魔法学校入学Ⅰ
昨日は更新できなくてすみません!
レージ篇に入ります!
~皇歴260年 魔法都市エンヴィシス ロスト家~
ロスト家は今、夕食をとりながらレージが入学する魔法学校のことで話が盛り上がっている。
「もうすぐ入学だねお兄ちゃん。学校でちゃんとやっていけるか僕は心配だよ」
弟に心配されている可哀想なやつ、それが俺、レージ・ロスト。
ライルよ、俺はもう10歳なんだよ?ちゃんとできるに決まってるじゃないか。
「大丈夫だ!俺はもう10歳なんだから。ね。父さん、母さん」
俺は両親に期待を込めた視線を送るが、反応は芳しくない。
あれぇ?
中身25歳だから、落ち着いてるはずなんだけどなぁ……。
「うーん……。レージはお母さんの約束をすぐ破っちゃうからなぁ。学校のルールを守れるか僕は心配だよ」
と、父さんまで……。
「そーよ。うちのルールですら守れないのに、うちよりもルールが多い魔法学校を守れるとは思えないんだよねぇ」
母さぁぁん!
俺がなにしたってんだよー。ただちょっと家から抜け出したりしただけじゃないか!
「ちょっと外に出ただけじゃないか……」
つい心の声が漏れ出たが、母さんはその発言を逃さなかった。
「ちょっとだとぉ!?アンタに魔法を教えてから2年間の間にどれだけ外に出たと思ってるんだ!」
「えぇーとぉ……、5回ぐらい?」
5回ぐらいはばれてた気がするけど、それ以外はうまくごまかせてるはず。
「はぁ……。レージ。あんたホントに馬鹿だね。もっと行ってるのは分かってるんだ。ライルから聞いてるよ」
な、なにぃー!
「ラ、ライルお前ぇ……。裏切ったなー!」
咄嗟に怒りの視線を向けたが、できる弟はさも当然のような顔をしていた。
「別に僕は兄ちゃんの仲間じゃないよ?
兄ではあるけど。それに悪いのは兄ちゃんじゃん。父さんたちは僕たちを守るためにこういうルールをつけてるんだよ?」
弟にド正論を言われると流石にぐうの音も出ない。
「うぅ……それは分かってるよ。そのことに関してはほんとにごめんなさい。」
俺は素直に謝ることにした。
ライルの言ってることは本当だし、両親は俺のことを心配して言ってくれてることはさすがに分かってるからな。
そう思っていると、父さんが優しい顔をしていた。
「良いんだレージ。子供のころなんてみんな外に出たくなるよ。それは父さんだって、母さんだって経験してきたことだ。外に出ることを怒っているのは、まだ自分を守れる力が無いからね」
と、父さぁぁん!!
父さんのあまりの器の広さに、俺はつい叫びたくなってしまう。
まぁそうだよな。まだ10歳の子供だし、魔法も基礎魔法しか覚えてない。
そんな奴が何がいるか分からない外に出ても、良いことないもんな。
「そうだよね……。分かったよ、父さん、母さん。
学校に行ったらちゃんとルールを守るようにするから」
必要とあらば破るつもりではいるけど、今これだけ言われた手前、ちゃんとすると言っておかないと後が怖い。
「それが大事だよ、レージ。
でもね、時にはルールを破ってでもやらなきゃならない時が来る。そん時はちゃんとルールを破りな」
お?母さんがそんなことを言うなんて珍しい。
俺は素直に驚いていた。
母さん家にいるときはルールを守れってうるさいから、てっきりなにがあっても破るなー!とか言ってきそうだったんだけど……。
(あ、さては父さんと何か関係があるな?)
ちらっと父さんを見ると、案の定。
父さんは顔を赤くしていた。
(や、やっぱりなんかあったんだな……)
「話は変わるんだけど、魔法学校って入学の時に試験とかある?
父さんが前に魔力の扱いができない子も来るって言ってたから気になったんだけど。」
魔法学校に入るとなると、気になったのはそこだった。
大体こういう世界だと、入学の時に試験があって、そこでクラスとかが決まるって展開が多いからな。
だが、父さんの答えは俺が予想していたものとは大きく違っていた。
「あぁ、そのことなんだけどね……。
僕たちが行ってた頃は入学前に試験があったんだけど、最近無くなったって聞いたよ」
(最近無くなった……。なんかあった感じか?)
気になって詳しく聞くことにした。
そうしてみたらびっくり。
試験が原因で自殺してしまった人がいるみたいだ。
父さんが言うには、学校の中で魔力をうまく使いきれない子たちに対していじめがひどくて、それが原因で精神的に病んでしまったらしい。
それを聞いたときはびっくりした。
というか、異世界に行っても人間の心理はあまり変わらないもんだな、って感じたな。
自分より下だと思った人間には、いろいろな力で強さを誇示しないと気が済まない。
こっちに来てもそんなドロドロした人間関係を見なきゃいけないのかよ……。
すこし陰鬱な気分になっていると、母さんは険しい顔で言った。
「レージ、よく聞いて。
あんたは入学後、親元を離れて5年間暮らすことになる。家に閉じこもるのが好きじゃないあんたにとっては最高だろうが、自分の身は自分で守らないといけない。学校の先生は、お前のプライベートまではノータッチだからね」
「分かってるよ母さん。そのために基礎魔法も魔力量も鍛えてきたんだから。未開拓地域に行ったりしない限りは大丈夫だよ」
母さんはいまだに険しい顔をしていたが、しっかり準備していることを伝えると、ようやく安心した表情を見せた。
「そうかい?じゃあ頑張っておいで。あそこでの5年間はとてもいい経験になるよ」
「じゃあ僕からも。レージ。君は僕に魔法を教えてもらって約2年間、いっぱい努力していたね。日に日に魔力量が増えていったのが僕には分かったから。その調子で学校でも努力することを忘れないで」
「うん。ありがとう、父さん」
両親から温かい言葉をかけられた俺は、ちょっと泣きそうになった。泣いてないけどね!
その後は弟にも何かないのかと言ってガン無視されながらも、楽しい夕飯の時間は過ぎていった。
~レージの部屋~
夕食を終え、俺は自分の部屋に戻った。
そして部屋の本棚から一冊の本を取り出す。
『皇国記』って本だ。
こいつはファリストン皇国の大まかな歴史をまとめたやつで、こっそり外に出てた時に知らないばあさんからもらったものだ。
【いらないからやろう】って言われてもらったんだけど、今考えると怪しすぎるな。あんときはもらえるもんはもらっとくの精神でもらったが。
そんな感じで読み始めたこの本だが、ぶっちゃけ知らない情報が目白押しで凄く面白い。全然読み終わってないけど。
この本の冒頭は、皇国の始まりじゃなくて、この大陸についての大まかなことだった。
この大陸はゲニオン大陸といって、この大陸の右側に皇国が位置してるみたいだ。
大陸の周りは海に囲まれていて、海の外側に何があるかは分かってないらしい。
そのあとは皇国の地理について。
皇国がおおきな3都市で構成されていることは前にも話したと思うんだが、位置的には
大陸中央 魔導都市 魔術都市 魔法都市 海
って感じに並んでいる。
そしてその都市同士には境目となる山脈や渓谷が存在しているみたいだ。
最初は魔術都市エンゲニス。
ここは魔術都市エンセリオンと接しているが、その境目には大きな山が並んだゴリアテ山脈がある。
そこは鉱産資源が豊富で、魔導都市の人々はそれを使って魔導機を作ってるみたいだな。
次は魔術都市エンセリオン。
ここは魔術都市と魔法都市の2つに挟まれた形で存在している都市で、魔導都市側はさっき言ったようにゴリアテ山脈が連なっている。そして魔法都市側にはめちゃくちゃ深いタールグリント渓谷があるみたい。
そして一番海に近い方に俺がいる魔法都市エンヴィシスがあるって位置関係だ。
ここまでは読んでいたので、俺は次の説明が書いてあるページをめくった。
「さーて、次はなんだろうなっと……、へぇ、
【皇国の成立について】か……」
いかがでしたか?
面白いなーって思ったらぜひいいねやブクマ等よろしくお願いします!




