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今回はプロローグのプロローグを投稿させていただきます!
追記 9月12日
文章作法を守るように改稿しました。
「ここは……、どこなのだろうか。私は一体……」
戦争で焦土と化した大地の中で、男が一人膝をつき、つぶやいていた。
家族、友人、恋人。
男は人間であること以外、何も覚えて居なかった。
「たしか私は……、うっっ!」
思い出そうとするが、強烈な頭の痛みが邪魔をする。
(心が知りたくないと叫んでいるのだろう)
そう悟った男は、思い出すことをやめた。
「……。行こう」
少し逡巡した後、男は歩き出す。
他の人間がいないか。
辺りを見回しながら、ただまっすぐに続く地平線を歩いていった。
少し歩くと、男の前にうっそうとした木々が生えている森が現れた。
突然現れた光景に驚き一瞬足を止めたが、何もない風景に少し飽きていた男は、森の中へと歩みを進めていった。
「こんな場所が……!今まで何もなかったのに」
森の奥深くへと歩みを進めていくと、男はある異変に気付いて茂みに隠れた。
(なんだ……?何か騒がしい音が聞こえる……)
耳を澄ますと、人が喋っているようなものだった。
「えへへっ!それでね__」「へぇ!そうなんだぁ!」「知らなかったー!」
さらに耳を澄ますと、会話しているのは三つの異なる声色であることに男は気づく。
(3人でしゃべっている……、ここに来るまで人には出会っていないのだが……。なぜこんなところに?)
男はそう思いながら、その3人の話をさらに聞こうとしたその時、
「ねえねえ!人がいるよ!こっち来てー!」
3人のうちの1人が男を見つけ、他の2人に知らせるように大声を出されてしまう。
(まずい!)
焦って逃げようとしたが、なぜかその場から動くことができなかった。
「な、なぜ動かないんだ!」
男が動揺している間に、3人の少女は男に近づいてくる。
「ねぇねぇ、なんで人がいるの?」「どーしてだろー?」「知らなーい」
少女たちは、男の姿を見てなにやら話をしている。
「いったい何の話を……!!!」
先ほどまで気が動転して気づかなかったが、3人には翼が生えていた。
そのことに気づき、男は目を丸くする。
「人間、じゃない……?」
そんな男の驚きを知ってか知らずか、翼が生えた3人は男に話しかけてきた。
「あなた、人間?どーしてここにいるの?」
最初に男を見つけた、金色の長髪の少女らしき人物が問いかける。
男はどう答えるか迷ったが、なんとなくここで言わないといけないと感じ、今までの状況をすべて伝えた。
「どーして、か。分からないんだ。何もかも。自分がどんな名前でどんな人だったのか。
しかしどうしても思い出せないから、せめて他の人間を、と探して歩いていたらここに……」
「ふーん。でも人間はいないはずだよ?」
「いない……?なぜなんだ?」
人間がいない。
そんな状況が存在するのかと疑問に感じた男は、思わず反問するように質問を返した。
しかし、少女の回答は、男を驚愕させることになる。
「うーんとね。滅ぼされちゃった。お母さんに刃向かったからね!
あれ?それならどうして人間のあなたがいるんだろう?」
滅ぼされた。
それはすなわち、自分以外の人間がすべていなくなったということ。
その事実に、男は開いた口がふさがらなかった。
「そ、そんな……。これから私はどうすれば」
男は路頭に迷った。
これから生きていこうにも、必ず人の助けが必要になる場面が出てくるはず。
しかし自分以外に人間がいないとなれば話が変わる。
(これからどうすれば良い……。
なにか、なにか無いのか……!)
必死になって考える。
そんなとき、3人の少女の内の1人、肩口ほどに髪を切り揃えた灰色の少女らしき人物が提案してきた。
「ほかの人間が欲しいの?蘇らせることができるよ?」
「本当か?!ど、どうすれば良いんだ?!」
その少女の提案を、男は二つ返事で首を縦に振る。
「うーん。そうだなー。まずは私たちがあなたの記憶を見ても良い?」
「私の記憶を……?ど、どうやって?」
記憶を見る。数少ない自分の記憶を辿っても、記憶は自分にしか分かりえないもののはずだが、少女らしき人物は当たり前にように答える。
「簡単だよ。あなたの心の中を目で見るの。
この目は心を見通すの」
そう言った彼女の右目は赤く光っていた。
「目で心を見通す……。すごい」
(羽が生えている時点で分かっていたが、やはり人間では無いな……。
私のような何も持ってない、一人では何もできない者とは大違いだ)
彼女らの人間離れした力を見るたびに、自身の弱さを痛感する。
男がそう考えている間、短髪の少女は男をジーッと眺めていた。
「じゃ、見ていくよーっと。ふむふむ……。
へぇー。あなたが」
「ねぇねぇ」
「ど、どうしたんだ」
男の心の中を覗き終わったのか、短髪の少女は男に話しかけた。
「あなたの記憶、覗き終わった。
この記憶から蘇らせても良いけど、それ相応の代償を伴うよ」
真剣な顔で忠告をする、先ほどまでの雰囲気とは全く違う様子に、男は息をのみ考えた。
(相応の代償、か。
私は今、空っぽな人間だ。記憶もない。今を一人で生きたとしても、待っているのは孤独な死のみ。そんな惨めな思いをするくらいなら、代償などいくらでも払おうではないか!)
「分かった。その代償を払おう」
男は覚悟を決めた。
その様子を見た三人は、もとの柔らかな顔に戻ると、黒髪で短髪の少女らしき人物は告げた。
「分かった。じゃあ今からあなたの記憶から、あなたの記憶にあった場所や人を蘇らせる。これを使うと私たちは元居た場所に戻っちゃうから。その後は自分で頑張って」
「分かった」
そういい終わった後、3人はそれぞれの手をつないで輪を作り、なにかを唱え始める。
『輪廻の輪に囚われし地獄の魂たちよ。現世の楔を用いて今此処に帰らん』
そう唱え終わると、辺り一帯が純白の光に包まれる。
「!!っ」
男はそのまぶしさに思わず目をつぶった。
「な、何が起こったんだ……。!!!」
目を開けると、そこには小さな家が建っていた。
辺りを見回せば畑が広がるのどかな場所で、少し離れた場所には家の明かりも見えている。
先ほどまでとの違いに、上手くこの状況を飲み込めないでいると、
「あら、あなた帰って来てたんですか?」
目の前の小さな家の扉が開き、1人の女性が男に駆け寄ってきた。
「き、君は……。誰だっけ?」
必死に記憶を辿ろうとするが、やはり思い出せない。
その様子をからかっていると思った女性は、むーと頬を膨らませながらこう言った。
「もう!なに言ってるんですか!あなたの妻のーーーですよ!」
「え??いま、なんて……?」
「だーかーら、ーーーですって!」
女性の名前が聞こえなかった。
聞き逃したかと思いもう一度聞き返したが、名前だけが確かに聞こえない。
とりあえずこの状況を何とかしないと、と感じた男は、気を取り直して女性に話しかけた。
「ご、ごめん。悪かった。さ、早く家に行こう」
「もう!そうですね。私たちの子供も待ってますしね!」
2人は家に入っていく。
家に入ると、そこには3人の子供がベッドですやすやと寝ていた。
「可愛いですよねぇ。私たちの子ども♪」
「こ、これが私の子供……。やはり思い出せない」
妻と名乗る女性に悟られぬよう、小声でつぶやく。
すると、子供たちが一斉に男の方をじーーっと見ていた。
(な、なんだその目は……)
そこはかとない恐怖感を覚えた男は、つい目をそらすが、今度は何者かの声が頭に響いてきた。
「ねぇ。名前を知りたいかい?知りたかったら、次に起こる戦に勝つんだ」
(?!?!お前は誰なんだ?戦が起こるなんて何故わかる!?)
突然響いてきた声に、男は戸惑いながらも会話を続ける。
それとは対照的に、声は飄々としていた。
「分かるとも。なぜなら僕は___」
しかし、その声は途中で止まってしまう。
「おっと、早いけど時間みたいだ。ともかく、あと5日後には戦争が起こる。そこで武勲を立てて領地を作るといい」
そう告げると、その声は一切聞こえなくなった。
(おい!おい!……。なんなんだ今の)
男は先の声の情報を信じるべきか迷っていた。
どこの誰だかわからない、目的も分からない。
強烈な胡散臭さを感じたが、妙な胸騒ぎを感じ、とりあえず家の中の武器を集めることだけはしておいた。
(こんなにのどかなのに……。本当に戦争が起こるのか?)
5日後。
男がいた場所は、戦火に包まれた。
この一帯を治めていた王国と、隣国の戦い。
その最前線となってしまっていた。
血生臭いにおいが辺り一帯に充満し、死体が絨毯のように敷かれている。
「はぁっ……。はぁっ、はぁっ」
そんな中で男はまた一人、生き残っていた。
無我夢中で目の前の敵を殺していた。
だが、また守れなかった。
傍らには妻と名乗っていた女性と、3人の小さな子供の死体。
「また……、一人なのか」
ぼーっと立ち尽くしていた男に、援軍として到着した兵士が興奮した様子で話しかけてきた。
「おい、おい!お前、まさか生き残ったのか!」
「あ、あぁ……」
「す、すごい!英雄だ!」
(なぜ、私が、英雄なんだ……?)
男は何も心当たりは無い。
ただ、目の前の物を必死に守ろうと剣を振るい、敵を殺していただけ。
だが、聞く耳を持たない援軍の兵士たちに半ば強引に連れられ、男は王都へと行くことになった。
激戦地でたった一人生き残り、領土を守り抜いた英雄として。
(私は、なんのために……)
その後、男は無事に出世の道を登って領地をもらい、王国から独立して一つの国を作り、初代皇帝を名乗ることになる__
その国の名は、『ファリストン皇国』
「フフ……。僕の可愛い娘たちを使ってまで蘇らせた世界。
君には守れるのかな??」
いかがでしたか?
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