レージの準備Ⅱ
レージ篇第2話です!
追記 9月12日
文章作法を直してます。
~皇歴259年~
ライルに街に行ったことがばれてるって言われた次の日。
俺は性懲りもせず街に出ていた。
「流石に今回はバレてない、よな?」
母さんやライルらしき視線は感じない。
「良かった……」
そうして俺が来た街の名は、エール。
魔法都市エンヴィシスの街の一つで、うちから一番近いし、活気がある良い街だ。
他の街もあるけど、そこまで行くと帰る時間が遅くなってばれそうだから行ってない。
その他諸々の理由があってエールの街に行っている俺だが、毎回行く場所がある。
エールの街を少し行ったところにある、やけに派手な看板が目につく場所。
そこの扉を開け、俺は毎回会っているある人物に話しかけた。
「また来たのねん♪楽しみにしてたわぁ!レージちゃん!」
「おはよー、クリスタさん」
服が破れそうなくらいムキムキの筋肉。
かなりの厚化粧でも隠せない強面が光る、おっちゃんなオネェ。
「うっふーん。今日もいい筋肉、ねっ?」
そう、この人はクリスタさん。トラベラーだ。
トラベラーってのは、日本で言う旅行会社みたいなもの。
旅の手続きをしたり、その旅に同行する護衛をつけたりしてる。
クリスタさん本人も冒険者をしてるから、自分で依頼を受けたりしてて知識が豊富なんだ。
母さんはあんまり外のことを話さないから、ほとんどの情報を俺はこの人から仕入れている。
「それでぇん、どうしたのん今日は?」
「あー、今日は魔法学校のことについて教えてくれないかなーと思って。
クリスタさん、魔法学校から冒険者になったんでしょ?」
「えぇ♪そうよぉん」
「だったら魔法学校でどんなこと教えてるのか……、聞かせてくれないかなぁ?」
くらえ!必殺子供のキラキラ光線!
これをくらって何もくれなかった奴はいないぜ!と思っていたけど、その返事は意外なものだった。
「ごめんねぇ、レージちゃん♪
魔法学校で教えられることは絶対に学校にいた人以外には教えるな、って入学の時に約束されるからだめなのよねぇん」
なんじゃそりゃ。学校が秘密主義を貫いてるのか?
だが、ここで引き下がるのは男じゃねぇと思った俺は、値引き交渉のように情報を絞っていくことに作戦を変更した。
だがその前に……、
「えー。でも口約束でしょ?どうせ」
「それがねぇ、実はある魔法がかかっててねぇん。言っても相手には聞こえないのよぉん」
嘘でしょー作戦をかましてみたが、結果はハズレ。
マジで内容教えない気なのかよ……。もしかしてめっちゃ怖い場所だったりする?
「それは、しょうがないね。もしかして魔法学校ってめっちゃ厳しかったりする?」
秘密主義的な性格が分かった上で、俺はそれが一番気になってしまった。
今の頭に浮かぶのは、情報が漏れない監獄学園のようなもの。
うわーん!
そんなんじゃキラキラな学園生活が送れねぇよ!
「全然そんなことはないわよぉん。
皆和気あいあいとしてたし、イベントもいっぱいあるから楽しいわぁん」
「ほんとに!その内容は……、言えないよね」
「これは言えるわよぉん♪
授業の内容はその魔法に引っかかっちゃうけど、イベントは魔法の内容とはかかわりないからねぇん♪」
お?ちょっと風向きが変わった。
「ほんとに!!教えて教えて!」
ありがとう神様!
これはでかいぞ!さあさあ、どんなキャッキャウフフなイベントがあるんだ?!
「そうねぇ、まずは2学年になるとリンガードの森で1週間、生徒だけで過ごすわぁ。
あの時の生を実感する感覚、今でも興奮しちゃう!」
……ん?
えっとー、なんか最初からハードすぎない?
「3年生になるとそれが1週間が1カ月になるわねぇ!」
ちょちょちょ!やっぱやべぇ!
なんか行きたくなくなってきたなあ……。
今までの期待をぶち壊すような過酷な内容にげんなりしたが、学校側もそれは承知のようだ。
「最後は4年生のコミータ諸島への2週間の遠征ねぇ♪あそこは卒業しても行きたくなるくらいいい場所よぉ!」
おお!コミータ諸島って確か、観光で有名な場所だったな!
「良いイベントあんじゃん!」
4年まで待たなきゃいけないけど、最高なイベントが待ってるなぁ!それだけで行く理由ができたってもんだ!
その後も俺は知りたいことを聞きまくり、頭がパンパンになった所で家路につくことにした。
♦︎
「今日はありがとー!また来るねクリスタさん!」
「えぇ、またねん♪レージちゃん♪」
俺はクリスタさんと別れ、足早に我が家へと向かう。
「よし。母さんはいないな……」
家に戻ったら真っ先に、母さんがいないか確認する。
鉄拳が飛んでくる心配があるからな。
とりあえず身の安全を確認したら、サササっと自分の部屋に戻り、部屋にある棚から本を取り出した。
『魔法都市建築史』
これは魔法都市のなかの街の名前とか、あとは少しだけ他の2都市のことが書いてある歴史書だ。
こいつが今のところの教科書代わり。
「今日は……、ここだな。[魔法都市の始祖]か」
読み進めていくと、少し不可解な点に気づいた。
この書によれば、魔法都市エンヴィシスはファリストン皇国の皇帝一家の一人、モルフィス=ファリストンが作ったらしい。
モルフィスは魔法の才能はそこまで良くなかったらしいが、いろいろな人たちの力を借りながらこの魔法都市を作ったみたいだな。
そしてここからが不可解な点なんだが、モルフィスの家族関係が全然書かれてない。
不自然なくらいに。
普通は何かしらの資料に残っているはずなんだが……。
全部焼けたか、もしくは検閲かなんかされてるのか?って思ったけど、今のところは俺に危害があるわけじゃないから何とも思ってない。
魔法学校に行けばなにか分かるだろうしな。
いつもならもっと読み進めるところだけど、クリスタさんの所で情報を詰め込みすぎた俺は、10ページ位でその本を閉じて、次の日課である魔法の練習をすることにした。
「今日は基礎魔法の”アクア”を練習したいな。でもここ俺の部屋だから水が出せる場所じゃない……。どうしよう」
"アクア"は文字通り、水を出す魔法。だが部屋をびしょびしょにするわけにはいかない。
そうして悩んでいると、母さんと買い物に行ってたライルが部屋に戻ってきた。
ってことは母さんもかー。結構危なかったぜ。
「ただいまー。どうしたの兄さん?アホズラドリみたいな顔して」
な、なんてことを言うんだ弟よ!
「帰ってきてしょっぱなからひどいな。かっこいい顔の間違いだろ?」
「はいはいかっこいいよ。それより、何を悩んでたの?」
しっかりスルースキル見つけてやがる。
成長したな……。泣
「基礎魔法の”アクア”を覚えたいんだけど、それを練習できる場所が無くてさ」
”ファイア”とかも同じ理由で、練習できる場所が無い。
また家でできるブラストとかにするかなぁとか頭の中で考えていると、思わぬところから助け舟が現れた。
「なんだ、そんなことか。お母さんに聞けば練習場所教えてくれるみたいだよ」
おっと?初耳なんですけど。
「へっ?母さん教えてくれるの?俺らに?」
「うん。直接私は教えないけど、練習場所くらいは教えてあげるって」
おいおい、なんでそんなとこで優しいんだよ。
でもありがたい。
これで思う存分練習ができる!
「あんがとな!ライル。早速行ってくるわ!」
「行ってらっしゃい。でも夕飯までには戻ってきてね」
「分かってるよ!」
よーし、これで基礎魔法が全部練習できる!基礎を磨きまくるぞー!!
俺は勢いよく家を飛び出した。
レージが飛び出してから少しした後。
ライルは思い出したように呟いた。
「あ。場所がどこか言うの忘れてた。ま、いっか」
いかがでしたか?
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