第五話 黒い風
「どうやって殺そうかしら…」
公園の仕掛けを解除後、かおりはたくやと合流した。
二人はビルの屋上に居た。
片田は、人気の多い所に向かって走っていた。
その顔は、恐怖に色取られていた。
「たくや」
かおりがたくやを呼ぶと、たくやはかおりに向き直った。
「たくや…あなたに行ってもらうわ」
「はい」
たくやはそう言うと、かおりの前に跪いた。
「…………」
かおりはたくやの額にさわり、小さな声で何か呟いた。
そして一歩後ろに下がり、たくやに言った。
「今、施した『呪』は、あなたの姿を変えるものです」
かおりは片田の方に向き直るとたくやに向かって言った。
「『わが式神たくやよ』…『主の命に従い彼の者を殺せ』」
たくやはその言葉を受け、空に舞い上がった。
たくやの体がだんだん変化してきた。
最初は体がぼやけてきて、形の無いものになり黒くなっていった。
そして、片田に向かって行った。
それは『黒い風』だった。
(さあ、最後の恐怖を味わうがいい)
たくたは、『黒い風』となり、片田の体に巻きついた。
『黒い風』に巻きつかれた片田は、どうにかしようとしたのか、ただ、抗おうとしたのか、腕、足、体を動かそうとしたが、『黒い風』の強い力によって、指一本動かすことは出来なかった。
「お前を憎みながら待っている者達の所へ行くがいい」
たくやは片田の耳元で囁くと、片田の体から力が抜けた。
それは、もう肉の塊と化していた。
たくやはそれを確認すると、かおりの元へ戻って行った。
「終わったようね」
「はい」
かおりが言い終わる頃には、たくやは人の姿に戻っていた。
「たくや、小瀬の所に行きなさい」
「はい」
「『仕事は終了した』と『後日、報告書を提出する』と」
「はい、必ずお伝えします」
たくやは、そう言うと今度は掻き消えた。
小瀬の元へ行くために…
終わりました…
続編などやるつもりでいるので、宜しくお願いします。