魔術学院入学Ⅴ
アルマ篇第5話です。
追記
9月12日
文章作法の修正と、エリスの口調を変更してます。
マルコとあっという間に友達になった後、寮へと辿り着いた。
「こ、ここが寮だよね……?」
「そうみたい。じゃ、また明日ね!マルコ」
魔術学院の寮は男子寮と女子寮があるため、二人はそこで別れる。
「はうっ……!///」
アルマと別れた後、マルコは一人悶えていた。
(あぁ……。少し話しただけでもわかる、女神だ!可愛すぎるし、近くにいるだけでいい匂いするし、この気持ちが抑えられるかな……)
~魔術学院 女子寮~
アルマが女子寮に入ると、視界いっぱいに女子生徒たちが目に入ってきた。
(みんな新入生なのかな。やっぱり魔術都市中から人が来ると半端じゃないわね……)
その人数の多さに驚いていると、眼鏡をかけた厳しそうな女性が話し始める。
「私はこの女子寮の寮長をしています、マチルダと言います。
これから女子寮の注意点を言っていきますので、よく聞いておいてください」
皆が彼女に注目するまで話さず、注目が向いた所で話し始める。
「この女子寮は5階建ての寮です。
1年生の部屋は5階になります。そこから1年たつごとに1階ずつ下がっていき、5年生になると今いる1階に移ることになります。
朝ご飯は8の刻から9の刻の1時間の間に食べに来てください。
昼食は寮では作っていないので、学校内の食堂で済ますか、外出届を出して外で食べてきても大丈夫です。
夕食はバイキング方式ですので、食べに来なくても大丈夫です。
注意は以上です。
では5階まで移動してください。部屋の横に名前が貼ってあるので、そちらがお部屋になります」
マチルダの説明が終わり、新入生たちはわらわらと5階へ歩き始めた。
「私の部屋ってどんな感じだろうな」
その波に逆らうことなく、アルマも歩き始めた。
~女子寮 5階~
5階に着いた後、アルマは自身の部屋を探していた。
「さーて、私の部屋はっと」
「「あ、あった」」
「「……」」
見つけたと同時に、赤髪の少女と声が重なる。
二人は一度お互いを見合うと、先に赤髪の少女から声がかかる。
「あなた、アルマ・テラズド?」
「うん、そうだけど。そういうあなたは、エリス・バレット?」
「そう。私はエリス・バレット!よろしく!」
初対面とは思えない、元気で大きな声で自己紹介され、アルマはちょっと引いてしまう。
(テンション高い……。ちょっと苦手かも)
そう苦手意識を持ちつつも、同姓の友達がいないことを思い出したアルマは、とりあえず仲良くしておこうと考えた。
「とりあえず、中に入らない?エリスのこといろいろ聞きたいし」
「そうね!行きましょう!」
部屋の中は2人で過ごすには十分な広さの部屋で、リビング以外にも2部屋存在していた。
「結構広いね。部屋も2部屋あるし、過ごしやすそう」
「そうね!楽しみだなー!」
(この感じじゃ、元からこんなハイテンションなのかな?)
アルマは部屋の中でもテンションが高い彼女を、そう分析していた。
その後、それぞれの荷物を自分の部屋に置いた後、もっとお互いのことを知ろうということになった。
「じゃあ、私から。アルマ・テラズドよ。両親は神官をやってるわ」
ひとまず当たり障りのない紹介をする。
「おぉ!神官!いいところのお嬢さんじゃない!
私はエリス・バレット!父さんは交易関係の仕事をしてるの!」
(交易関係……。なにか魔術に使えるかな?)
「ふーん。お母さんは?」
「母さんはいないわ。あたしが6歳の時にどっか行っちゃった」
「あ……。ごめんなさい」
まずいことを聞いたと思ったが、彼女は「大丈夫!」と気にしていない様子だった。
「もう割り切ってるし、母さんが居なくても毎日楽しかったから!」
「……すごいね。エリスは」
「そう?アルマの方は楽しくなかったの?」
彼女にそう聞かれ、アルマは少し考えた後、ぽつぽつと話し始めた。
「…………楽しかったよ。お父様は魔術のことを色々教えてくれたし、お母様は私の好きな神話を教えてくれてた」
「へぇー!すごいじゃない!魔術ってどんなこと教えてもらえたの?
私魔術があんまり得意じゃなくってさー。まだ第一階層魔術くらいしかまともに使えないのよね」
「えっ?そうなの?じゃあ実技試験はどうやって?」
「私実技受けてないんだー。面接試験の方を受けてきたの」
(そっか、面接試験で受けた子たちもこの寮に住むんだよね。当たり前だけど。本当なら私も……)
本来なら、自分はその状態であったことを思い出すと同時に、彼女に対して勝手な哀れみを感じていた。
(可哀想だな……。魔術が上手く使えないなんて)
魔術学院の試験は2パターンある。
1つはアルマが受けたように、筆記試験を行った後に実技試験を行って合否を決めるパターン。
もう1つは、1つ目と同じく筆記試験を行った後に、面接試験を受けその結果で合否を決めるパターンである。
これは、魔術が苦手な生徒たちにも学校へ行けるようにする学校側からの配慮と言われているが、面接試験で合格した者は、実技試験で合格した者とは別の扱いとなり、授業の内容が差別化されているのが現実である。
そのせいで、実技で受かった者たちの中には面接で受かった者たちを【落ちこぼれ】として卑下している者たちもいる。
「それで?面接試験の方はどんな感じだった?5年間でどんなことをするようになってるの?」
アルマは、ずっと疑問に思っていた。
もしマキアに魔蝕を教わらなかったら、どんな人生を歩んでいたんだろうと。
「面接試験はそこまで難しくなかったわね。
なんで面接試験の方を受けたんですか?とか、将来の夢は?とか。
5年間の学習する内容は、魔術はこんなのがありますよーくらいしか学ばないみたい。後は魔術都市のこととか、この都市の神話とか、一般常識を学んでいく予定みたいね」
それを聞いて、改めて面接試験でなくてよかった、と思ってしまった。
(面接で合格してたら魔術のことを全然知れなかったってことね。やっぱり面白くないわ)
その後、彼女から様々なことを聞いたアルマは、二人で夕食に向かうことにした。
「飯かー!どんな味なんだろうな!気になる!ね、アルマ!」
彼女は相変わらずハイテンションである。
「そうね。確か、夕飯は男子と一緒だったっけ?」
「うん!そうみたい!なになに?そんなこと確認するなんて……。あっ!もう好きな人でもできちゃったの!?」
エリスはニヤニヤしながらからかうが、当の本人はそんなことは頭の片隅にも無い。
「そんなんじゃないよ。
ただ友達がいるから、あぁ会えるかもーって思っただけ。好きな人なんてまだいないよ」
「ちぇー。おもしろいことが聞けると思ったのに」
~1階 食堂~
食堂に着くと、多くの生徒たちでにぎわっていた。
「おぉー!やっぱいっぱいるねぇー!どれどれー?席は空いてるかなっと……」
エリスが空いている席を探していると、アルマがちょうど2人で座れるテーブルを見つけた。
「ここにしようか」
そこに座った後、1人づつ夕飯を取りに行くことにした。
それぞれ好きな料理を取り終えた後、2人は食べ始める。
「いったっだきまーす!」
「お!美味いねこれ!」
「ほんとだ」
「うひゃぁぁぁ!」
学校の料理に舌鼓を打ちながら世間話をしていると、アルマ達の隣から大きな声が聞こえて来た。
「あ、マルコじゃん。入学式の後以来だね」
「ん?誰よあなた」
マルコは夕飯で会うとは思いもしなかったのか、口をアワアワさせている。
「ア、ア、アルマ?な、なんでここに?」
「なんでって、夕飯を食べに来ただけだよ。驚きすぎだよマルコー。
あ、紹介するね。私と同じルームメイトのエリスだよ」
「ウェイ!エリスだよ!あなたマルコって言うのね!ちょっとこっち来なさい!」
合って早々呼び出され、マルコは恐怖に慄く。
(ひぃぃぃぃ!な、なんの話をされるんだ一体!?怖いよぉぉ!!)
逆らえない雰囲気に押され、おとなしく彼女の隣に座ると、マルコの耳元でこう囁いた。
「ねぇ、あなた、アルマのことが好きなのよね?わかりやすすぎるわ。私が仲介役になってあげましょうか?」
「……ふぇ?」
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