力の変容Ⅱ
最新話更新でごんす
(テスト期間なんで投稿間隔バラバラでごめんなさい……)
「え?心魂魔法が発動しない?」
「はい……。対話しようとしても全く反応が無くて」
「うーん……」
俺の相談に、ネリエルさんは困り顔だった。
まぁ、想定内のことだ。どれだけ傷を負っても、本人が死なない限りは持っているはずのものが消えてるなんて、不思議なこと以外の何物でもない。
けど、流石にそうですよね〜で終わるつもりは全く無い。
「何か知りませんか?こう、心魂魔法に関する何か!」
直接的な原因が分からないなら、情報をひたすら集める。第二の目標はこれだった。
経験は豊富なネリエルさんなら、いろんな事を知っているだろうと踏んでのことだし、それに……。
「後、ずっと知りたかったんです。ネリエルさんが人魔逃げの時に言っていた、二法の片割れという事について」
「……覚えてたんだ」
「一応は」
(つってもそれ以外の事はまっっったく分からないけどね!)
困り顔で腕を組み考えていたネリエルさんは、座っていた椅子から立ち上がり、部屋の扉へ手をかけた。
「教えてあげるわ。私の力の正体が分かれば、レージ君の問題の手がかりになるかもしれないし」
「ありがとうございます!」
スタスタと歩いていくネリエルさんの後ろをついていった先は、見慣れたユニオン本部の前に広がる平原だった。
「まず断言しておくけど、私はレージ君が抱える問題に明確な答えを見出すことは出来ない。私以外の人たちに聞いても、結果は変わらないと思うけどね」
「うぅ。やっぱそうですよね……」
改めて言われると、八方塞がりですねって断言されたように感じて嫌だな。
「でも、レージ君にはまだ知識が足りない。心魂魔法の例外的な存在をね」
「例外的な存在?」
ネリエルさんは、そう言って原っぱに落ちていた緑の葉を一枚手に取った。
「レージ君が習ったように、心魂魔法は千差万別でどのような力なのか、名前も全て違うことは覚えているわね?」
「ま、まあ流石に」
だから名前を他人が呼ぶことはタブーだし、能力もこういう奴で__ぐらいしか話せない。
「でも、物事には必ず例外が存在する。もし心魂魔法の名前を言えて、代々その家系の人に受け継がれているものがあるとしたら?」
「そりゃあ……」
名前を叫べるのは嬉しいし、代々受け継がれているんだったら応用の幅もとんでもないものになってるだろうから、俺個人としてはめっちゃ良いと言う、というか言ってたはずだった。
ネリエルさんのなんとも言えない顔を見た途端に、その回答は喉につっかえて出てこなくなった。
何か訳ありな顔でしかないじゃねぇか……。
「なにか、あるんですね?」
「あ、顔に出ちゃってた?ごめんねー」
間を置いて返事した俺の意図に気づいたのか、ネリエルさんは申し訳なさそうな顔で話しはじめた。
「私がその例外の一人、手で一度触れた全てを斬る心魂魔法、罪悪を断つ手を持っているの」
「……手で触れた全てを斬る?」
圧倒的なチート能力に、ちょっとヒェッ……て身の毛がよだってしまった。
いや誰だって初見はそうだろ!?全てって言葉に嘘がないとしたら、握手をしたりするだけで俺の身体はバラバラになっちゃうんだぞ!?
「露骨に離れていかないで。流石に私のメンタルも持たないわよ」
「失礼しましたっー!!」
「今言ったこと、信じてはないと思うから見せてあげる。レージ君。アースで人形とか作れる?かなり魔力を入れて硬くして」
「は、はい。まぁ作れますけど」
ネリエルさんに言われるがまま、俺は地面に手を当てて唱えた。
「"アース"」
地面に魔力が吸われる感覚と同時に、一部の土たちがふわふわと宙に浮かび始める。
「本当に良いんですね?!」
「良いよ。そうじゃないと分からないでしょ?」
ネリエルさんの了承を経て、俺は浮遊している土をぶつけて固めさせた。
(今日はこんだけか。よし、じゃあひたすら硬くっ!)
アースは自分の魔力と土を必要とする基礎魔法。自身の魔力を含ませた土で色んなことが出来る優れた基礎魔法だし、土にどれだけ魔力を伝えるのか、どの範囲まで行き渡らせるのかは自分で調節できるようにもなる応用の広さも売りだが、俺は調節が出来ない。
それをやるために必要なのが、魔力制御だからだ。
でも、心配は要らない。
魔力を込めれば込めるだけ、土は硬さを持つようになる。
「ふんっ!!」
そうして俺は、自分の魔力の半分程を注ぎ込んだ大きな岩を作り出した。
「それ、ほんとに人形?」
「やめてください。俺が魔力制御出来ないことくらい知ってるでしょ?!」
放出するだけなら出来るけど、そこから何かを形作るのは無理なんだよなぁ。
ONとOFFは出来るのに、細かい設定は出来ないライトみたいな感じなのよ。
ひとしきり笑った後、ネリエルさんは俺の作った岩に近づいてコンコン、と拳でその頑強さを確かめた。
「良い硬さだね。魔獣にぶつけても使えそうなくらいだよ」
「まぁ、一回やったことはあるんで……」
グラハムが基礎魔法も使え!って一時期うるさかった時、一度だけやった事がある。あの時は魔力が出過ぎて俺がへばっちゃったけど。
「基礎魔法じゃあ、これは割ることは出来ないね」
「だと思いますよ」
アースは基本的に、自分の身を守るために使われる基礎魔法。
魔力を注げば注ぐほど比例して硬くなっていくし、自分だけでできる魔法じゃないからな。
(本当は守護の幇助でもう一つ障壁を重ねて強くできたはずなんだけどなぁ……)
考えていた自分の強化プランが、こうも簡単に破綻するとは、前の俺なら泣き出し案件だ。
「じゃあ行くよ」
そんなことを考えている間に、ネリエルさんは何食わぬ顔で岩に触れた。
「はいっと」
次の瞬間には、既に岩はボロボロに崩れ去っていた。
「…………ん!?」
一瞬のことすぎて、つい変な声が出てしまう。
(え!?何が起こったんだ今?!)
考え事をしていた俺が悪いのかもしれないけど、それにしたって視線を離したのは数秒だ。
その間にあの岩が崩れるなんて……。
「ちょっとは信じてくれたかな?」
「……俺の基礎魔法で一番防御が優れてるんですよ?」
質問に質問で返してしまうほど、俺の脳内はこんがらがっていた。
(しかもあの砕け方……)
「これ、アース自体を斬ってませんか?」
「おぉ!よく分かったじゃない」
いや、笑えねーよ!
さっきまで感じてた自分の魔力が消えたからもしかして……とか思ってたら当たってたとは。
「どう?すごいでしょ。私の心魂魔法」
「すーっごくよく分かりました。反則級の力ですよ本当。どれだけ応用を広げたらそうなるのか知りたいですよ」
冗談のつもりで話したつもりだったが、ネリエルさんの顔は笑顔ではなかった。
「うん……。頑張ったんだよ私。グラハムが居てくれたから」
「?」
「私の心魂魔法は特殊でさ。
最初がこうだったの」
「……え?」
今ものすごいこと聞こえてきた気が。
けど、それは別の方向にものすごかった。
「全てを斬ってたの。対象も何もかもが指定出来ない。触れたものをなんでもね」
その笑顔の裏に、一体どれだけの苦しみを経験してきたのか。
分からないけど、理解ってしまった。
いかがでしたか?
もうすぐ夏休みに入るので、また週2投稿できそうです。
よろしくお願いします!




