魔皇戦準備Ⅱ
最新話です。
「あ、いきなりで悪いが、お前ら剣術や槍術とか、そういう武術のたしなみはあるか?魔皇戦で模擬戦をする予定だからな」
魔皇戦まであと2か月を切った頃。
魔力回路の復元を教え、そのあとは自由時間だ!と言った矢先、ビアーはふと思い出したようにそう言った。
「ほんとにいきなりですね先生……。僕は剣術をそれなりに。ほかのみんなは?」
「わたくしも剣術ですわ」
「俺は槍術。試験で槍を作ったからそれを使えるようにした」
「俺っちはねー。うーん……。ツルハシかな??」
「……弓術……。私は影が薄いらしいから……」
「と、特にない、です……」
それぞれの武術経験(一名は武器か怪しいが)を聞き、ビアーは考え込む。
「そうか……。よし!今から追加授業だ!!お前らに合った武術を教えてやろう!大講義堂に集合だ!」
そう言うや否や、彼女はドタドタと大講義堂へ走っていった。
「……突拍子もなく決めますわね」
「ま、良いんじゃねぇの。行こうぜ」
ハイクラスの面々もビアーを追うように、小走りで大講義堂へと向かった。
~大講義堂~
「お、来たなお前たち。早速お前らに教えていこうじゃないか!まずは……」
めちゃくちゃ張り切っているビアーに、ニコルは「ちょっといいですか?」と話を止める。
「その前に!先生一人で教えるんですか?僕たちのやってた武術は人によってバラバラなんですよ?」
通常の家庭(一部の大貴族は例外だが)では基本、武術を習うときには1つの武術しか教わることがない。
武術にはそれぞれの武器に応じた扱いや間合いがあるため、2つを学ぶと結局どっちつかずなものになってしまうといわれているのである。
だが、目の前にいるのは基本から外れた存在である。
「おいおい。私を誰だと思ってる?『暴力の魔女』だぞ?暴力ってのは、それ相応の力がないとなすことができないんだぞ。私は大半の武術の基本を押さえてる。基本さえ教えればあとはお前ら次第だろ?」
彼女はなんてことない顔で言うが、バルトラを除いた5人は感嘆の声を漏らしていた。
「「「「「すごい……」」」」」
「まぁ暴力の魔女だし?普通なんじゃねぇの」
「おいおい。少しは子供らしく驚け。まぁいい。じゃあ始めるぞ。まずはバルトラ!お前からだ」
「あいあい」
ビアーは大講義堂の中心に進み、バルトラも後に倣う。
「君の入学試験で見せた槍を使いたまえ。インベントリに入ってるんだろ?」
「分かりました。でも種はまだ明かさないでくださいね?」
彼女が頷き肯定の意を示すと、インベントリから漆黒に鈍く輝く槍、竜を穿つ聖槍を取り出す。
対してビアーは、インベントリから銀の槍を取り出した。
「ニコル!審判を頼む!勝敗はどちらかが降参、というまでだ」
「了解しました。では……、はじめ!」
ニコルの掛け声を皮切りに、指導と言う名の模擬戦が始まった。
両者は始めから、無理に詰め寄ろうとしない。
外野は互いに出方をうかがっているのだと感じていたが、バルトラの胸中はそうではない。
(外野は出方を伺ってるように見えるんだろうが……。隙が無ぇから、こっちから攻撃するとカウンターされる未来しか見えないんだよなぁ……)
バルトラが教わった槍術は、攻撃を受け流しながら反撃を狙うものではなく、積極的に攻撃を行って反撃の機会を与えさせない槍術である。
だが、その動きを行う身体に、本能的なストッパーがかかっていた。
仕掛ければやられる、と。
それに対してビアーは、彼の理性的な判断を心の中で褒めていた。
(やはり賢い。私がカウンター主体の槍術で構えていることを理解して、しっかりと攻撃の機会を伺っている……。
だがっ!!)
先に動いたのは__ビアー。
カウンターの姿勢から一転、大地を力強く蹴り、神速の突きを放つ。
銀の切先が、バルトラの心臓(魂)めがけて襲いかかる。
(疾いっっ!)
バルトラは咄嗟に竜を穿つ聖槍で防御する。
「っっっっつ!!!」
ガキィィィン!
鉱石同士がぶつかり甲高い音が鳴ると同時に、バルトラは勢いそのまま壁に吹っ飛ばされた。
「バルトラ!!」
「バルトラ様!」
ニコルやメリーが心配して駆け寄ろうとするが、ビアーはそれを手で制止する。
「待て。まだ戦いは終わってないぞ。降参の言葉を聞くまでだ」
「で、でも……!」
ニコルがそれでも助けに行こうとした時、吹っ飛ばされた壁の辺りから声が聞こえる。
「痛てて……。やっぱ強いですね先生」
所々服は破れているが、五体満足のバルトラがそこにいた。
「さすがだなバルトラ。その場で受け止めることが出来ないと感じてあえて吹っ飛ばされるとは」
こうも早く種明かしをされると思っていなかったのか、バルトラは一瞬驚きの顔を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべ直す。
「いやぁ、バレてたか……。
あんな速さの突きを受け止めれるほど俺はまだ強くないですよ。降参です。降参」
(本当は背中に魔導工具を付けてたのもあるけど)
そうやって手をヒラヒラと振りながら、あっさりとバルトラは降参の意を示した。
「審判。試合結果を」
一瞬のことで理解が追いつかず、何も言えなかったニコルだったが、ビアーの一言で現実に引き戻される。
「しょ、勝者ビアー!」
「「ありがとうございました」」
互いに礼をして、ビアーはバルトラに習うべきことを示した。
「バルトラ。君は私がしたようにカウンター主体の槍術を学べ。相手の分析が出来すぎて攻められていないからな。
カウンターの構えをベースにすればそれは解消されるだろう。
それに、まだ魔力を通してないだろ?」
「あ、これもバレてましたか……。次は全力でやりますよ」
この試合中、竜を穿つ聖槍に魔力を通していなかった。
魔導銀よりも硬度が高いアダマンタイトなので折れる心配はなかったし、なにより、自分自身の力がどれだけのものか知りたかったのである。
「さぁ!次に私とやりたい奴は誰だ?誰からでも良いぞ!」
ビアーは生き生きとして次の対戦相手を待つが、中々次の相手は現れない。
「む、どうしたんだ?」
「いや……あんな試合を見せられて次やりたいですーって言いにくいと思いますよ」
ニコルが他の5人の気持ちを代弁する。
攻防で言えば一瞬であったが、2人の間に起きていた異様な駆け引きについていけていないのだ。
それを聞くと、ビアーはフッと優しげな顔になった。
「大丈夫だ。バルトラはある程度の槍術の型ができてると思ったからああしたまで。
お前たちにはもう少し優しくするよ」
「そ、そういうことなら……」
「が、頑張ってみますわ!」
彼女の優しさに絆された5人は、徐々に意欲を見せるようになっていく。
その瞬間、彼女を肩をブンブン回しながら衝撃の言葉を口にした。
「だが1人ずつ教えるのも面倒くさいな!
お前ら5人でかかってこい!私がその中でお前らの武術を教えてやる!」
「「「「「えぇぇぇ!!!」」」」」
それぞれの武術は武器の特性が大きく異なるものであり、一回の試合では、とても教えることができるものではないはずなのだ。
だがビアーは平然とした顔で言ってのける。
「そんな驚くことじゃないぞ?お前らみたいなひよっこは、5人だろうが変わらないよ」
負ける未来が見えていないような彼女の発言に、5人の闘志に火が点いた。
「先生……。流石に舐めすぎですよ」
「そこまで言われては黙っていられませんわ」
「俺っちも頑張りますかー!」
「……少しは見返す……!」
「今までやられた仕返しだ!!!ぶっ殺す!」
若干一名気合いの入りようが違うベクトルの輩がいたが、皆がやる気を出してくれたようで、彼女はニコニコしていた。
「よしよし。いい闘志だ!
お前らには作戦会議の時間をやろう。それで倒せるとは思えんがな」
(ま、チームワークを学ぶためにも大事だしな。面白くなりそうだ……)
「「「「「絶対ギャフンと言わせる!」」」」」
自分とは関係がないため傍観を決め込もうと、5人から離れた場所に行こうとしたバルトラだったが……
「そのためにも!バルトラ!力を貸してくれ!」
「えぇぇ……」
そうはいかないようである。
いかがでしたか?
バトル描写って難しいですね…。
(少ししか書いてないけど)
今後はもっと上手くなれるよう頑張っていきますので、ぜひいいねやブクマお願いします!




