
_______
ラルファスは矢を受けた場所に倒れていた。
「はは、やばいな……。魔力がもう無くなりそうやわ……。約束が果たせんかったからか……」
自身の心魂魔法、誓いの鏡は、その場にある魔力でできたものを模倣することができるというもの。
その代償は、模倣したものの所有者や発動者の魔力供給を自身で途切れさせること。
それを守ることができない(例えば他の人物が倒してしまったり、自身が心魂魔法を発動できなくなったりすること)、または一定の制限時間以内に倒せないと魔力量のほとんどが失われてしまい、戦闘の継続が困難になってしまう。
(はぁ、もうちょっと時間長くてもええやろ、って、あかん……目がぼやけてきたわ)
意識が段々と無くなっていく中、トレーネはラルファスの側に現れる。
「ど、どうしたんや、もう一人の嬢ちゃんは……」
「いいや……もう倒した……」
「嘘やろ……」
ラルファスは残る力を振り絞って首を上げると、壁に激突したまま動かないレイアの姿があった。
「はは、まじか……。やるやんけ、俺が最下位、やな……」
「……矢の傷は浅い……。すぐ治るから安心して……」
「忠告おおきに……やけど、もう、疲れ、た、わ……」
体内で使える魔力を使い果たし、ラルファスは気絶するように眠りについた。
すやすやと眠るラルファスの耳元で、トレーネはそっと呟く。
「あれはあなたがやった……。あなたの最初の攻撃で…あの子の魔術が弱くなった……。もうギリギリだった……」
あの時トレーネはレイアにも矢を放とうとしたが、すでにレイアは必死に意識を保ちつつ風砂を保たなくてはいけないほどに消耗していた。
そしてラルファスが倒れるよりも速く、レイアの方が気絶していたのだ。
『こ、これで決着だぁぁ!!こ、この勝負を制したのは!魔導学園代表!トレーネ・クァンセだぁぁぁ!!!』
うおぉぉぉぉぉ!!!!!
第四回戦の決着に、観客達は歓声を上げる。
それは、特別観覧席でも同じだった。
「ふぉっふぉ。さすがは我が学園の子よ。他も惜しかったがのう」
「なーにを言ってんの学園長!まだ後二回戦残ってる!そこで我が魔法学校は一位をとるからね!」
「それは我らとて同じこと。気を引き締めておけ」
「ふぉーっふぉ。楽しみだのう」
『さぁさぁ!残りニ戦となった魔皇戦!どこが優勝するのか楽しみになってきたぜぇ!!』
いかがでしたか?
残りニ戦となった魔皇戦。
どの学校が優勝を飾るのか!楽しみにしていてください!




