第7話:恋人!?ライバル!?
無事、瑠奈を学校に案内できた。その後、瑠奈をみんなに紹介するが、その時に……
「小学5年の宇佐美 瑠奈だ。みんなとは違う学区だが、よろしく頼む」
と、普通の自己紹介をしたと思った。しかし、そんな甘い考えを持った俺が間違いだった。
「ちなみにそこの椿野 晃とは恋人同士なのでその辺もよろしく」
すごい爆弾を投下してきた。
お〜い、瑠奈〜。そんな、嘘をついちゃ、メッだよ〜。
すごい爆弾を投下したせいか、俺の思考も爆弾に攻撃され、おかしくなってしまった。
「「「「……………」」」」
一瞬みんなの時間が止まった後、
「「「「えええっっーーーーー」」」」
みんなで一斉に声を出した。
いいねー、みんな息が合ってる。野球のチームプレイでメンバーの息が合ってるって大事だからね。
……って、こんな呑気にしてる場合じゃない!! みんなに説明しなきゃ!
「みんな、違うんだ! 瑠奈とはそんな関係じゃない!」
「「「「瑠奈ぁ!!!」」」」
ヤベェ……、何か知らないけど、さらにみんなに誤解を与えたみたいだ……。
どうしよう……。どうすれば、みんな分かってくれるんだ……。
と、考えていると……
「なんや、晃。恋人がおるなら、おると言ってくれや〜」
たっちゃんがからかい気味に話して来た。
なので、違うと言おうとした時に、
「晃、僕は日和さんが恋人だと思っていたんですが、すでに宇佐美さんという恋人がいましたんですね……。晃、お幸せに」
翔太も訳の分からないことを言いながら、話しかけて来た。って、翔太は俺と千夏のことをそんな風に見てたのかよ。
しかーし! 断じて違うぞ! 俺と千夏は恋人なんかじゃない!
……だから、こんな事してる場合じゃないんだ! みんなにちゃんと説明しないと!
そんなこんなで俺と瑠奈の関係を説明するのに30分くらいの時間を要した。
まあ、みんな最後にはちゃんと納得してくれたからよかったんだけど。
その後、すぐに練習を開始した。
練習後……
「あきちゃーん!」
練習が終わった後、千夏が声を掛けて来た。
「ん? 千夏、練習見に来てたのか?」
「うん、たまたま学校の近く通って、今日練習の日だって思い出したから、見に来ちゃった」
千夏はこうして、時々練習を見学しに来るのだ。
「そっか、じゃあ、一緒に帰るか?」
「うん!」
千夏と一緒に帰ろうとしたのだが……
「晃ぁ!」
大声で瑠奈が俺を呼びながら近づいてきた。
「どうした、瑠奈?」
「ああ、行きにここまでの道のり案内してもらったが、まだうる覚えだから帰りも案内頼めるか?」
ああ、そういえば行きに案内したっけな。まあ、まだ一回しか通ってない道だからな。しっかりと道順なんて覚えてないか。
「おう、分かった。待ち合わせた場所まででいいか?」
「それで十分だ。お願いする」
瑠奈と話していたら……
チョンチョン
と、俺の服の裾を千夏が引っ張ってきたので、振り返ると
「あきちゃん……、随分と仲良さそうに話してるけど……、その子は誰かな〜〜?」
そこには笑顔の般若がいた。
「えっ……、えっと……、千夏さん? どうかなさいましたか?」
あまりの恐怖に俺は敬語になってしまった。
「だ・か・ら・そ・の・こ・は・だ・れ!?」
もっと、恐くなったよ。マジでちびりそう……。
「あ、ああ、こいつは……」
かなり、ビビリながらも事情を説明しようとしたら……
「私は晃の恋人だ」
瑠奈が本日2度目の爆弾を投下を開始した。
「……………」
みんなと同じように千夏の時間が一瞬止まった後、
「えええっっーーーーー」
みんなと同じようなリアクションをした。
「ねぇ!! あきちゃんどういうことなの!! 恋人ってどういうこと!?!?」
大声を叫び、そして、俺の首を絞めながら真意を問いただしてきた。
「ぐっ、ぐるじい。ぐるじいでず。ぢなづざん……」
「あきちゃん! あたしは遊びだったの!?」
千夏は混乱しているのか、訳の分からないことを言い始めた。
それにしても……。マジキツイデス、チナツサン。
「まあまあ、落ち着きたまえ」
さすがにやばいと思ったのか瑠奈が千夏を止めた。
「すまん、すまん。恋人というのは私の冗談だ」
「えっ……。冗談……?」
千夏は俺の首から手を離しながら呟いた。
「そう、冗談だ」
「ったく、恋人なんてあるわけないだろ。冗談を真に受けるな」
俺は首をさすりながら言った。
「うっ、う〜〜〜。だって、だって〜〜」
「第一、俺のことが好きな奴なんているわけないだろ」
「「…………」」
千夏と瑠奈は黙って唖然とした。
「ん? どうした、2人とも?」
「「はぁ〜〜」」
今度はため息をつき始めた。
何だ、何だ? 2人ともどうしちゃったんだ?
「もう、いいよ……。それでこの子とは恋人じゃないんだね?」
「ああ」
「じゃあ、紹介してよ」
「そうだな。こいつは宇佐美 瑠奈。この前、偶然に会って野球やってるってことだから、今日からチームに入ってもらったんだ」
「へぇー、そうだったんだ」
「ああ、んで、瑠奈。俺と今話してるのが、幼馴染の日和 千夏だ」
「うむ。日和さん。よろしく、私のことは瑠奈でいい」
「うん。私も千夏でいいよ。瑠奈さん。」
2人とも握手をしながら、お互い挨拶をした。
「あっ、あと、ちょっとこっちに来てくれないか?」
と、瑠奈は千夏の手をとり、晃から離れていった。
「ん? どうしたんだ、あいつら?」
晃は何にも分からなそうに呟いた。
晃から離れた2人は……
「どうしたの、瑠奈さん?」
「ああ、単刀直入に聞く。千夏は晃のことがすきなのか?」
「えっ! あの……、えっと……」
千夏は顔を真っ赤にしながら慌てている。
「どうなんだ?」
「えっと……。うん、好きだよ」
相変わらず、真っ赤な顔で返事をした。
「そうか。やはりな……」
瑠奈は納得しながら頷いた。
「瑠奈さんはどうなの?」
逆に今度は千夏が聞いてきた。
「うっ……。私か、私は……」
瑠奈は少しの間、考えこう答えてきた。
「私も好きだな」
「そっかぁ」
千夏は寂しそうに笑いながら返事をした。
そんな顔を見た瑠奈が、
「千夏、今日から私たちは友達兼ライバルだ」
と、言ってきた。
「えっ?」
いきなりのことでついていけない千夏は返事ができなかった。
「私と千夏は晃のことが好きだけど、互いにその気持ちを相手に譲ることができない。けど、それ以外のことでは君とたくさん仲良くなりたい。だから、友達兼ライバルだ。なっ?」
瑠奈は笑顔で千夏に同意を求めてくる。
その提案に千夏は、
「うん! そうだね!」
瑠奈と同じように笑顔で答えた。
こうして、2人は友達兼ライバルの最高の親友同士となった。