第二話 話
二宮家を後にした二人は、ただ黙々と歩いていた。
「小瀬先輩」
水島は、周りに人が居ないことを確認しながら小瀬に話かけた。
「何だ?」
小瀬は水島の前を歩きながら静かに返事をした。
「聞きたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
水島は、少し言いにくそうに言った。
「答えられない事もあるが聞いてやろう」
小瀬は静かに言った。
「二宮様の事なのですが、なぜあの方だけ呪殺の『仕事』があるのですか?他の術者にはそんな『仕事』があることすら知らない方もいますが…」
「お前はいきなり答えられない質問をするな…」
「先輩…」
小瀬は遠くを見つめた。
「…他の者に聞きまわられても困るな…当たり障りない事だけ教えよう。それはな、罪の償いないなんだ。かつて二宮様の犯した…な」
「その罪がどんなものかは教えてはもらえないのですね」
「いつか教えてやる。でも今は駄目だ」
「分かりました」
「それでいい、しかし、今言った事も秘密にしておいてくれ。このことをお前に言ったことが二宮様が知ったら悲しまれる」
「悲しまれる…ですか」
水島は少し意外そうに言った。
それもそうだろう、水島がかおりの所に『仕事』を持っていくようになってもう二年にもなるが、一度たりともその声を聞いた事も表情が動いたことも無いのだ。
小瀬は一回ため息をつくと、ポケットからタバコを出しながら言った。
「二宮様は本来感情豊かな方だ」
小瀬はタバコに火を点けた。
「罪を犯す前はな…」
そう言うと小瀬は歩き出した。
もう何も聞く気も、話すことも無い、その背中がそう言っているようだった。
たくやは、小瀬と水島が帰っていった後、資料を見直し二人が説明していない、必要そうな情報をかおりに追加説明をした。
「『組織』の調べによりますと、片田は近々『仕事』をするそうです。『組織』としてはその前にこちらの『仕事』を完了させたいようです」
たくやがそういい終えると、かおりはスッと立ち上がった。
「たくや」
「はい」
「今日から片田の監視を始めてくれ」
「かしこまりました、動きがあればお知らせします」
「いいえ、安全な所から燻り出します。後で部屋に来なさい」
かおりは居間を出て行きながら言った。
「かしこまりました。では、後ほど伺います」
たくやは、かおりはが出て行くのを見送ると資料を持って庭へ出て行った。
広い庭だ。
手入れもきちんとしている。
たくやは庭に出ると資料を空高く投げ上げた。
すると、資料は一瞬にして青白い炎に包まれた。
残ったのは僅かな灰だけだった。
たくやはそれを見届けると、家の中に入って行った。




