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第5話:9人目!?

晃が空き地に到着した。


「う〜ん……。この空き地から音がしたよな……?」


俺が空き地の周りを探していると……。


「えっ……」


手にグローブをつけ、壁に向かってボールを投げている少女を見つけた。


ビュッ! スパァーン!


腰まである綺麗な黒い髪をなびかせ、鋭い腕の振りでボールを投げる少女の姿は本当に綺麗だと思った。


「すごい……」


俺がそう声を出すと、少女は俺の声に気づいたのかボールを投げるのをやめてこちらを向き、声を掛けてきた。


「何か用か?」


「えっ……! あっ、あの、その……」


急に声を掛けられたので、俺は何を答えて言いのわからなかった。


「もう1度言う。何か用か?」


少女は再度聞いてきた。


「あ、ああ。ボールの音がしてここに来てみたら、君が綺麗なフォームでボールを投げていたから、おもわず見惚れていたんだ」


少女の意志の強そうな瞳で見られたためか、自分の心の中が全部見られてしまうと思ったので、嘘もつけなく正直に答えてしまった。


「むっ……、そ、そうか」


少女は頬を赤く染め、黙ってしまった。

今度は少女が答えられなくなってしまった。


そんな少女に俺は聞く。


「野球やってるのか?」


「ああ、やっている……というかお遊び程度だ」


元の頬の色に戻った少女はそう答えた。


「遊び? チームには入ってないのか?」


「入っていない。近くにチームはないし、仮にあったとしても……」


「しても?」


少女は寂しい顔をしながら、続きを答えた。


「私みたいな女子をチームに入れることはない……」


「…………」


「前に遠くにあるチームに入りたいとお願いしに言ったのだが、チームの監督にお前みたいな女に野球ができるかと言われ、断られてしまった」


無理やり笑顔を作り、俺に話してくる。

俺は言葉を失うと同時に怒りが湧き上がった。

なぜ、こんなにも野球が好きな子が女というだけで野球ができなくなってしまうのか?

俺はこの子に何かしてやれないのか?


「それに私みたいな下手なやつが野球をやっててもしょうがないのかもな……」


俺はその言葉に過敏に反応した。


「そんなことない。君は全然下手じゃない」


「慰めはいい……」


「慰めなんかじゃない!」


「っ!!」


「あっ……、ごめん……」


おもわず大声を出してしまった。でも、さっき遠くから彼女のピッチングを見たけど、本当に彼女はすごい実力を持っていると思う。だから、俺は彼女にこんな提案をした。


「じゃあ、俺と勝負しないか?」


「……勝負?」


少女は首を横に傾けながら聞き返してきた。


「ああ、俺と君で一打席勝負するんだ。ちなみに君がピッチャーで俺がバッター」


「し、しかし……」


「だあぁぁーーー、うだうだ言ってないで勝負!」


「わ、わかった……」


有無を言わさず、勝負させる。







俺は地面に落ちていた少女のバットを拾い左打席で構える。


「よーし! いつでもいいぞ!」


「わかった」


「本気で勝負しろよ」


「ああ、勝負する以上、本気でやらせてもらう」


さぁーて、さっき見た限りでは結構早いストレートを投げてたよな。

まあ、でも1球目は様子を見るか。

少女はノーワインドアップから投げてきた。


「打ってみろ!」


「おおっ!!」


俺は1球見逃したけど、とても速いストレートが内角低めギリギリにきた。

な、なんていうか打てない!? こんな速いとは聞いてないよ!

で、でも、なんとか当てないとな。


「や、やばいな。これ……」


「どうした、少年? 怖気づいたか?」


余裕の発言をしてくる。さっきまでうじうじしてたくせに。


「少年って……。同い年くらいに見えるのに」


「さあ、次いくぞ!」


ビュッ!


次は外角低目か! でも、打てる!


カキィン!!


ボールはバットには当たったが、ボールはキャッチャー方向に飛んでいった。

つまり、ファールだったのだ。


「くっそー、タイミングはばっちりだったのに!」


少女は驚いた顔をしていた。


「今の球を当てたのか? 私にとっては最高のボールだったのに」


さあ、次の球は何だ? 内角? 外角? それとも、1球外してくるか?


「さあ、次来い!」


「くっ!」


少女はノーワインドアップから3球目を投げた!


ビュッ!


やっぱり、1球外してきたか!

晃は見逃そうとする。

しかし、球は晃の考えを嘲笑うかのようにボールゾーンからストライクゾーンに入ってきた。


「えっ!」


晃は球を見逃した。結果三振。

まったく、バットが振れなかった。それもそのはず、ストレートと同じスピードで変化してきたのだから。


「な、なんだ、今のボールは?」


「高速スライダーだ」


少女が晃の疑問に答える。


「こ、高速スライダー……」


「そうだ」


「……ぅぅぅぅ……」


「ん? どうかしたか?」


晃はうつむいたまま、唸っている。それを不思議に思った、少女は晃の顔を覗き込もうとした瞬間……


「すっっっげぇぇーーーーーーー!!!」


いきなり大声を上げた。


「きゃあ!」


少女はびっくりしてしまい、尻餅もついてしまった。

それをまったく気にしない晃は少女に話し掛ける。


「すごいよ、君!! あんなスライダーが投げれるなんて! しかも、ストレートもなかなかいい 

 し!」


「えっ、あ、ありがとう……」


急にたくさんほめられた少女は顔を真っ赤にしながらお礼を言った。


(こ、こんな風に言われたのは初めてだ。しかも、こんなに私のことを見てくれる人も始めてだし……。私、この男の子と一緒に野球がやってみたい……)


「そうだ! 俺と一緒に野球やろうぜ!」


「えっ!」


俺はおもわず、そう声を掛けていた。この少女と一緒に野球をやることが俺が唯一少女にしてやれることだと思ったから。


「俺の入っているチーム、夕陽丘バスターズに入ってくれ!」


「…………」


(私はこの男の子と一緒に野球をすれば私は変われる……。それに私は彼の事が……。迷うことはない!)


「ああ、一緒にやろう!」


少女の笑顔は本当に輝いていた。


「よっしゃー! ……って、まだお互いの紹介もしてなかったな……。俺は晃、椿野 晃。君は?」


「私は宇佐美うさみ 瑠奈るなだ」


「これからよろしくな! 瑠奈!」


「ああっ! 晃!」







こうして夕陽丘バスターズに9人目のメンバーが集まった……






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