3月12日 2つの光
突如、現れた強い光は2人を包み込む。そして、別の空間へと運んでいったのだった。
『うぅっ……目が……目がぁ……』
「お前、さっき目を瞑ってたろ……しかし、一体、何だったんだ……?」
『あれだけ強い光……瞑ってても痛いに決まってるでしょ……?』
「俺が少々、光に慣れてるせいかな……? 眩しくても、痛いとは感じなかったな……」
『それは……違う意味で病気だわ……』
(………)
突然の出来事がありながらも、ボケとツッコミは冷静にする2人の耳へ幽かに声が聞こえた。
「んっ……? なんだ? 今、声が聞こえた様な……聞こえなかった様な……?」
『な、何よ、いきなり……! 変な事言わないでよ……って言いたいとこだけど、うちも聞こえてたんだよね……』
霊的なモノに弱いのか、声がさっきよりも弱々しい問井に城坂はすぐに気付いた。
「おぃっ、みさき……? 大丈夫か……?」
『だ、だだ、大丈夫よ……こ、こんなの……なんて事ない……』
城坂は怯える問井の頭を撫でた。
『えっ……ち、ちょっ……////』
「怯えるなって、俺が居るだろ?」
『ぅ、ぅん……////」
良い雰囲気になった時だった。目の前に2つの光が現れた。
(おのれ、末永く爆発しろ……)
(ほんと、羨ましいわね……)
「うわっ!? な、なんだっ!?」
『ひゃぁぅっ!?」
2人は驚き、問井は城坂の背中に隠れた。
(驚かせて、すまない……さっきのは冗談だ。ちょっと流行りの言葉を使ってみたくて言ってみただけだよ)
(ごめんなさい。あなたたちを見ていると昔を思い出しちゃってね……)
2つの光は徐々に人の形へと変わっていく。
「おぉ……人型になっていくぞ! どうなってるんだ……!?」
『あ、あなたたちは……人間ですか……? それとも……ゆ、ゆ、幽霊ですか……?』
「おいっ! 馬鹿な事、聞いてんじゃないぞ! みさき!」
(みさき……さん……ですか……? 可愛いお名前ですね。申し遅れました。わたしは3年生の舞散 紗久羅と申します)
(ぼ、ぼくは……3年生の紗倉香 菜太だ……)
神々しく光る2人は自ら名前を名乗った。問井は全てが突然の事ばかりで唖然とするしかなかった。しかし、城坂が名乗り出た。
「わざわざ、ご丁寧にありがとうございます。先輩方……俺は2年生で学級委員長を務めています城坂 幡と申します。それで、こいつですが……ほら、しっかりしろって」
『あっ……う、うちは……問井 みさきです……同じく2年生で……副委員長を務めております……』
立場が完全に真逆の2組は互いを見合った。そして、光っている2人はある単語に反応した。
(学級委員長と副委員長……か……懐かしい……)
(ほんとね……わたしたちの思い出でもあり……それが悲劇の予兆でもあったのよね……)
2人は懐かしくも、切なげに語った。その時、城坂はふと思い出す。
「あっ……あなたたちは元学級委員長と元副委員長の……」
『の、幡……? どういう事……?』
「彼らは……卒業式の日……ここで殺されたんだ……」
『ころ……された……? どういう事……?』
城坂は元学級委員長たちを見ながら、説明を始める。
「卒業式の日……彼ら……いや、お二人はこの桜の木の下……通称『憩いの場』で待ち合わせていたんだ。そこは5.1%の確率でフラれるという有名なスポットだったらしい……」
『なんで、「94.9%の確率で恋が芽生える」って言わないのよ……』
問井が的確な部分にツッコんだ。
「それは……桜を植えた人にでも聞いてくれ……! それで続きだが……その場所でお二人の恋は成立したんだ……」
『い、今、メタぃ発言しなかった……?』
とりあえず、突っ込むがすぐに菜太があっさりと流されてしまう。
(そうさ! 舞散さんへの告白は成立したのさ)
『えっ……? それっていい事じゃないの……?』
(それがね……? それを良しと思わない輩がいたのよ……)
『それって……まさか……』
問井の顔が一瞬、青ざめる。
「そうだ、みさきを愛するヲタク共と同様に舞散さんにもファンというモノが存在したんだ……そして、一部始終を見ていた奴がいてな……そいつらが嫉妬して、紗倉香さんを襲ったんだ……」
『若干違うけど……まるでうちらと同じ光景じゃない……!?』
(きみたちも襲われたのか……?)
「えぇまぁ、教師にですがね……弱かったですけど……」
(ぼくはそのファンに囲まれてね……小さい頃に武術を教わっていたから、武器を持って、襲われたけども負けはしなかったさ。しかし……)
(わたしがいけないんです……あの場所に行かなければ……菜太くんは……)
「いいえ、悪いのはあなた方ではありません……人間がこの様な事に囚われてしまうのがいけないんだ……」
城坂もまた切なく語る。
「その後、お二人は全てなかった事にされてしまい、この桜の木の下に埋められてしまった……」
『そ、そんな……そんな事って……みんなが愛する人を……みんなで殺すなんて……』
(あぁ……ぼくも信じられないよ。人間は狂ってしまったら、もう終わりなんだな……)
(………)
紗久羅は俯いて、何も言わなかった。その時の記憶が相当、トラウマになっているのだろう。
「話が変わりますが……もしも、これがあなた方の起こされている異変なのであれば、解決方法を教えてください……! 俺たちでお二人の闇を消し去ってみせます!」
『う、うちも出来る事があれば……言ってください……!』
(そうか……ならば、2人に試練を与えようではないか……!)
城坂と問井は息を飲んだ。果たして、どのような試練が待ち受けているのだろうか……自分たちに出来るのだろうか……不安が徐々に募るばかりであった。
しかし、彼らは満足そうな顔で2人に告げた。
(ふふふっ……そんなに硬い表情しなくてもいいのよ……? わたしたちの闇は、もうとっくにあなたたちが打ち消しているのだから……)
「えっ……? そ、それってどういう……」
舞散の突然の一言に城坂は唖然とした。そして、紗倉香が話を続けた。
(きみたちの告白を見て……一瞬で心が洗われた様な気分さ。ぼくたちもあんな青春……していたんだと改めて、思い出したよ)
(本当に……とても幸せな気持ちになれたわ。でも、わたしたちの心の闇と病みが大王桜を闇に染めていたのね……)
死して、なお、悔いを感じる舞散と紗倉香に2人は現実の起こっている事を話す。
「いいえ、闇に染まってなんかいませんよ。馬鹿でも助け合える奴らがすぐ傍にいますから!」
(馬鹿でも……助け合える……?)
『そうです! 今はヲタクと呼ばれていますが、あいつらも守る為に必死になってくれていますし、校内ほぼ全員が学校の為に動いてくれています!』
(校内の……ほぼ全員が……?)
城坂と問井は声を揃えて言った。
「『はいっ! もう誰も見捨てたりなんかしません!』」
(うん……合格だ……流石、我が校の学級委員長だな……)
(ほんとね……申し分なしだわ……これからも学級委員長をよろしくね? 副委員長さん)
『おまかせください! こいつはうちがしっかりと面倒見ますから!』
「おぃっ……俺はお前の子どもじゃねぇぞ……」
すると突然、舞散と紗倉香が淡い黄色の光に包まれていく。
「わっ!? さ、紗倉香さん!?」
『ま、舞散さんも……!? どうして急に……!?』
驚く2人を紗倉香がすぐになだめる。それもさっきよりも優しい声であった。
(大丈夫。ぼくたちは安心しているだけさ……)
(学校も生徒も変わって、あなたたちも変われた。友達から恋人同士にね……それが見られて、わたしたちはすごく幸せよ……人の幸福を願う事はやっぱり必要なのね……)
(そうだね。そのおかげでぼくたちも気持ちを入れ替える事が出来たよ)
城坂と問井は戸惑うものの、どこか照れ臭さを感じていた。
『えっと……よく分からないですけど……感謝されてるみたいだから、これでいっか?』
「そ、そうだな……」
(えぇ、大丈夫よ……ありがとう。みさきさん。幡さん)
(そろそろ時間だ……ぼくたちは紗久羅さんと一緒に逝くよ。迷惑かけたね……)
突然、別れを告げる紗倉香。
しかし、2人はもう動揺はしていなかった。紗倉香と舞散が目にした光景は深々した最敬礼であった。
(ふふっ……何も……心配いらないですね……)
(あぁ、後は任せたぞ……後輩たち……)
そして、2人は淡い光と一緒に姿を消した。
同時に城坂と問井を淡い光が包み込む。その後、2人は意識を失い、地上へと導かれるのだった。




