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第五章 不機嫌なライム

「・・・・・・遅い。」


 部屋の前にたどり着くと、扉にもたれかかり体育座りをするジャスミンがいた。


「え、鍵持ってなかった?ごめん。」


 忘れてたの?


「鍵は・・・・持っている。」


 ・・・・まぁ、どうせ忘れて入れなくなったんでしょ。ジャスミンはプライドが高いから、自分の過失をあまり認めたがらないのだ。厄介。


「・・・・というか、いつもより随分早いんだね。」


 ストーキング行為終了するの。あの子は放課後まで部活やらなんやらで残ってることが多いから、結構遅い時間までいつもストーキングしてるのに。


「・・・・・・ベニが立ち去ってから少しあの方を観察したあと、この部屋に帰った。」


 やっぱり観察したんかい!


「はぁ・・・・。ま、とりあえず部屋入ろ。」


 そういうと、ジャスミンは素直に頷き部屋の鍵を開けた。・・・・どうやら本当に持ってたらしい。だったら本当になんで待ってたんだよ。


「ただいまー。」


 そういいながら、見る人が見たら発狂しそうな部屋に入る。私は慣れた。え?どんな部屋かって?聞いちゃう?蝶の標本と怪しい占い道具ばっかりの部屋だよ。あ、生きた蝶も何羽か室内を普通に飛んでるよ。


「・・・・・・おかえり。」


 ・・・・・ジャスミンがおかえりだと!!!?というか、お前も一応部屋の外にいただろ!!?


「・・・・心配したのだ。ベニが・・・・僕を捨てたのかと・・・・。」


 パタン、と扉が閉まる音と共にジャスミンが少女漫画のヒロインのように私の胸元にしなだれかかる。おい、どっちかっていうとお前ヒーローだろ!と思いながらもときめいてしまう私・・・・。恋って厄介だ。


「いや、先に帰るっていったあと少し寄り道しただけじゃん。」

「先に帰ると言っていたのに、帰ってないから・・・・。」


 まぁ・・・・そりゃ驚くかもだけど・・・・だからといって、捨てられた!って・・・なるか・・・・?


「つーか、別に私に捨てられても困らないっしょ。」


 ヒメユリちゃんに嫌われた!ってなったらそれこそ発狂ものだろうけど・・・・。


「困る。だって・・・・


 期待してはいけない、とわかっているのに高鳴る胸・・・・・


「あの方に!友達のいない悲しいヤツだと!思われてしまうかもしれない!!だろう!?」


 一瞬にして期待が粉砕された。そして、友達だと思ってくれてたことに感動してしまう私をぶん殴りたくなった。


「・・・・ジャスミンの馬鹿野郎。」


 少しでも期待した私が恥ずかしい。浮気を目撃してしまった少女漫画のヒロインのように家へと走って布団のなかで蹲りたいが、あいにく実家はここから千キロ近く離れた場所にあるし、今住んでるところはここだ。なので・・・・


「なっ!?どうしてベッドに行く!!!」


 とりあえず布団でふて寝することにする。


「お風呂は!!?」

「明日の朝入る。」

「歯磨きは!!?」

「・・・・・あとでする。」

「ドライヤーは!!!?」

「お風呂入らないからいい。」

「ご飯は!!?」

「外で色々食べてきた。いらない。」

「な、んだと・・・?」


 ケーキとだけど。でもケーキはなかなかのサイズあったし、シレネさんにあーんも貰ったし。色んな意味でお腹一杯です。


「一人でか?」

「ううん、違う。私、ジャスミンと違って友達いないぼっちじゃないから。」

「なっ!!?僕にはベニがいる!!」

「私にはジャスミン以外の友達がいるんです~。」


 あれ?考えてみりゃ、シレネさんはジャスミンの友達じゃね?どっちかっていうと、私の方がぼっち・・・・?


「なっ・・・・な・・・・・誰だ?僕に知らせもせずに友達をつくろうなどと・・・!!言え!!僕に紹介しろ!ベニに相応しいか見極めてやる!」


 そんな・・・結婚前の挨拶的な・・・。娘の彼氏紹介的な・・・。


「そんな報告義務ないでしょ。私寝るから。お休み。」

 

 ふて寝じゃふて寝!!


「ある!あるぞ!僕は恋をしたことを報告した!ベニにも報告する義務がある!」

「ない。」

「なぜだー!!!」


 私は手近にあったヘッドホンを掴み耳を塞いだ。



 

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