アルネ王家との謁見(6)
「はいよ!」
兵士達が動くことは無いと確信した俺は、そのまま馬の手綱を操り――、「止まれ!」と、叫ぶ兵士達の制止を無視し、王都の中へと突っ込む。
正直、これ以上――、時間を浪費するのは面倒この上ない。
「ユウマさん!」
「大丈夫だ。何かあったら全部、俺のせいにすればいい!」
「そういう訳じゃなくて……、きちんと話を聞きませんと後々――、問題に……」
「すでに問題になっているから問題ない」
「……そうですね」
エメラダが、もう諦めた様子で馬車の中へと顔を引っ込める。
「さて――、いくか!」
視線の先には、巨大な王城が聳え立っている。
そこまでの道は、真っ直ぐと言った感じではなく入り組んでいるようだ。
「厄介だな」
呟きながら、俺は馬車に回復魔法をかけながら疾走させる。
王城までは一本道ではなく――、かなりの時間を使われるばかりか後ろからは馬に乗った騎兵まで追ってくる始末。
「とりあえず! 吹き飛んでおけ!」
道が真っ直ぐになった所で、身体強化魔法を発動させ馬車の屋根上に乗ると同時に、風爆の魔法を発動。
追ってきていた騎兵を残らず吹き飛ばす。
探索の魔法で死んではいない事を確認しつつ、御者席に座り馬車を走らせた。
それから、しばらく走ったところで王城の城門が見えてくる、
城門前の跳ね橋は上がっておらず、そのまま王城内に入れるようだが――、前面の王城入口の部分に魔法師が数十人並んでいるのが見える事から、素直には入れてくれそうには見えない。
「ユウマさん、あれは王宮魔法師です」
「なるほど……」
やはり俺の感じた通り魔法師だったか。
「――なら、蹴散らすだけだな」
「待ってください。相手が攻撃を仕掛けてくるなら、この距離なら魔法を撃ってきてもおかしくないです」
「なるほど……、たしかに――」
俺の風刃も、見える範囲の物質を切断する魔法だし、そう考えるとお互いに姿が見える距離で魔法を撃ってこないのはおかしいか。
「もしかしたら……」
そう呟きながらエメラダが上空に視線を向ける。
「――ん? ああ、そういうことか」
城門前の上空を見て得心いった。
無数のレッドドラゴンが、空を飛行しており、俺達というか俺へ殺意を向けてきていたからだ。
馬車を停めたところで、魔法師達の中から一人――、煌びやかの衣装を身に纏った男が近寄ってくる。
「アルネ王国王宮筆頭魔術師のカルバード・フォン・クルセスだ。貴様が、アライ村のユウマでいいのか?」
「そうだが?」
「そうか……。型破りな魔法師だとは調査で聞いていたが、王都に単独で突っ込んでくるばかりか、兵士すら返り討ちにするとは――」
「襲ってくれば抵抗くらいはするだろう?」
「まぁ、そうだがな……。さて、貴様も罪状は聞いているだろう? その罪状について竜王様より直々に聞きたいことがあるそうだ」
「聞きたいことね……」
俺のことを殺す! とか言っていた連中と何を話し合えと――。
思わず肩を竦める。
態度が気に喰わなかったのか、王宮筆頭魔法師さんとやらは眉間に皺を寄せていた。
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