第一章 ライバルはつらいよ
『花園』がNORMAL ENDで終了してから百年たった世界です。攻略対象者は誰にも恋をしたりなどせず、シラユリは誰も攻略しなかった世界。
『花園』シリーズを読んでなくてもこれだけで読める・・・はずです。
「ベニっ!!!おい、ベニッ!!!」
私の名はベゴニア・シュウカイドウ。ベニというのは私のあだ名だ。ちなみに一人しかそのあだ名は呼んでいない。別に友達が少ないとかってわけじゃない。・・・・違うからね!!!?
「一体どうした?なぜボーっとしている。」
「お前の行動に閉口してるんだよ。」
今、私たちがなにをしているかだって?ストーカー行為だよ!!!!!
「閉口・・・?僕がベニを困らせるようなことを・・・?」
コイツの名はジャスミン・ソケイ・ロードン。初めてロードン家ではないものでロゼ・ロードンになった人物。属性は『草』の能力は『未來のセカイ』。未來を予言できるというなんとも便利な能力だ。先代ロゼ・ロードンの養子・・・・だが、あんまり先代ロゼが彼を可愛がるような姿は見たことがない。どちらかといえば、監視している。
「まぁ、それはいい!見よ!あの美しさ!全ての精霊から祝福を受けたあの姿!あの美しき声!!立ち振る舞い!!!」
はいはい。そうですね。ヒメユリちゃんはステキだね。だからといってストーカーはいけないね。
「もう帰ろうよ・・・・。」
いい加減捕まるよ?
「なにをいっている!?まだ二時間もたっていない!!」
「十分だわ。」
もういいだろ!!?帰ろ!!?
「はぁ・・・もういいよ。先帰る。」
バイバイ。
「ああ、帰れか・・・・・なっ!!?ベニっ!!どこへ行く!!?」
「だから部屋だよ。帰るって言ってるじゃん。」
私はこの花園学園の寮でジャスミンと同じ部屋だ。ジャスミンは超美少女顔の前髪ぱっつん横髪縦ロールの後ろ髪ストレートヘア野郎だ、が、一応男だ。メイクもばっちりだ、が、男だ。それなのになぜ、同室なのか。簡単だ。ジャスミンが我儘をいったから。それだけだ。ロゼ・ロードンの名にはそれだけの力がある。
「駄目だ!!僕といろ!!」
「なんでお前に命令されなきゃいけないんですか~!?
「黙れっ!!僕はベニの幼馴染だぞ!!?」
幼馴染だからどうしたよ!!!?
「なんと言われようと帰るから。バイバイ。」
* * * *
「はぁ・・・・。」
ジャスミンはあんなに私を止めたにもかかわらず、結局私を追いかけてこない。ヒメユリちゃんがそんなに大切か。
「嫌な奴・・・・。」
ほんっとうに嫌な奴だ・・・私・・・・。親友の恋路も応援できないだなんて・・・。
・・・そう、私、べゴニア・シュウカイドウはジャスミン・ソケイ・ロードンに恋をしている。そして、私はこの世界が『花園・続』の世界だということも知っている。そして、彼が『花園・続』の攻略対象だってことも知ってる。そう、私は、
現実ではない世界で、
「恋をしてしまった!!!」
・・・・・!!!?
「ジャスミン!!?」
ヒメユリちゃんをストーキン・・・げふんげふん、観察してたんじゃないの!?
「僕は恋をしてしまったのだ!!ベニ!!」
「はぁっ!!!?ヒメユリちゃん以外にも好きな人ができたの!!?」
ジャスミン、君には随分前から恋をしてるけど、そんな不誠実なヤツだとは思ってなかったよ!!
「な、なぜ、ベニが僕の想い人の名を・・・・・!!!?」
・・・・・まさか・・・・
「自覚してなかったのかよ!!!」
「なにをだ?」
「ヒメユリちゃんのことを好きなこと。」
「ベニがその名を呼ぶな!!穢れる!!」
失礼な奴だな!!
「とにかく、ベニは僕の恋を応援するのだ!!わかったな!!?」
すでに結構、助けてるつもりだったんだけど!!?ストーカ―だと思われて騎士団に連れ去られそうになったのを助けたり、不審者だと思われてお巡りさんに補導されそうになってるところを止めに入ったり!!
「返事はっ!!」
・・・・どんなに尽くしてもどんなに頑張っても、結局 私は ヒメユリちゃんに勝つことはできないのだ。
「・・・・・・へいへい。今まで通り頑張るよ。」
私は現実ではない世界で絶対に叶わない恋をしている。