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2つの桜が繋がる時  作者: 犬鳴 椛子
卒業準備
20/50

3月12日 卒業式

 ――早朝5時30分――


 この日、卒業式の担当者は学級委員長の城坂きさかと副委員長の問井といを朝早く、誰もいない体育館前に呼び出した。2人とも眠たそうにしていた。

 それもそのはずで今日は土曜日だ。なお、憂鬱な気分で2人は学校へ登校しただろうが、担当者はそんな事は全くお構いなしに2人へ指示を出した。


 指示の内容は城坂が「3年生への送る言葉」を語り、問井は「出し物の司会」との事だ。まぁ、確かにどっちも必要な事だ……

 しかし、それを当日になってから、教える担当者とはいかがなものか……


「はぁ~、ったく……担当も無茶言うもんだな……」

『仕方ないって……いつも鈍臭いからさぁ? ふぁあ……ねむたぁ~……』

「無理して、ここに来たからな。俺も眠くて眠くて、しょうがない……けど、まっ、やる事はやらないとな……」

『あんたがそんな真面目なとこを見せるなんて、珍しいじゃない……? そんな所見るのは投票以来かしらね?』


 ニヤリとしながら、問井は城坂をからかう。


「馬鹿にしやがって~……こう見えても、遅刻と欠席は1回もしてないんだからな? 成績はまぁ……まぁまぁ……な……? うん……」

『へぇ~……学級委員長ってだけはあるのね……少し、見直したかも……』


 感心したのか、問井が呟きながらもデレた。が、城坂には伝わってなかった。


「はっはっはっ! きみも見習いたまえ! 副委員長!」

『ち、調子に乗んな! このバカ学級委員長がき!』


じゃれ合う2人に今日最初の生徒が現れた。卒業式の準備をする為に呼び出させた1年生徒だった。

 というより、何故、当日に卒業式の準備が全然出来ていないのかが不可解極まりない。


「おはよう、きみは準備スタッフだね? よろしくね」

『とりあえず、準備しちゃいましょう? 後で生徒スタッフが集まるだろうし?』

「そうだね~、じゃぁ始めよっか! 卒業生の為のバージンロードを!」

『普通に通路でいいでしょ? 結婚式じゃあるまいし……さっ、まだ3人だけど頑張りましょ!』


 城坂と問井と1年生徒は体育館にグリーンのシートを敷いていった。その間に準備係の生徒が徐々に集まっていき、卒業式のスタンバイもあっという間に進んだ。



――朝8時15分――


「はぁ~……出来たなぁ~! みんな、お疲れさん!」

『実に爽やかな気分だわ……! これで卒業生を心置きなく、向かい入れられるわね!』

「開始時間は9時だけど……俺たちは30分で一旦、教室にいけないから、少し休んだら、各自、教室へ戻るように!」

『けど、疲れたわぁ……うちらはもう待機で良くない……?』

「副委員長が情けないぞ? まぁ、俺たちは朝早かったし、担当に許可もらえるだろう。ちょっと聞いてくるな?」


城坂は準備担当に休憩の許可を貰いに行った。


『何よあいつ……たまには気が利くじゃないの……それにしても……卒業式かぁ……うちも来年はここで座るのかしらね……?』



--その時だった、辺りが薄暗くなり、問井に突然の寒気が襲った。

それはゾクゾクと背筋が凍る様な強い寒気だった。


『ひっ……!? な、何……!? き、急に寒くなって……』

「副委員長! 大丈夫か!?」


 準備担当と会話をしていた城坂が走って、問井の元へ戻ってきた。


『だ、大丈夫じゃ……ないかも……何が起こったの!?』

「わ、分からねぇけど……普通じゃない事は確実だな……」

『そういえば、準備担当はどうなったのよ……?』

「あぁ……よく知らんが、[時が来た……2つの桜……キングオブブロッサムが呼んでいる……]とか言い出して、俺を押し退けて、外へ歩き出したんだ……」

『そういや、あいつって……1組の担任じゃないっけ? この学校の全学年の1組はみんなおかしいって噂されてるし……』

「どうやら、今日はその親玉が目を覚ましたらしいな……副委員長! 携帯持ってるよな!? 二手に分かれて、RHINEらいん使って、状況を報告し合おう!」

『ら、RHINE!? 電池食うわよあれ……』

「ったく……準備が悪いな……」


 城坂はポケットから大型充電器を取り出し、問井に渡した。


『えっ……? こ、これは学級委員長の……』

「俺は予備を持ってるから、心配すんな! それは充電切れでも5回分は充電できる優れものだ。備えあればなんとやらだろ? 俺はもう1つ持ってるから、持っていけ」


 少々、強引だが、問井は割と素直に受け取った。


『あ、ありがと……じゃぁ、うちは桜の方へ探索しに行くわ……!』

「じゃぁ、俺は職員室と教室全部を調べてみるから、頼むよ!」

『任せて! あっ、備えあればだったわね? 小銭あるかしら?』

「はっ? 一応、1円玉から500円玉まであるが……なんで、必要なんだ……?」

『いいから! 後でちゃんと返すから! 無くさなかったら……』


 問井は最後の一言を小声で呟いた。


「何か言ったか……?」

『な、何も言ってないわよ!? と、とにかく、お願い!』

「仕方ないな……ほら、1円、5円、10円、50円、100円、500円な……?」


 城坂は財布から小銭を各1枚ずつ取り出して、問井に手渡す。


『ほんと助かるわぁ~。そっちは任せるよ!』


 一応、問井は感謝の言葉っぽい事を言うと急いで、桜の方へ向かっていった。


「あっ、おいっ!? 仕方ないな……ぼったくりじゃない事を信じるか……」


 しぶしぶだが、前向きな思考でお金の事を一旦、収めた。


「さて、俺も教室へ向かうかな……」




 不穏の空気に包まれた土曜日の日本市立二桜高等学校に膨大な妖気が彼らを包み込もうとしていた。

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