5 奴隷とレオナ
『おぉ!!』
レオンが子供のようにはしゃぐ。
尻尾…この部屋が気に入ったのか。
久しぶりに酒でも飲むか…そういえば…入社して間もない時上司にキレられてムカついてやけ酒して死にそうになったなぁ…今やあれもいい思い出だ…そうだった俺まだここにきて7年だった…酒は飲めないか。
「畜生!」
『?』
突然膝に拳を下ろしたことにレオンが驚く。
『どうされました?』
「畜生…酒が…酒が飲めねぇ…!」
『お酒…ですか?』
「そうだ…酒だ」
『そういえば主様が来る前に勇者パーティとなんか王国調査団?ってのが来てました』
「それで?」
『はい…その中に一流の酒ソムリエなる者がいたらしいのですよ』
「なるほど…ノンアル…いけるかも」
『私の父の代なのですがね』
「七色の魔獣にも代とかあるんだ」
『はい…でも父は強さを求めるがゆえに勇者と戦い…』
「亡くなったんだ」
『いえ…勇者を倒して『ケツの青いガキが勇者など二度と名のるな!!』と言って勇者達を追い返してしまったんですよね』
「それって種族的に問題とかないの?」
『父がそのころ一番強かったので誰も逆らえませんでした』
「で、今は?」
『山に母と暮らしています』
「へ~え、暮らしてるの?」
『はい、優しい人間の方々が我が両親を住まわせているのです』
「なるほど」
解析完了!さっき宿屋のオヤジから酒買っといてよかったぜこれで飲めるな。
ラファルスは酒(?)を飲む。
「ブフッ!!」
『あ、主様!?』
「あー大丈夫大丈夫」
なんだこの酒飲めたもんじゃねぇ…アルコール消毒かってくらいやばいぞ…はぁ…これは手の消毒用だな…
『もう今日は休みましょう』
「そうだな」
俺はベッドに横たわり目を閉じ眠った。
「お前こんなのもできねぇのか?」
「すみません」
「だからゆとりはだめなんだよ」
「すみません」
「それしか言えねぇのかよ!」
「すみません」
「チッ…さっさと仕事に戻れ」
「はい…」
(この仕事課長のやつだろ何でおれに回すんだよ…)
俺は我慢をしてきた…会社でなんと言われようとも我慢をし続けたそうすれば楽になれると思った…けど結局はストレスが溜まる…タバコにも手を出した。仕事を押し付けられ時間の余裕も無くなった。そしてある日…帰ろうとしたら死んだ。そのおかげで充実しているけど何かが足りない…何かが…
「何かが…何かが…何かが…」
「主様?」
「ハッ!?」
ベッドから急いで起き上がる。
「足りないのは…仲間…?」
「なか…ま?」
「あ、いや、こっちの話だ。で、おは…よう…?」
「あ、気づきました?スキル〈肉体変化〉で亜人の肉体を作ったのですよ」
「へー」
(なんという…肉体美…)
「服を着てみたいです」
「あぁ――〈創造〉」
服と装備ズボンをスキルで作成する。
あ、これパーカーいけんじゃね?
パーカーをスキルで作成する。
「おぉ!これが服というものですね!」
「着てみな」
レオンは服とズボンを着る。
「動きやすいですよ主様!」
「よかったね」
「それで今日何しますか?」
「そうだね、奴隷商にでも行こうか剣が作り終わるまであと2日もあるわけだし」
「了解しました、では早速行きましょう!」
「元気がいいなぁ…」
高齢者をいたわりたまえよレオン君。
ていってもこの世界の年齢ではまだ10にも満たないけどな。
レオンがスカーレット・ウルフに変身する。
「準備できたか?」
『はい!』
「服びりびりじゃん…」
『元の姿に戻ると服が小さいので破れてしまうのですよ』
「なにか対策とかないのか?」
『魔石を糸のように細くして縫った服があると聞いたことがあります。なんでも伸縮自在だとか』
「魔石を糸に…ね」
『それに魔石をほかの物体に変化させるには〈魔石物体変化〉と〈並列思考〉の2つのスキルが必要となります』
「上位魔石を使って無理やりスキルを獲得することは可能かな…」
『そんなことしたら体が灰になってしまいます』
「そうかぁ…」
スキル作成でどうにかなりそうかな…
「――スキル作成――スキル―魔石物体変化」
『スキルが作成できません』
「えぇ?!嘘だ…」
『多分達人になったものに送られるスキルなのでしょう』
「そうなのか…」
まぁいいか何回でも作れるし…
『ところでお金のほうはどうなさるのですか?』
「家の金庫から金貨7枚くらいくすねてきたからお金の心配は大丈夫」
『わかりました』
ラファルスとレオンは宿を出て奴隷商の店へと向かう。
俺の中にいる奴らを宿らせるための器を用意せねば…
亜人種を買うか人間は…うん考えないようにしとこう…
『主様、着きました』
「よしそれじゃあレオン、お前肉体変化で女になることってできるか?」
『できますが何故ですか?』
「女は嘗められやすいからな引っかかった男を片っ端から殴っていくそしたら金儲けもできる、どうだ?頭いいだろ」
『普通に最低ですよまぁ主様には逆らえないので賛同するしかないのですが』
レオンは気が進まないまま肉体変化で女の亜人になる。
うむ…美しいこれなら男も寄ってくるだろう。
「では、中に入りましょうか」
「着替えろよ…」
「そうでした」
「――創造っとほれ」
女性ものの服をレオンに渡す。
「ありがとうございます、あと名前もかえておいたほうがいいのでは?」
「そうだな、じゃあレオナだ」
「安直な感じがしますがいいでしょう」
「うるさい!中に入るぞ」
「わかりました」
店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ何をご所望ですか?」
「ここに天使と悪魔がついていない奴隷はいるか?」
「いますよ何百匹もね」
「それを見せてもらってもいいか?」
「えぇもちろんでは地下の鍵を開けるのでしばらくお待ちください」
「わかった」
店主は奥に行き鍵を開ける。
「では、こちらに」
階段を下りまるで玉座の間のような場所へと案内される。
皆きれいな服装そしてキラキラしている貴族服を着ているのか料理もエビやカニなどの海鮮類が使用されている。商品だからかここは奴隷とは無縁そうな場所だ。あ、でも首輪はされてる。
「え、何あの子汚い」
「主様、あいつら殺してきていいでしょうか?」
「おいおいやめとけって」
怒りで目が真っ赤に染まったレオナをラファルスが宥める。
「しかしここはキラキラしているな」
「はい我が商品は一級品だということをお客様に知っていただきたいのです」
「そうか」
「では商品をお選びください。無礼を働くかもしれませんがどうか大目にみてください。では、失礼いたします」
そそくさとキラキラした空間を後にする店主。
「おいおいそこの赤目の姉ちゃんここはお前のような貧乏人が来るとこじゃないぜ」
「黙れクソ虫が」
「おぉ怖いそんなに怒るなよ。ところでそいつはご主人様か?」
「それがどうした?」
「いやぁ参った!こんなチビがお前の主人なんてなぁ!がははは!」
筋骨隆々の男がラファルスを貶す。
「いい加減にしろお前のようなゴミが我に逆らうなんてことがあっていいはずがないんだよ」
レオナはそう言い肉体変化の一部を解除し手足が七色の魔獣になった。
「なんだ?姉ちゃんやるのか?その喧嘩買ってやるよ姉ちゃんが負けたらベッドでぶち込んでやるよ」
「下賤な亜人種がまぁいいだろうその条件のみこんでやる」
「怪我させんなよ」
「わかってますよ主様」
「裏に闘技場がある。ついてこい」
裏に続く門を開けぞろぞろと観客が中に入って行く。
「行くぜ、オラ!」
拳を振る。それをすました顔でレオナは避ける。
「なんだ?こんなの簡単ですってか?そりゃそうさ俺はまだ1パーセントの力しか出していないのだからなぁ!」
「そんなことで一々報告しないと気が済まないのか貴様は心が狭いのか?」
「黙れ!」
拳を当てようとしたがまた外れる。
(クソ!全然当たらない…仕方ねぇこれを使うか)
「――炎の拳」
ガタイの良い亜人種の男が拳に炎をまとわせる。
「喰らえ!」
攻撃は腹部に直撃したがそれは残像だった。
「なっ!?残像ができるほどの速さだと?」
「どうした?顔色が悪いぞ」
「うるさい!黙れ…黙れ!!」
「自慢の技を避けられて今の気分はどうだ?」
悪い笑みを浮かべながらそう言い放つレオナ。
俺に似てきたなあいつ…
炎の球がレオナに当たる。
「魔術?」
「ケヒヒ」
ガタイの良い亜人の取り巻きが魔術を放つ。