表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/49

第一話 衝撃! 俺は俺を召喚できないのか?

 ()()()()()()()()()()()()()




 ここは、召喚魔道士の研究所の一室。


 最強の冒険者であり、最強の召喚士であるユーヤは、悩んでいた。


「何故、俺は俺を召喚できないんだッ――?!」




 最強の召喚士である彼が召喚するのは、当然最強の存在。


 彼が最強の存在であるならば、彼が彼を召喚するはずなのだ。


「それなのに――ッ!」


 なぜ、ユーヤはユーヤを召喚できない!?




「最強じゃないから、じゃないんですかぁ?」




「お前は……」



 物陰から現れる、黒い装束の少女。


 かつて無意識に召喚した、魔族のレミィ。


 蜂蜜色の縦巻きロールの髪を揺らし、コウモリの羽根をばたつかせて、こちらを見ている。


 憎まれ口はたたくが、知識も豊富、有能なやつなので、送還せずに助手替わりにしている。




「どういうことだ……」



 ユーヤは、自分の手のひらをじっと見る。



(俺の魔道研鑽の日々は、無駄だったのか?)


 


 勇者パーティに参加し、魔王を封印して数百年。


 ユーヤはあらゆる栄誉と富を断り、勇者たちと別れを告げた。



 この研究所にこもり、ひたすら毎日、召喚の研究に明け暮れた。


 あらゆる魔導を極めるため。



 召喚術の修行にも怠りはなかった。


 魔界、天界、古龍界、神々の深淵、そして遠く星空の奥、絶対の虚無。


 あらゆる世界のチャネルを開き、高位の存在を召喚してきた。


 その俺の究極の目的――『召喚、自分自身』。


 自分が最強の存在なら、自分を召喚できるはず。


 結構無茶苦茶な理屈なのだが、それを可能にするくらいの力は手に入るはず。


 自分に与えられた能力、それに、無限に近い時間があるなら。





 レミィはチチチ、と指を振った。


「わかってませんねー、ユーヤ様」


「俺にまだ、足りないものがあるのか……」


「確かにユーヤ様は、召喚する力はすごいもんがあります。


 でも、その『召喚する力』におぼれているのですよ」



「おぼれている?」


「真の召喚士とはッ!」


 レミィがずびし、と宙を指す。


「何を召喚するだけではなく、召喚したものをどう使うか、それを極める者!」




 ―――そうか。


 確かに強力な存在を召喚しても、そいつらを使いこなしているとは言いがたかった。


「魔法を使う機会があっても、召喚する前に俺がぶっ倒してしまうからな」





「では、召喚魔獣を使いこなすという点でも、俺が最強であることを示せればいいのだな?」


「そうですね。そうしたら、そのご主人の『自分で自分を召喚する』という夢も、実現できるんじゃないですか?」


「そうだな……そうすれば、俺も完全な俺を召喚できるかもしれない」


 ユーヤはうなずいた。




「不完全ならできるんですか」


 レミィがあきれてつぶやく。「まったく、ユーヤ様の能力はわけがわかりませんね……知っていたけど」




「ではレミィ、俺の召喚士としての力を試せる場所があるか?」



「ジャジャーン! 実は今私、はまっているものがあるんです。


『ドラゴンレイドー!』」



「なんだ、それは?」


 ユーヤが目を丸くする。


 この人里離れた研究所で魔導の習練にあけくれ、ろくに世間のことを知らない。


「召喚魔道士ギルドが、魔道士育成のために作った施設です。そこで召喚士は、自分の召喚したモンスターを使って、ドラゴン狩りをするんですよ」


「ドラゴン?」


「もちろん、ギルドの用意したパチモンですけどね。あ、でも、本物を使うこともあるのかな」レミィは首をかしげる。


「それで、タイムトライアルとかするわけです。他のチームと混合で、ドラゴンをどっちが先に狩れるか競争したり、ドラゴンそっちのけでバトルしたり」


レミィは手にしたステッキ状の魔道具から光を照射し、研究所の壁にスクリーンを生み出す。





 巨大な、神殿状の建物が見えた。


 真ん中の膨らんだ、エンタシスの柱の列が、奥まで続いている。



「柱に木材がくくりつけてあるのはなんだ?」


「さあ、おまじないじゃないですか」




 画面が切り替わると、そこはスタジアムの中。


 大勢の観客の向かう目の先には、巨大なフィールドがある。


 幾人かの人型モンスター、そして中央で荒れ狂うのはドラゴンだ。


 構造体を利用して、体をかばいながら攻撃を仕掛ける。



「平野型のスタンダードなフィールドですねー」レミィが言葉を付け加える。「スタジアムの中は虚数魔道空間ですので、普通のフィールドだけじゃなく、ダンジョンや氷原、海の中も可能です。待ち一つ入ることも可能です――――あ、決まった」


 人型モンスターの一体、スケルトンが刀を振りかぶってドラゴンに突進する。


 だが、背後から長い尾を振るわれ、スケルトンは直撃。


 その体を四散させた。



「ゲームセットですね。ああ、監督の召喚士が項垂れている」


 貧相なローブ姿の男が目に入った。


「ま、こんな感じ」


 レミィは、俺に向き直って笑う。


「なるほど……この召喚バトルで優勝すれば、俺の最強が示せる」


「多分ね」


「俺が、俺を召喚する道筋ができるわけだな」


「多分」



 ―――よし決まった。



「レミィ、ではその召喚スタジアムに俺を移動させろ!」


「はいはーい、じゃあ行きますよ。




 

 どぼうぼしびてべ、かばなーば!」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ