表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/132

???    

今回はプロローグのプロローグを投稿させていただきます!





追記 9月12日

文章作法を守るように改稿しました。

「ここは……、どこなのだろうか。私は一体……」


 戦争で焦土と化した大地の中で、男が一人膝をつき、つぶやいていた。


 家族、友人、恋人。


 男は人間であること以外、何も覚えて居なかった。


「たしか私は……、うっっ!」

 思い出そうとするが、強烈な頭の痛みが邪魔をする。


 (心が知りたくないと叫んでいるのだろう)

 そう悟った男は、思い出すことをやめた。


「……。行こう」



 少し逡巡した後、男は歩き出す。


 他の人間がいないか。

 辺りを見回しながら、ただまっすぐに続く地平線を歩いていった。








 少し歩くと、男の前にうっそうとした木々が生えている森が現れた。


 突然現れた光景に驚き一瞬足を止めたが、何もない風景に少し飽きていた男は、森の中へと歩みを進めていった。


「こんな場所が……!今まで何もなかったのに」


 森の奥深くへと歩みを進めていくと、男はある異変に気付いて茂みに隠れた。

 (なんだ……?何か騒がしい音が聞こえる……)

 耳を澄ますと、人が喋っているようなものだった。


「えへへっ!それでね__」「へぇ!そうなんだぁ!」「知らなかったー!」


 さらに耳を澄ますと、会話しているのは三つの異なる声色であることに男は気づく。

(3人でしゃべっている……、ここに来るまで人には出会っていないのだが……。なぜこんなところに?)


 男はそう思いながら、その3人の話をさらに聞こうとしたその時、


「ねえねえ!人がいるよ!こっち来てー!」


 3人のうちの1人が男を見つけ、他の2人に知らせるように大声を出されてしまう。

(まずい!)


 焦って逃げようとしたが、なぜかその場から動くことができなかった。


「な、なぜ動かないんだ!」


 男が動揺している間に、3人の少女は男に近づいてくる。


「ねぇねぇ、なんで人がいるの?」「どーしてだろー?」「知らなーい」


 少女たちは、男の姿を見てなにやら話をしている。


「いったい何の話を……!!!」


 先ほどまで気が動転して気づかなかったが、3人には()()()()()()()

 そのことに気づき、男は目を丸くする。


「人間、じゃない……?」


 そんな男の驚きを知ってか知らずか、翼が生えた3人は男に話しかけてきた。


「あなた、人間?どーしてここにいるの?」


 最初に男を見つけた、金色の長髪の少女らしき人物が問いかける。


 男はどう答えるか迷ったが、なんとなくここで言わないといけないと感じ、今までの状況をすべて伝えた。


「どーして、か。分からないんだ。何もかも。自分がどんな名前でどんな人だったのか。

 しかしどうしても思い出せないから、せめて他の人間を、と探して歩いていたらここに……」

「ふーん。でも人間は()()()()()だよ?」

「いない……?なぜなんだ?」



 人間がいない。

 そんな状況が存在するのかと疑問に感じた男は、思わず反問するように質問を返した。




 しかし、少女の回答は、男を驚愕させることになる。


「うーんとね。()()()()()()()()。お母さんに刃向かったからね!

 あれ?それならどうして人間のあなたがいるんだろう?」



 滅ぼされた。

 それはすなわち、自分以外の人間が()()()いなくなったということ。

 その事実に、男は開いた口がふさがらなかった。


「そ、そんな……。これから私はどうすれば」


 男は路頭に迷った。

 これから生きていこうにも、必ず人の助けが必要になる場面が出てくるはず。


 しかし自分以外に人間がいないとなれば話が変わる。


(これからどうすれば良い……。

 なにか、なにか無いのか……!)


 必死になって考える。

 そんなとき、3人の少女の内の1人、肩口ほどに髪を切り揃えた灰色の少女らしき人物が提案してきた。


「ほかの人間が欲しいの?蘇らせることができるよ?」

「本当か?!ど、どうすれば良いんだ?!」


 その少女の提案を、男は二つ返事で首を縦に振る。


「うーん。そうだなー。まずは私たちがあなたの記憶を見ても良い?」

「私の記憶を……?ど、どうやって?」


 記憶を見る。数少ない自分の記憶を辿っても、記憶は自分にしか分かりえないもののはずだが、少女らしき人物は当たり前にように答える。


「簡単だよ。あなたの心の中を目で見るの。

 この目は心を見通すの」


 そう言った彼女の右目は赤く光っていた。


「目で心を見通す……。すごい」



(羽が生えている時点で分かっていたが、やはり人間では無いな……。

 私のような何も持ってない、一人では何もできない者とは大違いだ)


 彼女らの人間離れした力を見るたびに、自身の弱さを痛感する。


 男がそう考えている間、短髪の少女は男をジーッと眺めていた。


「じゃ、見ていくよーっと。ふむふむ……。

 へぇー。あなたが」


「ねぇねぇ」

「ど、どうしたんだ」


 男の心の中を覗き終わったのか、短髪の少女は男に話しかけた。


「あなたの記憶、覗き終わった。

 この記憶から蘇らせても良いけど、それ相応の代償を伴うよ」



 真剣な顔で忠告をする、先ほどまでの雰囲気とは全く違う様子に、男は息をのみ考えた。


(相応の代償、か。

 私は今、空っぽな人間だ。記憶もない。今を一人で生きたとしても、待っているのは孤独な死のみ。そんな惨めな思いをするくらいなら、代償などいくらでも払おうではないか!)


「分かった。その代償を払おう」


 男は覚悟を決めた。

 その様子を見た三人は、もとの柔らかな顔に戻ると、黒髪で短髪の少女らしき人物は告げた。


「分かった。じゃあ今からあなたの記憶から、あなたの記憶にあった場所や人を蘇らせる。これを使うと私たちは元居た場所に戻っちゃうから。その後は自分で頑張って」

「分かった」


 そういい終わった後、3人はそれぞれの手をつないで輪を作り、なにかを唱え始める。


『輪廻の輪に囚われし地獄の魂たちよ。現世の楔を用いて今此処に帰らん』


 そう唱え終わると、辺り一帯が純白の光に包まれる。


「!!っ」

 男はそのまぶしさに思わず目をつぶった。





「な、何が起こったんだ……。!!!」


 目を開けると、そこには小さな家が建っていた。

 辺りを見回せば畑が広がるのどかな場所で、少し離れた場所には家の明かりも見えている。


 先ほどまでとの違いに、上手くこの状況を飲み込めないでいると、


「あら、あなた帰って来てたんですか?」


 目の前の小さな家の扉が開き、1人の女性が男に駆け寄ってきた。


「き、君は……。誰だっけ?」


 必死に記憶を辿ろうとするが、やはり思い出せない。

 その様子をからかっていると思った女性は、むーと頬を膨らませながらこう言った。


「もう!なに言ってるんですか!あなたの妻のーーーですよ!」


「え??いま、なんて……?」

「だーかーら、ーーーですって!」



 女性の名前が聞こえなかった。

 聞き逃したかと思いもう一度聞き返したが、名前だけが確かに聞こえない。


 とりあえずこの状況を何とかしないと、と感じた男は、気を取り直して女性に話しかけた。


「ご、ごめん。悪かった。さ、早く家に行こう」

「もう!そうですね。私たちの子供も待ってますしね!」


 2人は家に入っていく。



 家に入ると、そこには3人の子供がベッドですやすやと寝ていた。


「可愛いですよねぇ。私たちの子ども♪」

「こ、これが私の子供……。やはり思い出せない」


 妻と名乗る女性に悟られぬよう、小声でつぶやく。

 すると、子供たちが一斉に男の方をじーーっと見ていた。


(な、なんだその目は……)


 そこはかとない恐怖感を覚えた男は、つい目をそらすが、今度は何者かの声が頭に響いてきた。


「ねぇ。名前を知りたいかい?知りたかったら、次に起こる戦に勝つんだ」


(?!?!お前は誰なんだ?戦が起こるなんて何故わかる!?)


 突然響いてきた声に、男は戸惑いながらも会話を続ける。

 それとは対照的に、声は飄々としていた。


「分かるとも。なぜなら僕は___」


 しかし、その声は途中で止まってしまう。


「おっと、早いけど時間みたいだ。ともかく、あと5日後には戦争が起こる。そこで武勲を立てて領地を作るといい」


 そう告げると、その声は一切聞こえなくなった。

(おい!おい!……。なんなんだ今の)


 男は先の声の情報を信じるべきか迷っていた。

 どこの誰だかわからない、目的も分からない。


 強烈な胡散臭さを感じたが、妙な胸騒ぎを感じ、とりあえず家の中の武器を集めることだけはしておいた。


(こんなにのどかなのに……。本当に戦争が起こるのか?)



 5日後。





 男がいた場所は、戦火に包まれた。



 この一帯を治めていた王国と、隣国の戦い。

 その最前線となってしまっていた。



 血生臭いにおいが辺り一帯に充満し、死体が絨毯のように敷かれている。


「はぁっ……。はぁっ、はぁっ」


 そんな中で男はまた一人、生き残っていた。



 無我夢中で目の前の敵を殺していた。

 だが、また守れなかった。


 傍らには妻と名乗っていた女性と、3人の小さな子供の死体。


「また……、一人なのか」



 ぼーっと立ち尽くしていた男に、援軍として到着した兵士が興奮した様子で話しかけてきた。


「おい、おい!お前、まさか生き残ったのか!」

「あ、あぁ……」

「す、すごい!英雄だ!」


(なぜ、私が、英雄なんだ……?)

 男は何も心当たりは無い。

 ただ、目の前の物を必死に守ろうと剣を振るい、敵を殺していただけ。

 だが、聞く耳を持たない援軍の兵士たちに半ば強引に連れられ、男は王都へと行くことになった。



 激戦地でたった一人生き残り、領土を守り抜いた英雄として。



(私は、なんのために……)



 その後、男は無事に出世の道を登って領地をもらい、王国から独立して一つの国を作り、初代皇帝を名乗ることになる__






 その国の名は、『ファリストン皇国』







「フフ……。僕の可愛い娘たちを使ってまで蘇らせた世界。

 君には守れるのかな??」
















いかがでしたか?

感想やブクマ等、随時受け付けておりますので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ