3月12日 異変(後編)
桜に触れた城坂と問井は強い妖力に包まれた。それと同時に足元が徐々に沈んでいくのが一目でわかった。
『な、なに……これ……? 沈んでる……?』
「………」
『き……さか……きさ……か……どうな……て……』
「………」
『きさか……?』
城坂は無言のまま、桜の木を見つめていた。地面に沈んでいるにも関わらず、無言で微動だにせず、振り向きもせず、ただジッと桜を見つめていた。
『ねぇ……返事して……おねがいだから……』
いつも強気の問井も寂しがる仔猫の様に問いかける。だが、城坂は返事どころか振り向きすらしなかった。
『このままじゃ……わたしらが肥やしに……なっちゃうよ……きさかぁ……』
それでも返事をしない城坂。もしかして、沈むよりも先に魂を吸い取られてしまったのではないか……そう考えていた時だった。
「ぶはぁっ!! はぁはぁ……とんでもないモノを見てしまったぜ……」
『き、きさか……?』
城坂が問井の方を振り向く。
「んぉっ……? 問井、どうした? 涙目になってるぞ?」
『もぅ! ばかっ……! 心配して損したわ……! あと泣いてないんだから……!』
「ツンデレか? 可愛いとこあんじゃんか?」
『ば、ばかっ……//// ていうか……そんな事言ってる場合じゃ……」
「大丈夫だ。このまま、先に進もう」
『えっ……?』
突然の一言に唖然とする問井。もちろん、ちゃんとした理由があるのだろうが、城坂はまだ口にしなかった。
『で、でも……このままじゃ……肥やしに……』
「安心しろ、肥やしにはならないさ。解決策がわかったからな!」
『か、解決策……? なんで……わかったのよ……?』
きょとんと首を傾げる問井はその策を聞くが……
「今は教えられない……これは部外者には漏らせない事実だからな……」
『ぶ、部外者って……そんな事言ったら……わたしたちだって、部外者でしょ……?』
城坂は首を横に振った。
「この事実を知ってしまった俺はもう部外者じゃない……内通者と同じだ」
『じゃぁ……わたしも……内通者扱いなの……?』
問井の手が震え始める。その時、城坂が手を差し伸べた。
「お前は初めから内通者だろ? この怪奇現象を解決する為に必死に頑張ってきたんだ。内通者同然さ」
『きさか……』
「手が震えてるぞ? ほら、俺の手を握って、落ち着け?」
『ちょ、ちょっと待ってよ……!? な、なんで、手を握らないといけないのさぁ……!?////』
突然の発言にあたふたしてしまう問井。そんな問井に城坂が一言言った。
「俺たちは2人で1つだろ……? 2つに分かれたままで終われるかよ……」
その一言にドキッとする問井。そして、顔が赤くなる。
『わ、わかったわ……今回だけだよ……?』
「それでも構わないさっ!」
ニカッと歯を見せて、笑う城坂に五寸釘を打たれた問井。ほぼ吊り橋効果である。
『きさか……手ぇ……握ってくれる……?』
「お、おぅ……//// いざ言われると照れるな……////」
ギュッと2人は手を繋いだ。
その瞬間、2つの桜の妖力が強く繋がり合い、桜の花びらをピンクの蛍光色の様に光らせた。
それと同時に信仰者たちは行動が止まり、みんな倒れたという。
そして、城坂と問井は地面の中へ沈んでいった。




