魔術学院入学Ⅱ
お待たせしました!
アルマ篇第2話です。
~皇歴260年 魔術学院 門前~
魔術都市唯一の学び舎である、魔術学院。
その威容を伝えるように大きく作られた門の前で、アルマは1人、意気込んでいた。
「よし、ついに来た!入学試験!
マキアにいろんな魔術を教わったし、実技も大丈夫なはず!」
魔術学院の入学試験は、会場に行くときから家に帰ってくるまで、受験者以外の人物は学校に来てはいけないというルールがある。
その事情を知っているのかは分からないが、今回ばかりはうるさい銀髪も出てきていない。
(てっきりここに来る途中に、何かしら言ってくると思ったけど。まぁいっか。
というか、あいつは広聴を使って筆記の問題を盗み見しろとか言ってきたけど……。
さすがにしないかなぁ……、筆記は心配要素無いしね)
そんなことを考えながら、アルマは学院へと足を踏み入れた。
その一歩を踏み出せば、荘厳な雰囲気を漂わせそびえ立つ白亜の城が見えてくる。
「うわぁ!ここが魔術学園……!
お父様やお母様から話は聞いていたけど、大聖堂と変わらないくらい大きいっていうのは本当だったんだ。
っと、見惚れてる時間じゃない!筆記会場は確か……」
試験本番まで残りわずかとなっていることに気づいたアルマは、小走りで筆記会場の小会堂へと向かった。
~小会堂~
「ここが小会堂……。小ってついてるから小さいのかなって思ってたけど、私の家と同じくらい大きいじゃん」
魔術学院のスケール大きさに驚かされながら、自身が受験する席をさがす。
「えっとー、私の名前はっと、あった」
自身の席を見つけて一安心しながらも、彼女の意識は次の実技試験に向いていた。
(試験開始まで少しあるし、ちょっと魔蝕を練習がてらやっておこうかな)
近くにいる受験生にも聞こえないよう、小声で最新の注意を払って詠唱を唱え始める。
『根源たる魔の力よ、力を持たぬものに扶翼を授けん』
そう唱えると、彼女の身体の中に力の奔流が流れ込んできた。
(うっ……やっぱり急になにかが入ってくるのは慣れないな。でも体が軽くなるこの感じ。魔力が入ってきた)
そうして体内に魔力が入ることを確認していると、小会堂の中央に眼鏡をかけた男性がやってきた。
「これより、試験を開始します。試験時間はこれより30分、10の刻に終了です。では始めてください」
(やばっ、始まっちゃった。さて、問題は……)
~30分後~
「これにて筆記試験を終了とします。速やかに実技会場に移動してください」
「ふー、何とか終わった。問題数が多くて驚いたけど、一応全問解けて良かったー。さ、実技会場に急ごう」
実技試験の会場に向け、ぞろぞろと動き出した人とともに、アルマは実技会場へと向かった。
〜大会堂〜
「ここが実技の会場、大会堂……。広すぎて建物とは思わないなぁ」
またもや建物の大きさに呆気に取られていたアルマだったが、先ほどもいた眼鏡の試験官の一言で現実に引き戻される。
「これより実技試験を開始します。ルールは簡単です。
①面接官が今から現れるので、そちらに向かってください。
②そちらで名前を言った後、自身の最も得意な魔術を使ってください。
③どんな魔術でも構いませんが、試験官を殺さないでください。
以上です。では好きなところに並んでください」
そう言い終わると、大会堂を端を囲うように数十人の男女が現れ、会場にいた受験生はそれぞれの場所へ並び始めた。
(誰でも良いんだよね。じゃあ、あの優しそうな女性のところに行こっと)
特に何も考えることなく試験官を決めたアルマは、にこやかな笑顔の金髪の女性のもとへと並んだ。
(得意な魔術かー。なんにしよう?第二階層魔術の烈火を使うことが多いからそれでもいいけど……、これは試験だし。かといって第六階層魔術の絶衝とかをやっても目立っちゃうし……。んー。ここは無難に第四階層魔術の絶水がちょうどいいかも)
だが、アルマはこの時大きな勘違いをしていた。
自身の魔力出力が、他人と同じレベルであると。
「次の方どうぞ。名前を言って魔術を私に放ってください。私は防御魔術を張ってますので心配なさらず」
女性に呼ばれ、アルマは意識を彼女に戻す。
「はい。アルマ・テラズドです。行きます。『神の力よ、今一度我らの導きのもとに現れ、清濁をも飲み込む激流を生み出さん』 絶水!」
「え?ちょ、ちょっと何この量っ」
審査員が止めようとするより早く、アルマの詠唱が完了し、周りから大量の水が出現。
審査員に向かって激流のごとく押し寄せた。
「あっ!見えなくなっちゃった……。大丈夫かな……」
しばらくして激流が治まると、審査員の女性はずぶぬれになっていた。
防御魔術をしていたというにはモロに食らっていたように見えたため、アルマは心配になる。
「だ、大丈夫ですか?!死んでませんか?!」
その心配を他所に、女性はできる限りの平静を装って言う。
「ケホッケホッ。ご、ご心配ありがとうございます。御覧の通りダメージは無いので……。こ、これにてアルマさんの実技を終了します。ケホッ!お疲れ様でした……」
アルマは本気で心配していたが、これ以上自分ができることがないため、罪悪感に苛まれながらその場を去った。
「ほんとにすいません……」
(あぁ、やっちゃった。あの審査官の人の印象最悪だろうなぁ……)
「はぁ、落とされちゃうかもなぁ」
アルマが失意に沈んで帰路についていたその頃。
審査員の女性は、ほかの審査員と話を交わしていた。
「大丈夫でしたか?クロイス先生?」
「いてて。あんな威力の絶水が飛んでくるなんて予想外だったわ……。
とっさに二重詠唱を唱えてないと危なかった……。あの子、一体何者なの?」
~テラズド家~
「ただいま……」
「おかえり。アルマ。どうだった?試験は」
「うん……。筆記は大丈夫だったけど……。実技でミスしちゃったかも」
「え?実技?アルマは魔術を使えないから面接のはずだけど……」
「あ、いや、面接のことだよ。私にとっては実技みたいなものだからさ」
(そーいえば、私魔力使えないって扱いだったっけ)
「なんだ。そういうことか……。本当にごめんね、アルマ」
「お父様、もういいよ。そのことは何回も謝られたし、こればっかりは仕方ないことだから」
「アルマ……」
あくまで優しく、健気な少女に見られるよう彼女はは振る舞う。
そうとは知るはずもなく、父は健気な子供に育ったことに感動していた。
(自分にアルマに起こった不幸が降りかかったら、あんなように生きれるのだろうか……。本当に優しい子に育ったね)
その感動に浸っていると、アルマから突然質問が飛んできた。
「ねぇ、お父様。気になってたんだけど、魔術を使えない私にお父様の魔術を教えてくれたのはなぜなの?8歳の時の私は魔術を使えるって思ってたから、その時の約束は私を安心させるための嘘だったんじゃないの?」
10歳になり、アルマに魔術を扱える魔力が無いことは明白になった。
しかし、あの時謝った内容の中に、イルマから魔術を教えてもらう、ということは入っていなかった。
そのことが気がかりだった。
「……」
数秒の間の後、イルマは口を開いた。
「確かに、8歳の時にアルマに言ったことは嘘だった。
でも、まだ魔術が使える可能性はまだあったから、本当になる可能性も秘めてた。
結局、アルマは魔術を使えなかった。けれどウルスと話して、アルマに残そうと決めたんだ。
<イルマ・テラズドとウルス・テラズドはいつでもアルマの味方だ>っていうメッセージをね。
これから寮に入ることになって、いろんな困難があると思う。そんなときにこの詠唱を口ずさんでみてほしいって思いで伝えたんだ」
「お父様……。ありがとう……!」
涙ぐみながら、父と抱き合う。
その後たまたまやってきたウルスとも抱き合ったあと、アルマは自分の部屋へと戻った。
~アルマの部屋~
そうして部屋に戻ってくると、当然のように彼女の椅子に座っているマキアがケラケラと笑っていた。
「おいおい。お前、実はありがとう、なんて思ってねぇだろ?」
「帰ってくるなりなんてこと言うのよ、マキア。感謝してるのは本当だから。
魔術を教えてくれてありがとう、っていう方の感謝だけど」
マキアの見立て通り、その言葉には親に対しての感謝は微塵も感じられなかった。
「お前……、躊躇なく言うよなー。
んで?今日の残りどうするんだよ?」
「今日はもう疲れたから寝るよ。実技試験でやっちゃったし。受かんないかもしれないなぁ」
そのネガティブ発言に、マキアは目を丸くした。
「おいおい、まさか魔蝕するのを忘れて試験に臨んだとかじゃないよな?」
「そうじゃないの。
試験官の人に思ったより強い魔術をぶつけちゃって、びしょぬれにさせちゃったの。絶水は強すぎたなぁ」
思わぬ心配ごとに、つい吹き出しそうになる。
「ハハっ。試験で使うには過剰だったかもなぁ。でも、それで不合格ってことは無いと思うぞ?」
「え?ほんとに?」
「そりゃそうだろ。第四階層魔術が人を飲み込むほどでかくなるなんて、本来ありえないんだからな」
いかがでしたか?
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