クリスマスの奇跡
雪が舞い、街のイルミネーションが美しく光り輝き、クリスマスソングが楽しげに流れている。今年はホワイトクリスマスになりそうだ。美亜の嬉しそうに微笑む顔が目に浮かぶ。
少し足速に待ち合わせ場所に向かう、、
キー ガシャン ドーン
今も、夢に出てきてしまう。
悪夢のようなクリスマスイブ。
美亜が、いなくなってしまってもう何年たったのだろう。夢の中の美亜はいつも変わらず、優しい笑顔で、僕に微笑みかける。
優しい声で
「おはよう。今日はとっても寒いよ」
と声をかけてくれる。
このまま、夢の中にずっといたい
パタパタパタ
・・・・・・・・・・
ぼくの名前は、タダシ、保育園に行っているんだ。
ママとふたりで暮らしてる。
もうすぐクリスマス、ママは、クリスマスが嫌いなんだ。だから、ぼくの家には、クリスマスツリーもケーキもないんだ。ぼくが
「なんでクリスマス嫌いなの?」
って聞いたら
「大好きな人が事故にあってしまったから」
って、寂しそうに言った。
保育園でサンタさんにお手紙を書く
みんなは、〔サンタさんぬいぐるみがほしいです〕
とか〔サンタさんゲームがほしいです〕とか、かいているけど、ぼくは
〔ママがクリスマスを好きになりますように〕
ってサンタさんにお願いした。
今日は、クリスマスイブ、ママといつもの所にお出かけ、お花を買って、
「おはよう。今日はとっても寒いよ。」
パタパタパタ
「タダシ、病院で走ったらダメっていつも言ってるでしょ」
「パパおはよう。ぼくサンタさんにお願いしたんだ。サンタさんお願い聞いてくれるかなぁ?」
・・・・・・・・・・
「パパ?」
誰が?
夢の中なのに
声がしっかり聞こえる。
目を開けたら、現実が待っている。
美亜のいない世界
「パパ」
とまた聞こえる
恐る恐る目を開ける。
そこには、美亜が、
「美亜?」
「私が分かるの?」
美亜の涙でくしゃくしゃになった顔の横に、小さな男の子の顔が、キョトンとしている
「タダシ、パパだよ」
と美亜が言っている。
「パパ」
バタバタと、お医者さんが機械を持ってやってきた。
ぼくは、パパともっとお話ししたかった。ママは、ずっと泣いている。
5年前のクリスマスイブ、美亜との待ち合わせ場所に向かう途中で、雪でスリップした車に轢かれ、意識不明になっていたらしい。その時、美亜は、赤ちゃんが出来た事を僕に伝えるつもりだったらしい。
まだ、パパは起き上がることも出来ないけれど、3人で迎えるはじめてのクリスマス。
サンタさん素敵なクリスマスプレゼントをありがとう。
ママは、クリスマスが大好きになった。
読んで頂きありがとうございます。