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マギアス〜魔を求めるモノ〜   作者: ピロシキまん
エピソードⅥ〜人魔大戦、勃発〜
122/132

新たな任務Ⅳ

最新話更新です。


「おっきい〜!!」

「校舎以外でこんな大きな建物、初めて見たよ……」

「そこまで驚いて貰えるとは。嬉しい限りです」


 笑顔を絶やさないドライアスの後ろに聳える、一帯の景色とは隔絶した威容を誇る建物。

 魔導都市でもあまり見かける事のない大きさに、ニコルやヴァイスは感嘆の目を向けていた。


「首長の家だろ?これぐらいデカくて普通じゃイテッ」

 当たり前のことを言ったはずだったのに、ビアーはバルトラを軽くこづいた。


「こら。私らの常識を当てはめるな」

「えぇ?普通はそうなんじゃ」

「この景色を見れば分かるだろ。魔導都市とは文化も技術も違う。考え方が違うことだってあり得ることだ。そうだろう、ドライアス殿?」


 ビアーがドライアスへと視線を向けると、先ほどとは違った、貼り付けたような笑顔を浮かべたドライアスは答えた。


「バルトラ殿の言うことは正しいですよ。国の代表である大公は、威厳を持たなければいけない」

「……なにか訳ありのようだな、ドライアス殿」

「よくお分かりだ。さ、中へご案内しますよ」


 人間にふりかかる悪意の視線に気づくことなく、一行は屋敷の中へと入っていった。


(……)



「ちっ、気づいてやがるな。撤収だ」

「ほんとですかい姉御?」

「分かるんだよ。一人こっちを見てやがった。それに、ガキ達の中で一人やべぇのがいる。準備し直しだお前ら」


「「「あいあいさー!!」」」

「うるさいっ!」




「……広い……」

「わたくしのお部屋と変わらないくらい大きいですわね……」

「いやお前の家も大概広いな」


 階段を登って連れてこられた応接間のような場所。

 外観に負けず劣らずの豪華な内装と、魔導機のような機械が飾られたこの部屋で、ビアーはアレンに不穏な空気を感じ取っていたことを話していた。


「アレン、ここは……」

「うん。分かってる。だから僕たちをここまで連れてきたんですよね。ドライアス殿」

「……よくお分かりだ。周りにドワーフは居なかったように見受けられたんですが」

「ん〜??何の話〜?」


 三人の間でどんどんと進んでいく会話に、バルトラを含むハイクラスの生徒達はその内容についていけない。


「お前達、外に居た時なにか感じなかったか?」

「特になにも」

「わたくしもですわ」

「右に同じく」

「ドワーフ自体居なかっただろ」


(やはりか……)


 あの時二人が感じたのは、間違いなどではない。現にドライアスも認めている。


「私らがあの時感じたのは、()()()()()だ。こいつらの反応を見るに、巧妙に隠されていたかなにかだったようだが」

「僕たちは友好を示す大使のはず。もしあの悪意が本当だったとしたら、ユシクフは魔導都市を騙したということになりますが」


 途端にヒリヒリとした空気に変わる部屋。

 ドライアスにふりかかる二人の冷たい視線に、生徒達は驚きとすこしの恐怖を感じていた。


(こんな表情のビアー先生、初めて見た……)

(今までの優しそうな顔はどこにいったのでしょう?怖いですわ)


 不審な動きを一つでもとれば、その瞬間にドライアスの身体を切る。

 言葉にせずとも伝播する二人の殺気を向けられたドライアスは、頬に一筋の汗をかきながらも平静を保って答えた。


「はい。ユシクフ大公国は、人間達を嫌悪しています。技術を模倣し発展させ、我らの技術には誰も振り向かなくなってしまった。怒りも湧きますよ」


 淡々と答えるドライアスの喉元には、命を刈り取る紅色の鎌がかけられていた。


「ビアー!」

「……こんな所に、大切な生徒達を置いておけない」

「駄目だ!まだそうと決まったわけじゃない!」

「……どう言うことだアレン」


 アレンの制止で、少し刃を離したビアー。

 その瞬間、ドライアスは頭を深く下げた。


「頭を上げてください、ドライアス殿」


 アレンからそう言われても、中々頭を上げることのないドライアス。

 そのまま動かずに数分が経った頃、我慢の限界に達していたビアーは、つい声を荒げてしまう。


「おい!!早く顔を」

「我々はっ!現在国の存亡の危機に立たされています!」


 頭を下げたまま、ドライアスは叫んだ。


「力を貸していただきたいのです!!我らユシクフが、再び前を向けるように!!」

「…………」


 何がどうなっているのか、状況を把握できていない生徒達と、何とも言えない表情になっているビアー。


 総じてとても気まずい空気になってしまった中、アレンは落ち着いた声色で話しかけた。

「ドライアス殿。まずは顔を上げてください。そしてお話し下さい。ここで何が起こっているのか、私達はまったく理解できていないのです」

「……よろしいのですか?本来ならばこのような願いは」

「切り捨てる事は容易ですが、貴方の口ぶりに嘘偽りは感じられなかった。細やかな悪意にすら気づける私達が、です。ね?ビアー」

「……」


 食い下がる事なくビアーが鎌を引いた後、ドライアスはゆっくりと顔を上げた。


「そんな顔をしないで下さい。まだ解決したわけじゃ無いんですよ?」

「いえ''……!何ど言えば良いのがっ……!」


 抑えていた感情が爆発して、しばらくの間涙を流していたドライアスだったが、少しおさまった後、大きく深呼吸をした。


「ふぅーー……、失礼しました。ではお教えします。我らの国、ユシクフ大公国の現状を」


 皆に緊張が走る中、ビアーは心の中でサイラス(ジジイ)に文句を垂れていた。


(あいつ、子供たちを連れてくる場所じゃないだろうが!何をやってるんだほんとに……)


 



「へっくしょい!!」

「風邪ですか。ご老体に差し障る前にお休みになった方がよろしいかと」

「ただのくしゃみじゃよ。それに、休める程平和な世では無いことなど、おぬしが一番分かっておるじゃろうて」

「……」


 胸元に忍ばせていた手紙を、エランはサイラスへと渡した。


「今朝、私の家に届いていました。悪戯だと思いたかったですが、()()()()は」

「うむ。ご丁寧に名前まで入れておるからのぉ。何年経っても、この荒々しい書き方は変わらんな」

()()()もそうでしたから、身体に刻まれているのでしょう」

「自身の息子に呪いを背負わせるとは。


()()()()()


 手紙には、一言だけ書かれていた。


 ()()()()


 フロステン・ララバルク

 ゼタストン・ララバルク



「行くぞゼタ。アラヤには伝えているな」

「はい父さん。抜かりありません」

「我の技術を盗んだサイラス、そしてサイラスと協力し、お前を退学へと追いやったエランへの裁きの時だ」


 狂気が、サイラス達を襲う。



いかがでしたか?

色々な奴らがまた動き出しますね……!

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