魔術学院入学Ⅰ
1日更新してなくてすみません!
アルマ篇始まります!
~皇歴260年 テラズド家~
「もうすぐ魔術学院の試験の日かぁ……。
筆記は大丈夫だと思うけど、実技が心配だなぁ……」
マキアに魔蝕を教わってからというもの、多くの魔術を学んできたアルマだが、肝心の魔術学院の実技の内容は分からずに悩んでいた。
「お父様にも聞いたけど、それは教えられない、としか言われないからなぁ……。そもそもあの日から私部屋に籠りっぱなしだし」
アルマの人生が変わったあの日。
彼女はすぐに両親に謝りに行った。
ひどいことを言ってごめんなさいと伝えて、両親との間にできた溝を一応は修復したのである。
「ま、分からないものはしょうがない!切り替え切り替えっと」
切り替えて今日も魔術を覚えようと魔術書を開くと、ニヤニヤした顔でマキアがぬっと出てきた。
「おいおいー、もしかしてまだ許されてないんじゃねぇのか?」
「そんなわけないでしょ。あの時私もお父様とお母様も謝って仲直りしたし」
からかう気満々で言ったことだったが、想定していた反応よりもかなり違っていたものだったため、マキアはそれ以上追求することをやめた。
「……へいへい。んなこと分かってるよ」
(まだ引きずってんのかと思ったが……)
とりあえず平謝りをして、話題を切り替える。
「それより、魔蝕は安定したのか?そうしねぇと実技云々の前に魔術が使えねーぞ」
「うん。それは大丈夫。魔蝕で取り込める魔力も少しずつだけど増加してる。第3階層魔術位までなら安定して使えるよ」
(マジか。想定以上だな)
かなりのハイペースで成長している彼女に驚くが、決して顔には出さずに話を続けた。
「なんだよ。そこまで行ってるんなら心配する必要ねぇじゃねぇか。何を心配してるんだよ」
「いや……。そうなんだけど、実技が心配っていうのは、どんな内容か分からないから心配してるの」
「あぁ、なるほどなー。そんじゃ俺には関係無いな!」
「あ、ちょっと!」
じゃあなーと言いながら、そそくさマキアは魔術書の中へ消えていった。
そうして彼がいなくなった後、アルマはふと、ある約束を思い出した。
「あ、8歳になるときにお父様が、10歳になったら僕の魔術を教えるって言ってたっけ。どんなこと教えてくれるのかな?ちょっと聞きに行こーっと」
部屋を飛び出してイルマの書斎へと向かう。
その様子を魔術書の中で聞いていたマキアは、少しばかりの疑問を口にした。
「……ここにある魔術はたいてい覚えてるはずだが。どうなるやら……」
~イルマの書斎~
「お父様。10歳になったので教わりに来ました」
ドアを何回かノックして入るが、肝心のイルマはいない。
「あ。今日は近くの村に行脚に行ってるんだっけ」
行脚であれば、夕方まで帰ってくることはない。
これからの予定が消えてしまったたアルマは、不意にじっくり見る機会の無かった父の本棚を眺めていた。
「やっぱりいっぱい魔術書がある……。ん?なにこの魔術書?」
大抵の魔術書は見たことがあるアルマだが、その中に今までに見たことがない魔術書が目に入ってくる。
「なんだろ……これ」
その魔術書を手に取り、開こうとする。
しかしなにかの枷がかかっているのか、表紙はびくとも動かなかった。
「あれ。どーしよ……。見たいな」
(めちゃめちゃ気になる!持って帰りたい!でもすぐにバレちゃうな……)
アルマはいったんその魔術書を本棚に戻した。
もし勝手に持ち出した場合、犯人がすぐに特定されてしまうことを危惧したのである。
(うーん……。でも見たいな)
だが、アルマの中の欲望は、留まるところを知らない。
「あ。学校に入学して寮に行くときに一緒に持ってっちゃえば良いのか……」
魔術学院は入学と同時に寮に配属されるため、一定期間は親元を離れる。
(もっていくのに許可は……、要らないでしょ。怒られたりするとめんどいし)
彼女が開かずの魔術書を元に戻したのは、父との関係を考えた上での行動だったが、それは絶対条件ではない。
(バレなきゃ問題無いよね。どんな魔術が記されてるのかな♪)
彼女の心の中はいま、ひたすらに魔術書のことしか考えていない。
(さ、そのためにも頑張らないと!)
何としても学校に受からない理由ができたアルマは、父の書斎を後にした。
~アルマの部屋~
「おっ、父親から良いことは教わったかー?」
部屋に戻ると、マキアが部屋に戻ってきていた。
「うん、良いことを教わったよ。とっても大事なことをね」
アルマは笑っていたが、マキアは変化を感じていた。
(これは……、目の奥に闇を感じる。また父親に裏切られたか。
あるいは……、欲、かな)
「よし、じゃあ、俺からも魔術を教えてやるよ。これを使えば試験の内容なんて簡単にわかっちまうぜ」
「ほんとに!教えて!」
アルマはすぐに食いついてきた。
その様子を見て、マキアは確信する。
(この様子は後者だな。だが、前者も少し混ざってる。ますます面白い奴になったじゃねぇか)
「何ニヤニヤしてるの……。気持ち悪いよ」
「おい、ただの悪口じゃねぇか。そんなこと言うなら教えねぇぞ」
「教えて下さい!マキアさん!」
「ったく、調子がいい奴だな。まぁいいや、今回俺が教える魔術の名は広聴だ。
俺が魔導書からお前の部屋の様子を見てる正体だな」
それを示すように、魔術書から手だけを出したり引いたりする。
「最初に出てきたときに言ってた魔術ね。
今聞いた感じだと……、いろんな道具を通して別の空間の情報を知れるってこと?」
今までの体験(主に彼がどう使っていたか)を思い出しながら、仮説を立てる。
すると、マキアはチッチ、と舌を鳴らした。
「いい線を行ってるが、それはあくまで使い方の一つだ。
広聴の本質は、<魔力が込められた者同士をくっつける>っていうもの。
俺の魔力とお前の部屋の魔導書が有している魔力。それをくっつけて聞いてたってわけだ」
「え?その話だけ聞くと、魔力を持ったものに対して全部に働いちゃうから、私の部屋だけを特定して聞くってできなくない?」
アルマは疑問に思ったことを口にした。
「いい質問だ。
確かに、今の俺の説明だと、広聴はものを特定できないように思われてもしょうがない。
だが、広聴を発動するためには条件がある」
「条件?」
「あぁ。<今までに自分が触れたもの>っていう条件だ」
その条件を知らされたことで、アルマの理解はまたもや遠ざかってしまう。
「んん?ってことはマキアは私の家の魔導書に触れたことがあるってこと?」
「合ってるが、そうじゃないともいえる。
俺はこの家の魔導書に触れたことは無かったが、 同じ 魔術に触れたことはあったんだよ。
ここ、基本的な第三階層魔術しかないだろ?」
「あぁ。なるほどね。要は触れたものっていうのは別に手に限らず、肌とか目、自身が見聞きしたことにも使えるって感じなのか。すごい便利だよねそれ。」
「あぁ、だから第五階層魔術に指定されてるんだよ。
一般に広まっちゃあ、貴族の皆様方は悪用しまくりだしな。」
「なるほどね。それで、詠唱はどう唱えるの?」
彼女は、はやく広聴を覚えたくて仕方がなかった。
「あぁ、こいつの詠唱はちょっと特殊でな。詠唱の最初は『神より生まれし力の根源よ』で良いんだが、魔力をくっつける対象をの詠唱節に入れるようになってる。
例としては、『わが力を魔術書の力と同一と為さん』って感じだな。
より詳細に入れたいときはこの詠唱節の中に入れておけば大丈夫だ」
「なるほど。詠唱は何となく覚えたわ。
ありがとうマキア。これから頑張るから、試験の日までいろんな魔術もっと教えてね!」
マキアに目的の魔術を教えてもらい、アルマは笑顔で答えた。
その表情は一見すると純粋無垢な少女のようだったが、その裏には懐疑心と好奇心を孕んだ複雑な少女の姿があった。
「いいぜ。お前は面白い奴だからな」
いかがでしたか?
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