第四章 ティファニーで休息を
「あら?あなた・・・・・ジャスミンと同室の子の・・・・。」
ベロナちゃんと別れたあと、私は意外な人に遭遇・・・・というか、話しかけられた。彼の名はシレネ・ユリ。一応王家だが・・・・こちらも養子だ。たしか、クロユリ王子の。そして、彼も『花園・続』の攻略対象者。だからやっぱり超・美人。ちなみに、私はシレネさんと話したことはないが、ジャスミンと仲よし・・・・なんだと思う。つまり彼は友達の友達というやつだ。
「はい。・・・・それが?」
どうした。
「あ、いや別になんか特別な用事があったわけじゃないのよ。だけど、なんか・・・・悩み事でもあるの?」
・・・・・・・。
「あぁん!ごめんね!急にこんなこと言われても困るわよね!気にしなくていいのよ!」
そういえば彼は前世的に考えると、オネェ系の男性なのか。
「でも、なんか困ってることがあればいつでも言ってね♪」
パチン、と大きなウィンクをシレネさんがかます。・・・・オカマだけに?嘘、冗談です。ごめんなさい。しかもシレネさんたぶんバイ。
「・・・・大丈夫です。」
ほぼ話したことがない人に話す内容じゃないだろう。
「・・・・・ねぇ、カフェ行きましょ♪」
白い陶器のような肌によく映える真っ赤なルージュをゆるい弧の形にして、シレネさんは私の腕をガシッと掴んだ。
* * * *
「ほんっとあの子どうしちゃったのかしら。」
気が付くと、私は洗いざらい全て話していた。ジャスミンのストーキング行為のこと、ヒメユリちゃんのこと、私のこと・・・・私の気持ちのこと。流石にこの世界が乙女ゲームの世界だってことは言わなかったけど。
「ああいう子はあんまり好みじゃなかったんだと思うんだけ・・・このショートケーキすんごく美味しいわ!ほら、あなたも食べなさい!」
私の口にふわふわとしたなにかが突っ込まれる。しばらくすると、ほどよい甘さの優しい味が広がり、やがて口の中でとけていった。
「美味しい・・・・。」
「でしょ?僕、ここのカフェずっと入ってみたいと思ってたのよね~!やっぱり僕の目に間違いはなかったわ♪」
シレネさんは頬に手を当て満足気に唇を吊り上げる。
「あの、シレネさん・・・
「あ、シレネでいいわよ。」
「・・・・・シレネ・・・ちゃん。」
「・・・・まぁ、許容。」
いいのか。
「・・・このこと、他の人には・・・・
「勿論よ!女子会でのことを僕が口外するわけないじゃない!」
女子会。女は一人しかいないが、シレネさんは心が乙女なのだろうか?
「いやー、それにしても青春よねぇ。」
「ははっ・・・青春だったら全てが楽しいのかとか思ってましたが全く違いました・・・。」
「そうねぇ・・・。恋ってのもただ楽しいもんじゃないわ。」
なんか意外だ。「恋ってス・テ・キ!」って言ってそうなイメージだったのに。
「ところで、シレネちゃんは・・・・彼氏とかいるんですか?」
・・・・・・彼氏じゃないかもな。
「それがねぇ、いないのよ!こ~んな美しい僕を放っておくなんて世の男も女も見る目がないわよねぇ!」
今はいないのか・・・。シレネ・ユリといえば、女や男をとっかえひっかえしてると有名だ。付き合ったと思ったらすぐ別れるとか。・・・・まぁ、こんな綺麗な人と少しでも付き合えるってんだったら、すぐ別れるとしても幸せかも。
「・・・・だから、彼女彼氏募集中って感じ。特に今は・・・可愛い彼女が欲しいのよねぇ。他の人に恋しちゃってたりする・・・・ね?」
色っぽい仕草でコーヒーカップについたルージュを親指で拭う。
「・・・・・あはは、友達にそういう子がいないか探してみます。」
「え、本当?嬉しいわぁ!楽しみに待ってるわね!あ、メアド教えてよ!また女子会しましょ!そん時におすすめの女の子教えてよね!」
・・・・・どうやら私の思い違いだったらしい。まぁ、こんな人が私を彼女に・・・とかありえないよね。変な思い違いして変な返答しなくてよかった。
「・・・・はい。」
渡されたお洒落なメアド帳に自分のメアドを書き込む。
「ありがとー!今晩メール送るわ!じゃ、ばいば~い!」
そういうと、彼は投げキッスをして去っていった。・・・・時々思うが、ジャスミンより彼の方がロゼに向いていたんじゃないか?
二話連続で登場しないジャスミンさん・・・・。