プロローグ
「レナード、お前も既に立派なロードだ。これから先はお前が領民たちを導いてあげなさい」
油断していたわけではないはずだ。
いくら最近平和だったとは言え、ここは混沌渦巻くアトラタン大陸。予期せぬ混沌災害などは日常茶飯事だ。
ただ、いくらなんでも唐突過ぎた。
平常時は混沌レベルが1~2に保たれている王都の、その内部から大量のデーモンが現れる等流石に想定外だったのだ。父さん達が悪い訳じゃない。
「それでも領民の為、命を賭して奴らを抑える。それも領主の仕事なんだ。辛い役目を押し付けることになるが、きっとお前なら良きロードとなれる。後の事は頼んだぞ」
そう微笑んだ、父の笑顔が忘れられない。
「そう辛気くせぇ顔すんな! お前らが逃げ切ったら俺たちも逃げるからよ。シケた面してねぇでシャンと胸張れ!」
そう背中を叩いてくれた、アッシュ将軍の力強さが忘れられない。
「大体の指示は、既にオーレリアに伝えてあります。まずはセンデレの祠へ向かって下さい」
いつもの無表情で告げて詠唱を始めるペルージ宰相の、ピンと伸びた背中が忘れられない。
だが彼、エトレ家特有の黒髪を持つレナード・エトレは胸を張り、声を張る。
「住人の避難は済んだか? 一度王都を捨て南のルデリアの街まで後退する! 父上達の踏ん張りを無駄にしないためにも、これ以上誰も死なせないぞ!」
「おう!」と兵達の声があがる。皆同じ気持ちだが、それ故に士気は高い。
必ずや王都を取り返してみせる。
後ろの二人の少女、泣きそうなのを必死に我慢しているメイジと感情を廃し無表情を貼り付けた従者を振り返った後、彼は進み始めた。