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マギアス〜魔を求めるモノ〜   作者: ピロシキまん
エピソードⅥ〜人魔大戦、勃発〜
114/132

過去Ⅰ

最新話更新です。

途中から語り主がサタンになります。


「見えてしまったようだな、アルマ」

「サタン……」


 突如として流れ込んできたサタンの過去を上手く飲み込めないでいたアルマに、サタンは自嘲するような口ぶりで話しかけた。


「さっきの通り、我は人間と魔族を繋ぐ架け橋になろうとしていた。()()()と共にな」

「っ!」

「お前のマキアという人間に対する思いと、我の記憶が何かしら通ずるところがあったのだろう。見せないようにしていたのだがな」


 淡々と話していくサタンだが、彼女が本当に聞きたい事は、全く触れなかった。


「違う。違うよサタン」

「……何がだ?」

「私はそんな事が聞きたいんじゃない!私は……!私は」


 つい感情が昂るアルマに対して、サタンはずっと冷静だった。

 否、彼女の耳にはそう聞こえていただけなのかもしれない。


「お前が本当に聞きたいのは、なぜ人間と仲良くしていたのか、だろう」

「っ!分かってるならなんで!」

「同時に思い出してしまうのだ。裏切ったときの、あいつ醜悪な笑みと、握手を交わしたときの屈託のない笑顔が」



 初めて見せた弱音。

 彼女は、それをよく知っていた。

(サタンは、苦しんでるんだ。私が魔術を使えないと知った時みたいに、信じたい事と現実が混ざり合って分からなくなってる)


 あの時の自分には、マキアが道を示してくれた。

 でも、それがもし無ければ?

 魔術を使いたいという希望を抱きながらも、ずっと扱えない現実に打ちひしがれる、地獄のような日々が続くとすれば?


 少し考えれば、答えは直ぐに見つかった。

 そして、自分が今何をすべきかも。


「ねぇサタン。あなたは今、心の何処かで人間を信じたい。でも、親友に裏切られたから嫌いなんだよね」

「……言語化されると、不甲斐ない魔族だな我は」


 サタンとて、無惨に殺された魔族達の事も忘れる気など無いし、その無念を晴らさなければいけない事も分かっている。

 けれど、断ち切れなかった。人間と魔族が対等に手を取るという考えを、馬鹿正直に語り合っていた時間を。


「分かるよ。私だって魔術を使いこなす自分を夢見てたのに、現実は正反対だった。マキアが居なかったら、私は今のサタンみたいにモヤモヤを隠して過ごしていたのかも」

「……そうか。ならば人間に」

「でも!私は人間に戻るつもりはない!魔術は本来魔族のものだし、上手く扱えるのも魔族だって、サタンが教えてくれたから!」


 アルマは、手を差し伸べた。かつてマキアが自身にしたように。


「私はね、夢って叶えられるものと叶えられないものがあると思うの」

「それは、当然の事だとおもうが」

「それなら話は早い!サタン、貴方が今抱いているのは「人間と魔族の架け橋になりたい」っていうのと、「魔族の支配を取り戻したい」っていう正反対の二つだと思うの」

「認めたくはないが、そうだろうな」


 知性がある以上、何かを志すことはあって然るべき感情の一種である。


「でも現実は、後者を後押ししている。前者はサタンが勝手に抱いた幻想に過ぎないのに、諦めきれてない」

「あぁ。真実だ」

「だったら、私がその道を示すよ!本当にサタンがやりたいことを」


 とびきりの笑顔で手を差し伸べたアルマの表情が、有りし日の友と重なる。

(ディアゼル……)

『やろうぜサタン!なっ?』


「ふっ……。ふふはははは!!」

「えっ、ど、どうしたのサタン?!」

 いきなり笑い出したサタンに、アルマは混乱してしまう。


「いや、元来お前は、こんな性格だったと思っただけだ」

「そ、そうだっけ?えへへ……」

「それで?どうやって我の本質を見極めるのだ」

「あ……」


 思い切り宣言したは良いものの、あの時のマキアと違って、アルマはサタンがこの状態になった理由を全く知らなかった。


「すっかり忘れてたぁ!?ど、どうしよう?記憶を見ないと分からないけど、見ちゃったらサタンが」

「大丈夫だ。我が耐えれば良いだけのこと。そう易々と折れるような精神ではない」

「ほ、本当に?じゃあ……」

「あぁ。見るといい。我とディアゼルがどんな道を歩んでいたのか」


 コク、と頷くアルマを確認すると、先ほどまで何もなかった周りの空間が変化し始めた。


「っ……!!」

「可能な限り客観的な立場で記憶を見れるようにしているが、あくまで我の記憶だ。実際は違っていた所もあるかもしれぬ」



 周りが変化し終わって見えてきたのは、雨の降りしきる街の一角だった。








(雨?)

(当たらないぞ。あくまで我の記憶だ)

 

 誰もが小走りで屋根のある建物へ向かう中、一人の魔族は人間の手を引いて走っている。


「俺ん家はもうすぐだ!」

「ちょ、ちょっと!速ぇよ!」


(サタン?と……)


 ディアゼル。我の友()()()男だ。

 これは……、丁度我がディアゼルを初めて家へ招いた日の事だ。

 

(へぇー。あんまり街並みは今と変わらないね)


 当然だ。魔術都市は魔族時代の建物を改装して使い続けている。神殿も例外ではない。



 丁度良い。この道を曲がれば我の家だ。

(おぉ……。ここが)


「でっか……!!」

「そうか?魔王様のお城はもっとデケェぞ!」

「そ、そんなの知ってるよ!」


(あ、ここって。というか魔王って、誰?)


 今はドリントス神殿となっている所だ。教皇が住まう場所になっているとは、なんと言えばいいか分からんが。

 魔王は、我ら魔国の王族の頂に立つ魔族のこと。この時の魔王は確か、()()()()()だったか。


(へぇ。その人って)


 人間によって殺された。神凪の魔王は人間に寛大な方だったようでな。臣下に多くの人間を持っていたようだ。


「行こうぜディアゼル!」

「っで、でも!俺は人間だぞ?!」


(サタン、この頃の人間って……)


 今とは違い非力だ。魔力は持つが強化の方法など碌に学ぶ場も用意されていない。魔術は魔族のみが学べていいとされていた。


「関係ねぇよ!俺たちは友達。あの時約束したじゃねぇか!」

「……あぁ!」

「よぉし!ただいまーー!!」


(あの時?)


 我はディアゼルと出会った時の約束だ。先ほどお前が見たものだな。


(あぁー。魔族と人間の架け橋になるってやつね)


 そうだ。魔術を教わることは出来ないが、世間一般の知識を教わる場で我らは出会い、意気投合した。


「父様!新しい友達、ディアゼルだよ!」

「またかサタン。だが友を作るのは良いことだが……って、驚いた。人間の友達か!」

「あっ、ど、どうも……。ディアゼルです」

「凄いぞサタン!人間の友達を作れる()()()!」

(……)


 我が産まれると同時に母は死に、温厚な父がほとんどの世話を行っていた。

 

(人間に対して、この時の魔族はどう思っていたの?)


 千差万別だ。どうとも思っていない者達もいたし、父のように友として受け入れる者も、はたまた下等な種族だと見下す者も一定数いた。

 もっとも、魔王の影響で見下すような考えは表立って言えない雰囲気ではあったがな。


(今見た感じじゃ、裏切るような感じは全くしないけど)


 ……まだ良かったのだ。共に良き未来を見据えていた()()()()()()


 

いかがでしたか?

この記憶を客観的に覗けるのは、今は魂の中で話しているので見れるということです!

(細かいこと言うと大変なので省略しときます)

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