3月12日 目覚め
「んっ……ここは……?」
城坂が目を覚ました。身体を起こし、辺りを見回すとそこは木の根が張り巡らされた広い部屋だった。
すると、その隣から寝言が聞こえてきた。
『むみゃ~……イカ墨パスタは食べれるけど……墨汁パスタは食べれませんよぉ……』
「問井……お前は違う墨にうなされるなよ……」
『ふわぁあ……そんなにいっぱいかけないでぇ……』
「パスタはいいから、起きろ~」
城坂は身体を揺すって、起こす事にしてみた。しかし……
『あわわゎ……墨汁がこぼれちゃいますからぁ……揺らさないでくださいぃ……』
「やかましいっ、いい加減起きろ」
ペシンッと城坂が軽く頭を叩く。すると、勢いよく問井が起き上がり、叫んだ。
『ほぁっ!? 墨汁の雨がぁあっ!!?』
「しっかりしろよ、もう墨汁はいいから」
『あ、あら……? ここはどこ……? 確か、うちらは桜の木の下に居て……』
寝起きで頭がぼんやりとしている問井に城坂は軽く断言した。
「ここは桜の木の下の下だ。いわば、土の中ってことだな」
『えっ? な、何言ってんのよ……? そんなわけが……』
「俺を疑う前にまずは周りを見てみろ」
『ぇっ……?』
問井は城坂のあまりの冷静さに驚くが、とりあえず、辺りを見回した。明らかに学校内でも学校外でもない薄暗くも日差しが差し込む空間にいる事を知る問井だった。
『疑っても仕方ない状況ね……とりあえず、ここからどうやって出るの……?』
「わからない」
城坂はきっぱりと言った。
『えっ……先に起きたなら、少しくらい探索しても良かったんじゃないの……?』
「探索は……必要ないよ。うっしゃ、いっちょやりますか」
『ちょっと! 何をやるのか知らないけど、説明してよ!』
「話せば長くなる。善は急げだ、来てくれっ!」
城坂は問井の手を握ると根の張った壁端へと走った。全てが突然の中、問井は動揺の顔を隠せなかった。
『い、いぃ委員長! ちょっと待ってよ!』
問井は咄嗟に城坂の手を振り払った。
「なんだ? あまり時間がないから、話しは手短かに頼むよ?」
『とりあえず、何か知ってるみたいだから、そのさわりだけでも教えて……じゃないと、一緒に行動は出来ない……』
「そうだな……何十年の前に学年は1つ上だが、俺たちと同じ学級委員長と副委員長が殺されて、ここに埋められた……それが何かしらの怨念らしきものになったと思ってくれ……」
話のさわりとは言え、衝撃的な話の内容に唖然とする問井。
「とにかく、詳しいことはまた後だ。脱出する為に副委員長……きみが必要になるかもしれない……」
『う、うちがいても……何が出来るのよ……』
困惑したまま、悩む問井の手を城坂は再び握る。
「考えるのも後だ! このまま、ここに居ても桜の肥やしになるだけだろ? 考えるよりまずは動け!」
『い、委員長……きゃっ!?』
問井を説得し、手を引っ張り、走り出す城坂は根が張り巡らされた壁端まで辿り着いた。
「ふぅ……さすがに広いな。副委員長……頼みがあるんだ」
『な、何……? うちに出来る事ならしてあげるけど……?』
城坂は真剣な眼差しで問井を見つめた。その行為に問井は焦っている最中、一呼吸置き、城坂は一言放った。
「俺と……付き合ってくれないか……?」




