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マギアス〜魔を求めるモノ〜   作者: ピロシキまん
エピソードⅡ〜それぞれの学び舎〜
19/132

魔導学園入学Ⅴ

今日は2話更新です!(1話は第1部分です。)


追記 9月12日

文章作法を直してます。

 ~魔導学園 イシュタルホール~



 ニコルが着いた後、他に受験者が来ることはなかった。


「もうこれ以上は増えないだろうな」


 バルトラがそう言った瞬間、イシュタルホールの扉が閉められた。


「どうやら正解だったみたいだね」


 扉が閉められて少し経ったが、先生のような人物は見当たらず、しん、と静まり返っていた。


(何かの魔導機でこちらに送るとかか?

 さすがに無理があると思うが……、やってみたいな)


 バルトラが下らないことを考えていると、緑髪の少年がしびれを切らして口を開く。


「おいおい、先生が誰も来ねぇぞ?

 これじゃあ入学式できないんじゃねぇか?先生はどこだよ?

 あ、もしかして、俺らが優秀すぎて先生が教えることが無いからいないってことかぁ?ま、無理もねぇか。アハハ!」


(あいつ、なにアホなこと言ってんだ。俺らは魔導の世界の序の口しか知らないひよっこだぞ)


 心の中で彼をアホ認定していると、フードを被った人物が彼のもとへ近づいていった。


(あの人はたしか……)


「おい。なにをアホなことぬかしてるんだ。お前は魔導のことをこれっぽっちしか知らない。嘘を言うんじゃないぞ。クリス・ネス・リース君」

「あぁ?なんだお前。俺のことをアホだとぉ?馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞ!」


 クリスはいきなり小馬鹿にされ、逆上して怒鳴った。


「なんだお前、とは失敬じゃないか。実技試験の時にいたのが気づかなかったのか?」


 彼女はそういってフードをとり、紫の髪と綺麗な顔面を曝け出した。

 

 それを見たクリスの顔は真っ青になった。


「あ、あんたは!”暴力の魔女”、ビアー!

 な、なんでここに……」


 イシュタルホールにいる生徒たちからも、ざわめきが起こる。


「え?なんでって、お前たちの面倒を見るために来た以外の理由があるのか?

 それと暴力の魔女だなんて大層な名前は要らん。恥ずかしいわ」

「「「「「えぇぇぇぇぇ!」」」」


 急な発表に、ハイクラスの面々から驚きの声があがる。

 しかし、そんな中でもバルトラは落ち着いていた。


「バルトラは驚かないんだね」

「いや、内心めっちゃ驚いてるよ。なんていうか、驚きを通り越して感動してる状態?」

「なるほどね。彼女は魔導士としても戦闘士としても有名だから、バルトラにとっては神みたいな存在だったのかもね」


 ざわめきが治まらない中、ビアーはイシュタルホールの教壇に立ち、大きな声で告げた。


「静かに!さっき言った通り、私はあんたたちハイクラスの面倒を見ることになったビアーだ」


 これは、夢では無い。あのビアーに魔導を教えてもらえることを改めて認識した者達から、再び歓声があがる。


「先ほどのクリスのような勘違いをしているものがいるかもしれないので言っておく。

 お前らがいるこの場所はただのスタートラインに過ぎない。全部知ってるなんてぬかしてる奴は世界を知らなすぎるぞ。

 ここは魔導を一番知れる場所だ。しかもお前らはハイクラス。

 大きな自由も約束されてる。これからどう動くかはお前ら次第だ!

 頑張りたまえ。以上で入学式を終了する。1刻の休憩の後第3講義堂に集合だ。解散!」


 そういうと、ビアーはイシュタルホールの扉を開けて出ていった。

 

「……嵐のように終わっちゃったね。入学式」

「だな。さ、休憩して第3講義堂に行こうぜ。今ここで呆けても何も得ることは無いからな」

「オッケー。相変わらず冷静すぎだよバルトラ」

 

 2人が出ていったのを見て、他の生徒たちもぞろぞろと動き始めた。




 ~第3講義堂~




「よし、全員そろったな。この時間は学園の設備、ルールやイベントの紹介、あとは自己紹介なんかをやってもらう。」


興奮冷めやらぬ生徒達を他所に、ビアーは淡々と説明を始めた。


「まずは魔導学園の設備についてだ。

 今いるこの第3講義堂以外に1年生が講義を行うのは4つ。

 1つ目ははお前たちがさっきまでいたイシュタルホール。一番大きい部屋だな。

 次に第1講義堂、第2講義堂。そして筆記試験が行われた大講義堂だ。

 基本的にはこの5教室で行うが、外で講義をしたりすることもあるから、私の話をよく聞いておくように」


(1年生が、ってことは2年や3年になれば教室は変わるって認識でいいのか?)


「次にイベントの紹介だ。

 魔導学園はお前らが知っているように1年から5年まである。その中で一番のイベントと言えば、5年生になるとある遠征だろうな。行く場所はお前たちが決めていいし、どのように行くのかも自由。

 ルールは死なないことだ。後は小規模なものがたくさんあるが、今年初開催のイベントもある。楽しみだな」


(どこに行くか今のうちに考えておくのもあり、かな)


「じゃ、学園の大まかな説明は終わったから、みんなの自己紹介といこうじゃないか。私は大丈夫だとは思うが、念のため。

 ビアー・シュバルツだ。巷では”暴力の魔女”なんて呼ばれてるが、暴力はあんまり好きじゃない。戦闘士と魔導士の2つを生業としている。

 こんなところかな。

 じゃあ最初は……一番前の右端にいる、クリス・ネス・リース君から行こうか」


 ビアーに名前を呼ばれ、肩をビクッとしたクリスはしぶしぶ椅子から立ち上がり、ぼそっと喋り始めた。


「クリス・ネス・リース……。親は子爵家です……」


 それだけ言うと、クリスはそそくさと座ってしまう。


「おや?さっきの私の説教で元気がなくなってしまったか。まぁいい。次は……クリスの後ろの青髪少年から順番に言っていこうか」


 そういわれた青髪の少年は立ち上がり。


「ほーい!俺っちはヴァイス・サディアスだよ~。実家は魔導都市の端っこ。親はそこで鉱山管理をしてる~。よろしくね~!」


(なにっ。鉱山だと……!?)


「次!赤髪の少女!」

「はいっ!メリー・バル・クルス。実家は公爵家ですわ。

 魔導の技術を磨いて、お父様の役に立てる人物になるために来ました。よろしくお願いしますわ」


 公爵令嬢らしく優雅な礼をして、メリーはその場に座りなおす。


「おぉ、クルス家の嬢さんか。あそこはみんな優秀と聞くが、実力が楽しみだ。次!金髪の男!」


「はい。ニコル・モーントと言います。

 親はただの平民ですが、僕にいろんなことを教えてくれました。その恩返しのためにも魔導学園でもっと自分の才能を伸ばしていきます。よろしくお願いします」


 ニコルは真面目に礼をして座る。


「次!同じく金髪の少女!」

「ん……。トレーネ・クァンセ……。親は小さな工場……。そこをおっきくするために来た……。よろしく……」

 

 端的な言葉で説明した後、トレーネは消えるようにその場に座った。


「次!茶髪の少年!」

「はい。バルトラ・フォウ・グリストです。母は戦闘士をやってます。

 魔導学園では魔導を多く学んで、将来に生かそうと考えています。よろしくお願いします」


「グリスト……。あぁ、今の副学長の家か。それと母が戦闘士……、アリストか。

 なるほど。そうじゃなきゃ()()()()()しないもんな」


 ビアーはニヤニヤしながら、自己紹介を終えたバルトラを見ている。


(そのニヤニヤはなんだよ……)


 ちょっと気持ち悪いと思いながら礼をして座ると、ビアーは話始めた。


「よし!自己紹介はみんな終わったな。

 今日はもうこれで終わり!

 それぞれ自分の荷物が寮に届いてると思うから、寮に行って確認してみてくれ。

 明日は9の刻にイシュタルホールに集合だ。遅れたら教えないからちゃんと時間は守れ。解散!」


 魔導学園の入学式はこれにて終わりを迎えた。


 新入生たちは、これから様々な思いを胸に明日からの講義を受けていく。




 そして、この世代が後に『改革の世代』と呼ばれるようになるのは、もう少し先のお話……



いかがでしたか?

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