魔法学校入学Ⅵ
遅くなりました。
レージ篇第6話です。
追記 9月13日
ここまで文章作法を直してます。
メルクレアさんのクラスを見つけ出した次の日。
先日のアレックス先生の言う通り、俺たちはシャマシュホールに集合していた。
「いったいなんだろうな?大事な話って」
隣にいるミディは見当がついてない感じだが、なんとなく見当はついている。
「多分、というか十中八九魔法を外部の人間に教えてはいけない理由だろうな。今教えとかないといつ教えるんだって感じだし」
「おぉ……!そういやそんなのあったな!」
「おいおい……。昨日の夜も部屋の場所どこ?って俺に聞いてきやがって。数秒前に説明があっただろ」
「いや~。すまんすまん」
こいつ……もしや天然なのか……?
今後ミディの行動よく見ておこうと心に誓いながら他愛もない話を続けていると、眼鏡をかけおどおどとした態度の青年、アトラス・クランブリオンがホールの前に出てきた。
「あ、き、今日はお集まりいただきありがひょっ!痛い!
ありがとうございます……」
おいおい、大丈夫かよ……。
ほかの新入生たちも皆、少しあきれ顔だった。
中には明らかに先生と見てないような奴らもちらほら。
最初っから生徒に舐められる先生なんて見たくないぞー。
と思ってたんだけど……。
「今日は皆さんにとても大事なお話をします。
今俺のことを舐めた目で見てたやつらも話を聞けよ。そうしねえとお前らの人生にかかわるんだからな」
おっと?眼鏡を外して話し始めたら雰囲気が180度変わったな。
俺は心の中で驚いていたが、ホールにいたほかの生徒たちの反応もわかりやすくざわざわとしていた。
「うるせーなぁ……。静かにするぐらいできんだろぉ?」
アトラス先生の静かだが怒りのこもった言葉に、ホールは一瞬で静まり返る。
「やっと静かになりやがった。じゃあ話をしていくぞ。
今日お前らに話したいことは一つだけ。
お前らの中に眠る魔法についてだ」
俺たちの中に眠る……。
「それってどういうことなんですか?」
シン、と静まりかえった中、俺は一際大きな声をあげて質問した。
「それを今から言うんだよボケ」
「す、すいません……」
なんで怒られんだよ……。
今のキレモードの時は何も言わない方がいいな。
「いいか?お前らの中に眠る魔法。それは、心魂魔法。
魔法都市の人間のみに発現する、お前らの魂に刻まれた魔法だ」
俺たちの魂に……。そもそも魂ってなんだ?
「魂はなんだと言いたげな顔だなお前達。教えてやるよ。
魂ってのは、お前らの力の源と言うべきものだ。
お前達の体内に存在し、魔力を作り出している。体を維持するための血液も魂で作られた魔力がもとになってる。血液を送り出すのは心臓だがな」
ほぉーー。ってことは、俺たちの体は魂でできていて、心臓はあくまでサブってことだな。
そうして理解を深めている間にも、アトラス先生はどんどんと説明を加えていく。
「そして心魂魔法ってのは、魂に刻まれた魔法のことだ。
その効果は千差万別。
基礎魔法を補助するものもあるし、心魂魔法自体が威力ある魔法を持ってる場合もある」
完全ランダム。
でもそれなら、早くわかってる方がその心魂魔法に沿った練習ができていいんじゃないのか?
「でも、その魔法のことを先に分かってる方がいいんじゃないのか??」
そう考えていた矢先、俺と同じ疑問をミディはぶつけていた。
てか敬語じゃねぇのかよ。怒られるぞ。
と思っていたが、アトラス先生はその質問をぶつけて欲しかったのか、ニヤリと笑っていた。
「いい質問じゃねぇか。
確かに幼少期から心魂魔法を理解していた方がいいかもしれねぇ。
だが、そうなると心魂魔法を奪われる可能性があるぜ?」
うお!?
魔法が奪われる?!そんなことってあんのかよ!?
「はっ!そんなの嘘に決まってんだろ!その心魂魔法ってやつは、俺たちの魂に刻まれてるんじゃねえのかよ!」
近くにいたいかにも悪そうなやつが、声を荒げて突っかかる。見た目は完全に悪なやつだが、ちゃんと人の話は聞いてるみたいだな。
「黙れ三下。お前、魔法を発動する条件を知らねぇのか」
「なっ!なんだとぉ……!」
Oh!アトラス先生めちゃくちゃ怖い……。
「おい、一番最初に俺に質問した黒髪!」
あ、俺のことかな?
「は、はい!」
「そうだお前。魔法が発動する条件は知ってるな?」
「はい、条件は想像力と魔力量、そしてその事象に対する理解です」
「その通りだ。上出来じゃねえか」
「ありがとうございます」
やっぱ褒められるとうれしいねぇ。
「その魔法の発動条件ってのは心魂魔法でも変わらねぇ。
想像力に関しては、これからの学校生活で学ぶほとんどが心魂魔法と絡んでくるから、想像するのは簡単だ。
魔力量に関しては言わずもがな。バシバシ鍛えていけ。
そして最後。事象への理解に関してだが、心魂魔法は基礎魔法と違ってその魔法の名前、真名を呼ぶことで発動できる。
これが何を意味するか分かるか?」
ここまでの説明だけでも新しい事実が目白押しだったため、新入生のみんなはそこまで理解が追いついていない。
そんな中、俺はある仮説を口ずさんだ。
「上手くいけば、心魂魔法が他人にも使えてしまう……?」
それを、アトラス先生は見逃さなかった。
「そういうことだ」
「でも先生。心魂魔法を他人が使えてしまうと何が悪いんですか?」
気になったことをぶつけた。
魔法とかの技術はみんなでシェアした方が、魔法が発展する可能性があると考えるのが普通だろ?
「鋭いな。
答えとしては、自分の心魂魔法を使われた人間は死ぬ。
心魂魔法は魂に刻まれるものである故、魂の一機能として扱われているからだ。
それが勝手に使われると、魂はそれを不具合だと認識してリセットしようとする。魔力を作る活動をやめちまうんだよ。
そうなると必然的に心臓も動かなくなる。そして待つのは死、のみだ」
アトラス先生から発せられた、「死」の文字。
その言葉を聞いて、ただでさえ静まりかえっているシャマシュホールに緊張が走る。
だけど、俺はその理由を聞いても存外怖い理由だったなぁ、くらいにしか思ってなかった。
(名前を知られると魔法を使われる可能性がある。か……。要は迂闊に魔法を言うなよってことだろ?)
緊張が走ったまま、ただ呼吸だけが聞こえているような状況の中で、アトラス先生は何事もないように話を続けた。
「なぁに。だから俺たちはお前らに盟約っつう魔法を使う。
盟約は対象にしたものに対して自分以外には知られなくする魔法だ。
他人にうっかりこぼすことが無いようにな」
おぉ。ここで盟約が使われるのか。マチルダさんが言ってたのって、心魂魔法が絡んでたからなんだな。
「てことで今から俺がお前らに盟約を発動する。
対象は自分の心魂魔法の真名。
だが、その前にお前らには、それぞれの真名を知ってもらう。
お前ら目をつぶれ」
言われた通りに俺たちは目をつぶった。
すると、フッと意識が別の空間へ飛ばされていき_____
ん……。ここは……?
意識が覚醒し、あたりを見回す。
その空間は全体にもやがかかったような場所で、草木はもちろん、人もいない。
どこだよここ。
何かヒントはないものかと考えていると、この場所全体に軽快な少年の声が響いた。
「やぁ!僕は君の心魂魔法だよ!って、名前を教えてないからわかんないよね」
こいつが俺の心魂魔法……。なんか弱そうだな……。
声だけを聞いた正直な感想を吐露していると、その声は俺の感想を聞いてぷんぷんし始めた。
「むー!失礼だな!声だけで判断しないでよ!!」
すまんすまん。
んで?俺はなんでここに?
「君、僕の真名を知りに来たんでしょ?
心魂魔法は真名を知らないと使えないからさ」
あ、そうだったな。じゃあ早速教えてくれよ!
「待ってよ。君の魂は少し特別なんだ」
え、特別って?
「まだ聞こえてないようだけど、もう1人いるんだよ」
もう1人……?誰なんだ?
もうちょっと詳細を聞こうと考えたが、さっきのように意識が飛ばされる感覚に襲われる。
「おっと。もうすぐ時間みたいだね。じゃあ僕の真名だけ教えておくよ。
僕の名は______ 」
分かった。これからよろしくな。
そいつの真名を聞き留めると、俺の意識は再び飛ばされた。
フッと目を開けると、新入生の奴らも続々と目を開け始めていた。
「お前ら真名を知ることはできたか?
今回はここまでだ。この後は各々自由にしてくれ。
じゃあな」
そう言って、アトラス先生はシャマシュホールを後にしようとしたが、数歩歩いて急に立ち止まった。
「あ、言い忘れてたことあったわ。
今年から魔術都市と魔導都市との交流戦が始まる。
あと2ヶ月ちょっとで開催だからお前ら頑張れよ。」
サラッと重要なことを言って、今度は本当に去っていった。
「「「「…………えぇぇぇぇぇ!!!」」」」
新入生たちは、声を大にして驚きの声を上げる。
かくゆう俺も大興奮である。
(やったぁぁぁ!交流戦イベだぁぁ!
魔導と魔術……!お目にかからせてもらうぜ!!
ひゃっほう!!!)
俺はこの時予想もしていなかった。
この交流戦が、あんなことになるなんて……。
いかがでしたか?
次からはエピソード3『魔皇戦篇』のスタートです!
日曜日の更新を予定してます。
よろしくお願いします!




