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2つの桜が繋がる時  作者: 犬鳴 椛子
卒業準備 真相
50/50

3月12日 卒業式 さようなら……また会える日まで

 卒業式の行事はいつも通りに行われた。「卒業証書受領」「3年生を送る言葉」「3年生を送る為の合唱」「3年生徒代表のお礼の言葉」「校長の長い話」など……1年の頃に見た内容と全く同じ内容で卒業式は進められた。

 しかし、問井といはそんな事はどうでもよかった。全てを白紙にされたこの学校の闇で共に戦ってくれた恋人が……また友達の関係になった事……問井にとって、それはとても嫌な事だった。


 ―― 何としてでも、思い出してもらう……!


 問井の強い想いを城坂きさかへ伝える為に頭の中で自主トレーニングをしていた。



 ―― 卒業式 終了 ――


 3年生の先輩方は無事に翼を授かり、旅立って行く事が出来た。在校生が片付けを始めた時、問井は城坂を探して、呼び出そうと探し回った。しかし、城坂の姿はそこにはなかった。

 城坂を目撃したという生徒に尋ねて、「正門で元学級委員長と話をしている」と聞いた問井はすぐさま正門に向かった。だが、そこにも城坂の姿はなかった。

 すると丁度良く、元学級委員長が正門から入ってきた。すぐに引き止め、城坂の行方を尋ねた。すると今度は元副委員長に挨拶へ行ったとの事だった。

 問井はお礼を言うと走って、校舎前へと向かった。


 らちが明かないと感じた問井はポケットから500円玉を取り出した。


『これが最後のコイントスになるわね……のぼりから借りたこの500円……使わせてもらうわ……』


 目を瞑り、深呼吸をして、1枚のコインに神経を集中させる。


『ふにゅっ!』


 キーンッ!(コインを弾く音)


 問井はコインを高く強く真上へ弾き飛ばした。それと同時に問井の意識は500円分の未来の世界を見れる。時間は42分間、いわば未来予知である。



 ―― 42分間の未来の世界 ――


<んっ……ここは……校舎前ね……? そうだ、幡を探さなきゃ……! 未来の中だけ使えるもう一つの能力……『ワンアイズ・ムーブ』!!>


 ワンアイズ・ムーブとは文字通り「片目で移動する」事である。だが、目玉が飛び出すわけではなく、片目を瞑る事でその片目が遠隔カメラの様になって、自由に移動が出来る便利な能力。本人は移動が出来ないので修行して、身に付けた特技であった。


 そして、ワンアイズ・ムーブによる探索が始まった。


<えっと……元副委員長が居そうな部屋は……きっと、うちらが使ってる3階の学級委員の部屋ね……探索あるのみだわ……!>


 ムーブしながら、城坂の行方を探る問井はある人物を見つけた。それはたっぷり城坂にフルボッコにされた教師であった。この教師だけは気絶していて、卒業式に参加が出来なかったのだ。そして、フラフラしながら、どこかへ向かっていく様子だった。


<……あいつ、どこへ行くのかしら……? 1階の保健室を通り過ぎて……階段を上っていくわね……>


 ゆっくりとその教師は階段を上っていく。2階……3階……そして、向かった先は学級委員の部屋へと近付いていた。


<あれ……? よく見たら何か持ってる……? 折れた箒と割れたガラスをガムテープで巻いた……手作りナイフ……!? 考えてみれば、あいつはずっと放送室で眠っていたから、桜の影響を受けなかったって事……かしら……? だとしたら、殴った事を確実に忘れてる城坂は何も知らないまま、犠牲になるのと同じだわ……急がなきゃ!>


 問井は次の未来へ進んだ。そこには城坂が何事も無く、ダンボールをあさっていた。


<幡ったら……こんな時に何をあさってるのよ……>


 城坂が箱から取り出したのはパーティーでよく使われる【クラッカー】である。しかし、問井はそのクラッカーに見覚えがあった。


<あれは……確か……?>


 その【クラッカー】はただの【クラッカー】ではなかったので、問井の中でも強く印象に残っていたのだ。むしろ、そのモノで散々な目にあった記憶が残っていた。


「きひひ……っ、これで副委員長をまた失神させてやるかな~? あの時の顔面白かったからなぁ~?」

<の、幡ぃい……あんたってやつはぁあ……!>


 未来に見える相手には、問井の声が聞こえないので怒鳴ったり、叩いたりは出来ない。そう悔しがっている時だった。


<はっ……!? いけない、ここに教師あいつが来るんだったわ……!? 早く幡に伝えなきゃ……!>


 しかし、記憶をすべて無くしている城坂に、この事を伝えても、すぐには理解をしてはもらえないだろう……。問井は一度落ち着いて、もうしばらく様子を見てみる事にした。

 そして、教師は思い切り、部屋の戸を開いた。その瞬間……



 ―― バァアーーンッ!!! ――


 部屋と3階廊下全体に強烈な爆発音が響き渡った。同時に教師も窓側の壁に吹っ飛ばされた。

 この時、部屋と3階廊下全ての窓ガラスが小刻みに揺れる。


「あっはっはっははははっ! また引っかかったな! 副委員長は相変わらず、鈍感だな~……って、あれ? なんで、先生が倒れてんだ?」


 当然、耳栓をしている城坂は爆音を聞いても、問題はなかった。教師は頭をグワングワンッと揺らしながら、あの世とこの世をちょっぴり彷徨っていた。


「あ~……っと……? これはあまり良くない感じだなぁ……? 随分とボロボロだし、関わらない方が身の為かもな……」


 しかし、教師は目を覚ました。


(つっ……くぅっ……なんだったんだ……今のは……?)

「あっ、起きた……さっきはすみません。ちょっと、サプライズを考えてたんですよ~」

(サプ……ライズだぁ……? なら……こっちもサプライズ……くれてやるよぉおっ!!)


 城坂に向かって、教師は勢いよく殴りかかった。しかし……


「おぉっと!? 危ないなぁ……キンキンして、頭がふらついてるんだから、大人しくしてないと?」

(黙れぇえ! このクソ餓鬼がぁああっ!!!)


 今度は真っ直ぐと城坂へ向かっていく教師。それを見て、城坂の目の色が変わった。



 ―― ガシッ ――


 城坂は疲れ切った教師の背後を取った。その隙を逃さず、一発技をお見舞いした。


「いっ……せー……のっ!!」

(わっ!? な、何を!? わぁぁああっ!!? ガハフッ!)


 プロレス技【ジャーマン・スープレックス】が決まった。見事に入った為、再び教師は意識を無くし、その場で白目になって倒れた。

 この時、問井は悟った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<なんか……うちが援護するまでも無さそう……>


 とりあえず、もう少しだけ様子を見てみたが……



 特に変わった事は起こらない為、ムーブを戻して、未来を見るのをやめた。


『はぁっ……なんだかとんだ無駄金だったわね……』


 空に飛ばした500円玉をしっかりキャッチすると問井は能力により、疲労が溜まってしまい、座り込むと壁に持たれた。


『くはぁ……やっぱり、500円分とムーブは身体への負担が大きいわね……少し……休憩……』


 出入り口横の壁に持たれる問井は、これまでの疲労が重なったせいか、少しずつ睡魔に襲われいくが、それを必死に堪えていた。しかし……


『うぅ……眠い……物凄く……眠いけど、耐えな……きゃ……クゥークゥー……』


 疲労には勝てず、そのまま眠ってしまった。



 ―― 30分後 ――


「くっ、ぁあ~っ……何だったんだ? あの教師は……? まぁ、今回は見逃しておくか。あの状況を誰にも見られなければの話だがなぁ~」


 城坂は荷物を持ち、問井の眠る出入り口に向かっていた。


「そういや、副委員長のやつ……なんで、来なかったんだ? 3年を送ったら、来るように伝えたんだがな……せっかく、あいつ用に爆炸クラッカーまで用意したのに……」


 事後の城坂はクラッカーと教師の事を気にしながらも問井をひたすら待っていた。だが、城坂はすぐに立ち上がる。


「仕方ないな、副委員長のやつを探しに行くか……体育館に一回行ってみるとするかな?」


 城坂は渋々立ち上がると体育館前へと向かった。階段を下りて、1階の出口を出ると城坂はすぐに問井の存在に気付いた。


「んっ……? 問井か? 何やってんだ……ここで? おいっ! 起きろ!」

『んんぅ……スゥースゥー……』


 問井は寝息を立てながら、グッスリと眠っていた。生存の確認が取れた所で城坂は安著の息をつくと問井を保健室へと連れていった。

 保健室に辿り着き、ドアを開けたが先生はおらず、許可を得る必要もないと自己判断して、問井をベッドへ横にした。


「ふぅ……問井って案外、軽いんだな。女の子は軽いってイメージは本当だったんだな。しかし、やっぱりずっと背負ってると重く感じてくるな……」

『ん……ぬっ……』

「おっ? 目が覚めたか……?」

『スゥースゥー……』

「なんだ……まだ寝ていたのか……まだ掛かりそうだが待ってやるか……」


しばらく待つが、問井は眠ったまま、起きる事は無かった。

副委員長の務めを果たした事や今回の一件を考えると深い眠りも城坂には納得が出来た。


「仕方ないお嬢様だな……お前が起きるまで待っててやるよ。今度は俺が待つ番か……」


城坂は窓の外を眺めながら、呟く。


「ごめんな……委員長だから、どうしても遅れる事は避けたかったんだ……嘘までついて、悲しませる俺って酷いやつだよな……みさき……」

『何よ……それ……』


城坂の背後からの問井の声に振り向く。


『うちを置いて、先に行った……ですって……?』

「お、起きてたのか? みさき? いつの間に……?」

『「今度は俺が待つ番か」からよ……! このバカぁ! どんだけ心配したと思ってんのよ……うちは……うちはぁ! きゃっ!?』


城坂は問井を強く抱き締める。


「良かった……みさきが起きなかったら、どうしようかってさ、俺の責任だ……」

『そ、そうよ……せ、責任とってよね……!』

「分かったよ。せっかちなお嬢様だね」


問井から離れて、城坂は改めて告げた。


「みさき……お前のことが好きだ……付き合って……くれないか?」


問井は少し悩んだ顔をしながら、胸ポケットから大型充電器を城坂に手渡す。


「これは……俺のバッテリー……みさき?」

『答えは決まっているわ。イエスよ……幡』


問井は今まで最高の笑顔を城坂に見せた。

更新が遅くなり、大変申し訳ありませんでした

_(-ω-`_)⌒)_

久しぶりの執筆だったので、探り探りでしたが、なんとかラストまで繋げることが出来ました(´~`)

漫画の方が忙しいので、執筆はたまにやるかも知れませんが、どうぞよろしくお願い致します

m(_ _)m

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