空色の色
ここは深海都市、アトランティス。住民は誰一人……いや、一人だけいた。
水流のままに白髪を靡かせて、海に沈む橋の上で佇む少女。
少女は常にひとりぼっち。
この都市で触れ合うことが許されるのは水だけだ。魚に近づこうものなら魚に敵意を向けられる。陽光を反射する特殊な建造物は輝いているのに、少女の心は荒む一方。
少女は手を伸ばす。天空から差し込む眩い光へ。
それでも海の上は見えない。
少女はマーメイド。
人在らざる者故に深海に閉じ込められた、哀れな少女だ。
死ぬまで水の中に閉じ込められ、空を見ることは決して叶わない。
「空を見れるのは……いつなのです」
少女はぽつりと呟いた。