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第四十話 開始! レイド開幕。互いのメンバーを読み上げたところで、混乱が巻き起こる。

 ワアアアアアーーーーッッッ!!!!


 召喚士スタジアムは、満員の観客でひしめき合っていた。


 謎の召喚士ユーヤ率いるドンジリーズのバトルは、今や発売するや即日完売の大人気カードになっていた。


 格上の相手を、次々になぎ倒すジャイアントキリング。


 予想外に次ぐ予想外の展開。


 この日のレイドも、対戦相手は地味なチームながら、観客は立ち見、魔道デバイスからの配信も記録を更新するほど視聴者数だ。


「さあ、始まりました! 本日のドラゴンレイド!」


 実況者が、快活に挨拶する。


「まずはフィールドと、標的となるドラゴンの確認、そして両チームのメンバーの発表から参ります――」


 観客席の後方、巨大積層スクリーンに、フィールドの様子がレンダリングされる。


『フィールド:古代の廃墟 

 

 天候:晴天(夕方~夜)


 気温、湿度、風力、間動……特記事項なし』


「――廃墟のフィールドは珍しい。複雑な立体地形を、どのように生かして戦うのか!?


 そして時刻は夕方から夜にかけてとなります。ドラゴンレイドの時間は30ミーン(30分)。


 最後の5分間は、完全な夜間戦闘となります。


 観客の皆さんには、魔道修正されたノクトビジョンで日中のレイドと変わらない戦いの様子をご覧頂けます。


 ――が、もちろんレイドの参加者は、視界にアシストがない限り、完全な暗闇での戦いになります。


 両チーム、視界のない中での戦い、どうぶつかり合うのか!」


 実況者の声とともに、スクリーンには美麗な古代建築の廃墟が映し出された。


「そして、今回のターゲットとなるのは――このドラゴンです!」


 廃墟の中心、円形の広間の中心に、竜の影が描き出された。





 おおーー。


 観客席から、感嘆の声が漏れた。


 竜は、全身を鋼鉄の胴体で覆われていた。


 鋼鉄の翼に、緑色に光るサイトアイ。


 あちこちにケーブルが這い回り、継ぎ目から蒸気が漏れた。


 関節のない脚が踏みならされ、蛇腹のような首が軋みを上げた。



「メタルドラゴン! 最高レベルの防御力を持つ鋼鉄の竜です!」


 観客席から、どよめきの声が聞こえる。


 メタルドラゴン。


 その名の通り、全身を鋼鉄で覆われた、ゴーレムタイプの竜。


 勿論レイドで使用されるのは、そのレプリカである。


 しかし、そのすさまじい防御力は遜色がない。


 これまでのレイドでも、よほど特殊なスキルがない限りは時間内にドラゴンを討伐することができず、お互いのチームの勝敗で決着をつけている。


 時間いっぱい殴りつけても、ドラゴンを倒せるかどうか……。


 まして今回は、レイド中に視界が奪われる。


 実質、普段より短い時間で決着しなければならない。


(ドラゴンを狙うのは、得策ではない)


 その光景を見ていた、誰もが考えた。




「それでは、両チームの紹介に参りますが――おや、ドンジリ―ズ、メンバーに若干の変更があった模様……」


 観客席がざわつく。


 続いて、スクリーンにメンバーの名前が映し出される。


●ゴーレムマスター

召喚者:ガリウス

・セレネ(オリハルコロイド・パペット)

・サラマンド(戦士)

・シラー(魔法使い)

・ゴーレム×3


●ドンジリーズ

召喚者:ユーヤ

・匿名希望・謎の姫騎士テンプルバルキリーロード

・ケイン(戦士)

・ミオ(魔法戦士)

・リヒャルト(魔道士)

・ノア(盗賊)

・スライム×1


「謎の……」


「謎の姫騎士……」


 観客席が一斉にどよめいた。



「こ、これは――。


 ドンジリーズに、新しいメンバーが参戦……!?


 いやしかし、この……この、姫騎士っていうのは」


 絶句する観客と実況者。


*  *  *



「ちょっと、どういう事ですの!」


 控え室でアヤソフィアが激高した。


「いや、お前さんの言っていたとおり、登録名は名前を伏せていたのだが」


「ジョブ! ジョブ名!」


 わたわたと手を振る。


「あのテンプルバルキリーロードって、私しかいないじゃありませんか!」


「まあ、あきらめてくれ」


「やっぱり私やめます!」


「『召喚する側だけでなく、他人に召喚されることも勉強の一つです』って、ニコルにあっさり説得されたのはあんただ」


「『ランプ亭』のショートケーキで買収されてたじゃないですかー」


「ノ、ノアさん……あなた、容赦なく突っ込むようになりましたわね……」


「ともあれ、ここまで来たら変更もできないし、やれるだけやってみてくれ」


「……うー」


 不満げなアヤソフィア。


 勿論ユーヤ、ここに至るまで休憩中にメンバーを総入れ替えしたり、試合直前にチームの召喚士を変えたりしてることは、おくびにも出さない。


「それに――聞いてみな」


「!!!」


 スタジアムを揺るがす大歓声。


 控室のここまで聞こえてくる。



――アヤソフィア・グロリア!


――アヤソフィア・グロリア!


――アヤソフィア・グロリア!


「めちゃめちゃばれてるじゃない!」


「それだけ、お前さんに対する期待がおおきいのだろう」


 前回の戦いでは、アヤソフィアは最前線で剣をふるった。


 勿論、自分の仲間が死力を尽くして負けたので、その敵討ちという意味合いもあった。


 しかし、獅子奮迅、前列で<聖光爆裂斬>をふるう姿は、今までのグロリア家のお嬢様というイメージと大きく離れたものだった。


「Mっ気のある男子のハートつかんだのかもしれないですね」


 レミィがいい加減なことを言う。


 そのアヤソフィアが、敗北した相手のチームの参戦し、なおかつ剣をふるおうというのだ。


 ――一体、どのような目的で――。


 ――一体、どのような作戦なのか――。


「まさか、ショートケーキのためとは言えないですよね」


「う、うるさいっ! ――わかりましたわ! 

  

 ただしユーヤ、私『あなたに頼まれたこと』以外のことは、決してしませんわよ」


「もちろん」


 きっとまなじりを決したアヤソフィア、夜会用の目を隠す仮面をまとう。



 ――それでは、両チームの召喚士、フィールドへお願いします!


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