3月…… 大きな桜の木の下で
とある昔の事、学校に大きな桜の木がそびえ立つ遥か前の事……
そこは広場であった。
しかし、広場と言うには面積の狭い所。広場というのは変だという意見が多数出た為、みんなはそこを【憩いの場】と呼ぶ様になった。
何時しか【憩いの場】は友達や恋人同士の待ち合わせ場所となり、その場にいるだけでも居心地の良い場になっていた。
そして、告白をすると5.1%の確率でフラれるとして有名な告白スポットにもなっていた。
そんなある日、1人の少年は1人の少女を【憩いの場】に呼び出し、待っていた。
少年の名は紗倉香 菜太。彼は学級委員長を務めていた。いつも真面目で不届きモノを厳しく指導する程の言ってしまうとお節介な人である。
そんな彼が呼び出したお相手は舞散 紗久羅。彼女は副委員長を務めていた。
彼女も真面目で不届きモノを許さない質だが、彼女が一言注意すると一瞬で騒動が収まるという。 最早、クラスのマドンナと言っても過言ではなかった。
そんな人気者の彼女を菜太が呼び出したのだ。
それはもちろん、告白する為に……
しかし、菜太は真面目過ぎるせいか、遅れたくない一心で約束の1時間前に着いてしまった……
そして、待つ事50分後……彼女の姿が見せた。真面目な彼女も10分前行動が身体に染み付いているのだろう。
約束の10分前に到着したのだった。
『紗倉香く~ん? ごめんなさい、待たせてしまいましたか?』
「い、いぃいいっいえっ、いぇっ!? ままままま、待ってなんていませんよぉ!?? 断じてね!? うん!」
明らかに誤魔化し切れていない様子を見て、紗久羅は微笑した。
『うっふふ……いつも厳しい紗倉香くんがこんなに焦っているって事は~?』
紗久羅は中腰になり、背中で両手を軽く組むと菜太の上目使いで見つめた。
「ぇ、ぇえっっっと……ですね……? その……ぼ、ぼくは……ぼくはっ……!!」
『んっ? ぼくは……何でしょうか……?♪』
彼女は微笑みながら、彼へ少し意地悪をした。
「んぉぇっ……!? ぉぇえ……っと……ですね……そのぼくは……」
『その先が気になりますねぇ~? 教えてください♪』
紗久羅は普段、真面目な学級委員長がアタフタする姿を見て、楽しくなった。そして、その姿が何だか愛らしくも見えた。
『ほら、いつもの様にビシッと言ってくださいよ? 学級委員長の紗倉香くん♪』
「だ、だからですね……その……」
アタフタした中、菜太は意地で決断を済ませた。
「ま、舞散さん!! ぼ、ぼぐとぉおっ!! おちゅきあぃして下さい!!」
緊張のあまりダイナミックに噛んでしまい、やってしまったという顔で真っ赤になる菜太。一瞬、紗久羅唖然としてしまったが……
『ぷっ……くっ、あっはははははは!! 紗倉香くんはやっぱりすごいと思うな……』
「あっ……えっ……?? あ、あの……舞散……さん……?」
『【大】がつくほど真面目な人だとずっと思ってたけどさぁ。こうやって、緊張して……それでもちゃんと告白する事が出来るんだもの。わたしに異見を唱える資格はないわ♪』
「じ、じゃぁ……舞散さん……ぼくの告白は……」
『だから……よろしいという事です!』
「あ……ははっ! ありがとうございます! 必ず幸せにしてみせます!」
菜太の顔が満開した様な笑顔に包まれた。
しかし、その影で一部始終を見ていた輩が嫉妬心を持ち始めた。それがきっかけとなり、学園史上の大事件に巻き込まれる事を2人は知る由もなかった。




