魔導学園入学Ⅳ
遅くなってすみません!
バルトラ篇第4話です!
追記
9月12日
文章作法を直してます。
~皇歴260年 市立魔導学園~
入学式の朝。
学園に続く市街地を歩きながら、ライラとバルトラは話していた。
「ついに入学式かぁ。試験結果が発表されるからドキドキしてるんだろうな、他の人たち」
「はぁ。バルトラ様くらいですよ。余裕ぶっこいてるの」
「ま、そうだろうねぇ」
そんな他愛の無い話をしているうちに、学園の門の前へとたどり着いた。
「着いたね。じゃ、頑張ってくる」
入学式からは生徒の自立を促すということで、基本的に生徒以外が学園に入ることはご法度である。
「あの、バルトラ様!」
「どうしたの?ライラ」
門に入るすんでのところで、バルトラは呼び止められた。
「あの、えっと……」
ライラは迷っていた。
こんな思いは侍女が持つべき感情では無い。
かえって彼に迷惑がかかってしまうだろう。
昨日までライラはそう考えていたし、今までだってそうしてきた。
しかし、専属の侍女としての役目が終わってしまう今になって、自身のわがままな思いが出てきてしまう。
今伝えれば、自分のことを頭の片隅にでも覚えてくれるだろうか。
その二つを天秤にかけた時、大きく傾いたのは後者だった。
「バルトラ様。入学するとあまり帰っては来ないでしょう。
ハイクラスだといつでも帰れそうですが、バルトラ様は魔導機の研究とかしまくって帰らないでしょうから。でも寂しくなったら、いつでも帰ってきてくださいね!
私……いえ、私たちは……、いつでもあなたの帰りをまっております」
「あぁ。ありがとう。いってくるよ」
世話を焼いてくれた侍女からの感謝を受けたバルトラは、その思いを胸に学園の中へと一歩を踏み出した。
彼が見えなくなるまで門の前で見送っていたライラは、誰にも聞こえることのない、小さな声で呟いた。
「私は、卑怯だ」
(今だって、あの時だって……)
「さ、入学式の会場はどこかな……、ん?あいつは……」
正門から続く大きな一本道を歩きながら、入学式の会場を探していると、あの時の金髪の少年らしき人物がいた。
(さすがに声をかけてみるしかないよな!)
「なぁなぁ、君」
後ろから声をかけられ、少年は振り返った。
「ん?僕?」
「そうそう。君、筆記試験の時10分で終わらせてなかった?」
(十中八九そうだろうけどな)
「うん。そこまで難しい問題でもなかったからね。でもどうして僕が終わった時間を知っているんだい?」
案の定と言うべきか。
彼は当たり前のように答えた。
(やっぱり……。入学初日に見つかるのはラッキーだったな)
「俺も同じ時間に終わったからさ。暇だなーと思って何気なくあたりを見回してたら、君を見つけたんだよ」
バルトラがそういうと、少年はニコっと笑った。
「なるほど。僕も探しておけばお互いに気づけたかもね。
僕の名前はニコル。ニコル・モーントだ。よろしくね」
「バルトラ・フォウ・グリストだ。
失礼だけど、ミドルネームが無いってことは、平民ってことであってる?」
魔導都市エンゲニスでは貴族制がとられており、侯爵、公爵、伯爵、子爵、男爵、平民で位置づけられている。
この中に存在しない戦闘士は、皇国お抱えの職業であるため、この枠組みから外れた存在である。
「そうだよ。なんてことない平民さ」
(平民でその頭脳……。すげえ奴はいるもんだな)
バルトラは、自身が恵まれていることを父から聞いている。
もちろん、その恵みと同等の恩恵を受けるためには、かなりの努力をしないといけないということも。
「そういう君は、副学園長でもあり、公爵でもあるグリスト家の方だったとは。これは何も知らずにご無礼を。お許しください」
相手の名前を聞き、ニコルはわざとらしく頭を下げた。
「よしてくれよ、ニコル。
ここは学園だ。貴族同士のお見合いじゃないんだし、これから友達になろうってのに、敬語なんて使いたくない」
学園に来てまで堅苦しい関係を築きたくなかったバルトラは、貴族が取るような恭しい態度は気持ちよくなかった。
「それならよかった。じゃあ、僕もバルトラって呼んでも大丈夫かな?」
「もちろん」
互いに手を取り、握手を交わす。
「さ、大講義堂へ急ごう。試験結果が出てるはずだから」
「了解」
そして2人は、結果が載せられている大講義堂に走っていった。
~大講義堂~
大講義堂に着くと、そこには長蛇の列ができていた。
「さすがに多いな。ま、並ぶか」
「そうだね」
2人は列の最後尾に並ぶ。
「入学式はたしか、ここでクラスが分かった後、クラスごとの集合場所に移動してやるって感じだったよな?」
「そうだね。ハイクラスに入れてるといいなぁ。入ってますように!」
ニコルは天に向かって祈っていたが、対してバルトラは余裕そうな顔だった。
「筆記が俺ぐらい早く終わったんなら大丈夫じゃないか?」
「バルトラ……筆記はあんまり評価対象にならないって言われてるの知ってる?」
もしかしたら、と思い質問するが、彼は何を今更、と言いたげだった。
「分かってるよ。実技が本命だって。
ニコルだって、俺と同じくらい頭いいんだから心配しなくてもいいんじゃ無ぇの?」
ニコルは彼の高い自己評価に驚くとともに、少し警戒した。
自身の能力を鼻にかける傲慢な人物なのではないかと。
「バルトラ……、ふつうそんなに自分を評価できないよ」
しかし、そんな警戒は杞憂に終わる。
「そうなのか?でも、俺は小さいころから努力してきたから。努力したやつが自信を持つのは普通だろ?努力してない奴が自信を持てないのは当たり前だ」
(あぁ、なるほど。努力してるからってことなのか。これは謝らないとね)
「そうだね。ぶしつけな質問してすまなかった」
「いいよ。俺も言い方を考えればよかったかもな」
お互いに先の言動を反省し、その後も駄弁っていると、列の一番前まで来た。
正面にある教壇の上には、黒いボックスが置かれている。
「そこに自分の名前を言えば、結果が分かるみたいだよ」
ニコルに言われたように、ブラックボックスの目の前に立つと、自分の名前を言った。
「バルトラ・フォウ・グリスト」
すると、ボックスの中から1枚の紙が出てきた。
バルトラ・フォウ・グリスト
ハイクラス+
集合 イシュタルホール
(なんだこの+って。わかんないけどハイクラスは確定だな)
結果用紙を自分のポケットに入れ、列から抜け出すとき、バルトラはニコルの耳元で囁いた。
「俺はハイクラスだ。先に行って待ってるからな」
「!!!分かった。僕も後で行くよ」
~イシュタルホール~
「試験以来だな。ここにいる奴らが全員ハイクラスなのかな?」
見渡すと、そこには4人の男女がいた。
その中には、見覚えのある赤髪の少女が。
「げっ。あいつハイクラスなのかよ……」
心の声を漏らしながらニコルの到着を待っていると、赤髪の少女、メリーはバルトラを見つけ彼の方へとやってきた。
「まぁ、あなたも受かっていたのですね。てっきりミドルクラスだと思っていましたが」
メリーは真顔でそれだけ言ってもといた場所へと戻っていった。
「ご、ご冗談を……。アハハ……」
バルトラは笑っていたが、内心は穏やかではない。
(相変わらずなんだこいつ!久しぶりに会って早々嫌味かよ!やっぱ嫌いだ!)
一方のメリーは……
(わたくしってばなんてことを……!
さすがですわの一言を言えば良かったんですのに……なぜバルトラ様の前になると嫌味のように言ってしまうのでしょうか……)
2人は相変わらずすれ違っていた。
それから程なくすると、その様子をからかうような声が聞こえてくる。
「入学式の前に痴話喧嘩かい?バルトラ」
「ニコル!じゃあお前も……」
「うん、ハイクラスだ。改めてこれからよろしく。バルトラ」
「あぁ。こちらこそ!」
2人は今一度握手をした。
いかがでしたか?
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