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2つの桜が繋がる時  作者: 犬鳴 椛子
卒業準備 昔話
45/50

3月…… 染まった桜は儚く散る

 ―― 卒業式当日 ――

 この日は1、2年生徒たちが卒業式の為にいつも通り、登校してきた。3年生は遅れて、登校してくるので今はまだいない。

 卒業式が始まっていないのを利用し、その中の下級生ファン共は事前に教室を抜け出すと本日の作戦の為に校舎裏の影に身を潜めていたのだった。



 ―― 卒業生登校 ――

 卒業生たちが緊張した面持ちで登校してきた。もちろん、その中には今は元学級委員長の菜太さいたと元副委員長の紗久羅さくらも一緒であった。

 卒業生たちは下駄箱から上靴を取り出すと各々、自分たちの教室へと入っていった。


 しかし、菜太だけは違った。


 下級生ファン共が事前に入れておいた手紙を見つけたからである。菜太はその手紙を読むと全く疑う事無く、校舎裏へと向かった。

 そして、その様子を他の卒業生ファン共が確認し、後をつけた。


 しかし、マドンナファン共はこの時まだ気づいていなかった。その更に後ろで紗久羅さくらが見ていた事を……



 ―― 計画実行ミッションスタート ――

 菜太は手紙の書いてある通りに広場へと来た。しかし、そこには誰もいなかった……

 考えてみると内容として、卒業前に教室よりも先に裏に来て欲しいという事は正直、不自然。菜太は今更だったが、ここで何かを語るのは事はあまりにおかしいと感じた。

 勘がいい元学級委員長はすぐに教室へ戻ることにした。


 しかし、既に背後には「下級生ファン」という名の壁が出来上がっていた……


「どうやら、生かして帰してはくれそうにない顔をしているな……」



 ―― 計画欠損アクシデント ――

 下級生ファン共の後ろに卒業生ファン共がゾロゾロと集まり、菜太を囲んでいった。


「やれやれ……ぼくへの熱烈なファンがいっぱい居てくれて嬉しいもんだな。1人くらいは女の子のファンも居てほしかったものだがね……?」

(誰がお前のファンだと!)

(貴様をファンに入れる枠はどこにもねぇっての)

(フルボッコだドゥン)

(殺ってやんよ!)

「はぁ……こんな事するつもりはなかったけど、自己防衛の為に使わせてもらおうか……」


 ファン共はスコップにバットに濡れ雑巾などの武器を持ち、濡れ雑巾が襲いかかった。だが……


(うぉおおおおおお!! ごふっ!?)

(お、おぃっ!? 大丈夫か!?)

(いきなり、吹っ飛ばされたぞ……どういう事だ……!?)


 濡れ雑巾が振りかぶる前に元の位置に吹っ飛ばされたのだった。菜太は武術の構えをしていた。


底掌ていしょう突き……安心しろ、今のは単なるあごの打撲だ」

(ば、ばかな……こいつ、強いだと……!?)

「こう見えて、武道術を仕込まれていてね? その程度の布切れで勝てると思ったか?」

(くっ……甘く見ていた……赤信号みんなで渡れば怖くない! 行くぞぉお!)

(おぉおおおおおおおお!!!!)


 ファン共全員が一斉に菜太へ突っ込んでいった。しかし、菜太は焦る事無く、目を瞑りると深呼吸をした。


「ふぅ……精神統一、精神集中……」



 ―― 致命的油断 ――

 鈍器を持って、襲いかかってくるファン共に屈しない菜太に容赦無く、攻撃の雨が降り注いだ。


(ぬぉおおおおっん!)


(でりゃぁあああっ!)


(スゥウウウパァアアアソォオオゥドゥウウ!!)


(ふごぉおおおおっ!!!!)


「甘いっ!……全て見切ったぞ!!」


 一斉に振りかぶるファン共の攻撃毎に1つずつ動き、攻撃をかわした。その時も菜太は目を瞑り続けたままであった。


(な、なんだと……!? 全部かわしやがった……!?)

(し、信じらぬ……!! 本当に見抜かれただと……!?)

(あいつ……目を閉じているのに……!!)


「この程度でぼくが倒せるとでも思っていたのか?」


 その時だった……


『ちょっとみんな、何してるの……?』


 菜太の背後から聞き覚えのある声が聞こえた。全員が振り向いた先にいたのは紗久羅であった。


「!!? ま、舞散さん!?」

(!? わ、我らがマドンナ!! 何故ここに!?)

(そんな馬鹿な……!? まさか、こいつの後ろを着いてきていたというのか!?)

『こんな事して、学校の恥だと思わないの!』


 紗久羅の怒りも当然である。1人に対して、大勢が襲い掛かるという多勢に無勢の状況。且つ、彼氏を襲っているのだから許せるはずがない。

 その状況に皆が混乱する最中さなか、菜太の背後にいたファンの1人が好機チャンスと感じ、スコップで殴りかかった。


『!!』


 それにいち早く気付いたのは、紗久羅であった。そして、すぐに菜太へ危機を知らせた。


『菜太くん!! 危ない!!』

「えっ? なっ!?」


 紗久羅の知らせに集中してしまい、菜太は背後のスコップへの反応が遅れてしまった。


 ――ゴンッ!――


 鈍い金属音が響くと共に菜太はその場へ倒れ込んだ。そして、頭部から流血して、動く気配はなかった。


『き……きゃぁああああああああああああっ!!!!!』


 紗久羅が悲鳴を上げた。いままで聞いた事のない共鳴きょうめいする様な悲鳴であった。


(や、やばいよ! マドンナも押さえろ!)

(口を早く封じねばっ!!)


 ファン共は状況に焦るあまり、学園のマドンナさえも取り押さえてしまった。


『ちょっと!!? な、なにするの!? 離しなさいよ……菜太くんを……よくも……うっく……』

(な……泣かないでください……紗久羅様……)

(ま、まだ死んだって訳じゃ……)

『解ってるの……? これは重い罪よ……例え、生きていようと死んでいようと……犯罪には何も変わらないのよ……!!!』


 正論を言うマドンナにファン共は言葉が出なかった。しかし、1人だけは違った……

 スコップをしっかりと握り、紗久羅へ一言言い返した。


(違う……これは犯罪なんかじゃない……)


 明らかに狂った答えだった。その答えに初めはファンも唖然とする。


『馬鹿言わないで! これは犯罪よ! 集団奇襲で殴り殺したのよ!』

(あいつが悪いんだ……我らのマドンナを奪った……それだけで罪なのだ!!)

(そうだ……奴が悪い……! マドンナはみんなのモノだ……!)

『ふざけないでよ……』


 紗久羅の身体が怒りと悲しみで震え始めた。そして、泣きながら言った。


『わたしは……お前たちのマドンナでも何でもないわ……!! わたしは……1人の恋する女よ!!』

(……!!!)


 ファン共はその言葉を聞いた瞬間、何かが途切れた様に静まった。


『えっ……? 何? 何なのよ……?』

(マドンナは今日で終わりだ……お前はもうマドンナじゃない……)


 荒っぽく、紗久羅を広場へと突き飛ばす。


『きゃっ!?』



 ――ドサッ――


『あたた……何す……っえ……?』


 紗久羅がの当たりにしたのはスコップを大きく振り上げる1人のファンだった。


(さようなら、舞散さん……あの世でこいつと一緒に卒業式を迎えて下さい……)

『ちょっ……やめ……』

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