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エトレの名脇役  作者: 最内翔
第一章 キャファルデーモン襲来と勇者の召喚
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作戦会議

「街の人々に聞いて回ってみたんだけど、どうやら城の東側にあるオーガスタ広場がデーモン達の発生源みたいだね。具体的にはそこの旧カークス邸だ。カークス邸自体は数年前に売りに出された空屋敷なんだけど、ここ数週間にそこへ出入りしている女性の目撃証言があった。女はフードを被っていた上、街の人たちも空屋敷の管理人かだれかなんだろうと思ってちゃんと顔を見てなかったらしく、顔までは分からなかったよ」


 あの後、明け方頃に起きて街を回ってデイクを探した。難民キャンプを探せばすぐ見つかるだろうと簡単に考えていたが、実際には難民キャンプは何箇所かあり彼を見つける頃には完全に日が昇っていた。

 慌ててデイクを訪ねて事情を簡単に説明して彼の紹介で何人かのオーガスタ広場近くの住人に話を聞き、一通り事態の把握が出来たのが昼前。そこから急いで長の家に戻り今の報告会に至る、という状況だ。

 だから実は既に腹ペコだったりする。


「なるほど、その女性がサモナーのメイジだった可能性が高いですね 王都の混沌濃度は低く保たれているので自然発生する可能性は限りなく低いですし」


 そう欠伸を噛み殺しながら口を開いたのはオーレリアだった。やっぱり魔法使いは魔物も召喚出来るものなのか。


「こっちの世界の魔物やメイジについて詳しくないけど、俺もそんな感じなのかなとは思ってた。ただ引っかかってたのは、いくらメイジだからって一度にあんな大量のデーモンを召喚出来るのか? 勝手なイメージだけどせいぜい呼べてデーモン一体とかなんじゃ」


「そこについては私から説明しますね」


 と、オーレリアが重そうな書物を取り出してテーブルに置いた。栞が挟んであり、そこを開くと「アビス界のデーモン」について書いてあるようだ。


「基本的にこのアトラタンでは魔物を召喚する時、他の世界にいる魔物や幻想生物を直接引っ張ってくるわけではなく、その影、投影体として召喚します。あのデーモン達についても同様で、彼らはアビス界のデーモンの一種族、キャファル族みたいです。一体一体の強さは然程ではないんですが、繁殖能力と耐久力が異常に高いみたいらしいです。環境さえ整っていれば、一週間程で女王が100匹のデーモンを生み出すと言われています。キャファルデーモンはアビス界の他のデーモンに比べて戦闘力が高くありませんし、女王は一度呼んだら駆除が大変なのであまりポピュラーな召喚体では無いのですが……」


「他国にぶっ放して疲弊とかを狙うならむしろ好都合なわけか」


 なんか元の世界であったゲームのバイオテロを思い出した。ただゾンビじゃなくてゴキブリもどきなデーモンってのがまた嫌らしい。


「その話だともしかして、今頃王都全体がそのキャファルデーモンの巣にされてるのか?」


 レナードが家にゴキブリが湧いていたのに気づいたお父さんみたいな顔で頭を抱えている。


「残念ながらその通りだった」


 今度はルーシャの報告のようだ。いつものクールな表情の中に微かに苦虫を噛み潰したような嫌悪感が垣間見える事からもあまりいい報告では無さそうだ。


「王都を見に行ったけど、案の定沢山のデーモン達が見張りに立っていたわ。そして街中至る所に焦げ茶色の丸くて平べったい、さっきの話からすると卵ね、が張り付いてた」


「敵の数は?」


「ざっと100と言った所かしら。知能は然程高くないみたいで王都の防衛機能を利用してる様子は無いから突入自体は簡単そう。敵の女王が移動してる可能性はある?」


「低いと思います。基本的に産卵を始めるとその場から動かなくなり、その他の世話等は全て産んだデーモンにさせるので」


 ゴキブリかと思ったらその辺りは蟻みたいな感じか。


「我が軍の兵力は1000人弱だから、正面衝突さえ避ければ突破出来ない事はないな。残る問題はあのデカブツか……」


 昨日の苦い記憶が蘇るのか再び顔をしかめるレナード。

 この目でそのデカブツを見ていないからなんとも言えないんだがそこまで強かったのだろうか。

 俺達4人が揃っていれば勝てない敵が居ないとまでは言わないまでも、少なくとも負けるイメージが沸かないんだけどな。


「ともかく王都奪還の目処は立ったな。兵の編成はどうだ?」


「今日中には揃うはずなので明日には出発出来ると思います」


「分かった。なら奪還戦は明日だな。各自明日まで準備をしてくれ」


「「はい!!」」


「お、おう」


 それで会議は終了のようでオーレリアとルーシャは部屋を出ていった。

 正直ただ見ているだけで会議が進んでいってしまった感じだった。俺が軍議どころかまともな会議すら経験したことないからというのもあるかもしれないが、それ以上に三人がサクサクと進めてしまったからと思うのは甘えなのだろうか。

 ふとレナードを見ると、丁度彼も席を立ち部屋を出ようとしている所だった。

 

「あ、あのさ。俺は何しとけばいいかな?」


「ん? あ、いつもの調子でやってしまったからあんまり説明出来てなかったな。すまない」


 そう苦笑してレナードは改めて席に戻った。


「やっぱり元の世界では戦ったことがないのか?」


「そうだな。俺達にとっては戦争なんてもう何十年もの昔の話で、もしくはゲーム、遊びの中の話だったから」


 それどころか、命の危険というのも殆ど感じたこともない。せいぜい車に轢かれそうになって若干ビビるくらいだ。人間明日生きてる保証なんてないなんて言うけど、その言葉にどれだけの真実味を感じるのだろうか。

 事実今でも、一度こちらにきて戦闘を経験し、一度敵の攻撃をくらいそうになった今でも、やっぱり心のどこかでゲームの中の戦いのように残機があるような緊張感の無さが否めない。この俺が死んでも元の世界の俺が死ぬことは無いという点ではある意味間違っていないのかもしれないが。


「それは、羨ましいな。いずれこの世界もそんな世の中になればいいんだが…… それでも今は戦わなくちゃならない。僕らは戦わないと生きていけないんだ。奴らを倒さなければいずれ王都から溢れ、他の街も襲い始めるだろう。何より多くの人の家がある。国としての基盤もある。それを取り返す為には君の力が必要なんだ。だから……」


「大丈夫、今更怖いから戦わないなんて言わないさ。自分で言ってて少し薄っぺらく聞こえるけど、それでも懸命に戦うよ」


「ふふ、ありがとう。多分明日は僕と一緒に前線で女王のいるオーガスタ広場までの道を切り開く役目を担ってもらうことになると思う。まぁ難しく考えず、僕達とはぐれないように好きに暴れながら進んでくれるといいよ。大体100人程の兵を率いてもらうことになるけど、基本的には副長が部隊の管理をしてくれるはずだから心配しなくていい」


「え、ちょっと待って部隊を率いるってのは初耳だぞ!?」


 ストラテジー系のゲームをやったことが無いわけではないが、部隊の指揮はそれとはかなり勝手が違うはずだ。


「ははは、心配だったら副長に会って話を聞いてくるといい。ドホクという樽みたいな大柄な男で、クラスは持っていないが実戦経験の豊富な人物だ。この時間なら宿舎近くの酒場にいるはずだよ」


「この時間ならってまだ昼過ぎだぞ?」


「失敬、『この時間でも』だな」


 そうレナードがいたずらっぽくはにかんだ。

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