3月12日 異変(前篇)
2つの桜の間のど真ん中に2人は少々疲れた顔をして座っていた。真反対側の傾斜が思ったより厳しく、登山をしている様な感覚だったからである。
「くっそ……なんで、校内で山登りもどきをしなくちゃいけないんだよ……!」
『わたしにキレられても、正直言って困るんだけど……? とりあえず、登ってはみたけど……怪しいモノは1つも無さそうに見えるわね……』
はぁ……っとため息をつきながら、少し脱力する様に体育座りをする。
「いやいや、諦めんなって言っただろ……? もう少し、頑張れよ……網を引いてる奴らにも申し訳ないじゃないか?」
『あぁ……あいつら? 正直、あんた以外のやつって鬱陶しくてから、敵わないのよねぇ……』
「今、さらっとあいつらに酷い事言ったなお前……」
『いいのよ……表向きが綺麗な副委員長として、わたしはこうやって生きてんだから……アイドルだとかファンだとか、わたしの知ったっちゃないわ……』
問井の物凄いネガティブ発言に城坂は驚いた。学園のアイドルはそんな深い悩みを抱えていたのかと……。
――その時、問井が立ち上がった。
問井は自ら、問井側(校舎を正面にすると左側)にある桜に近づいていった。
『はぁっ……学園のアイドルとか無くなればいいのに……』
「お、おぃっ!? 問井!? 桜に近づくなっ!!」
だが、時既に遅く、問井の手は桜に触れていた。
『っ……!! い、委員ちょ……きさ……かぁ……』
「問井っ! しっかりしろ!!」
問井の手を取ろうとする城坂。しかし、強い妖力がその手を弾いた。
「ぐぁああっ!!? な、何なんだよ、一体……」
『さくら……さわ……て……おねが……ぃ……』
「な、何を言ってんだよ!? 触ったら、養分にされてしまうんだぞ!? みんなの希望を消してしまうつもりか!!?」
『おねが……さわっ……てぇ……』
問井の目からは涙が流れていた。――このままでは問井は助けられない。俺も触れれば、助けられるのか?
頭の中で悩みながらも、決断は既に済ませていた。
「わかったよ……待ってろよ! すぐに行くからな!」
城坂は反対側の桜の木へ移動し、ゆっくりと木肌へ触れた。
『あり……がと……きさか……』




