第4話:あたしが入ろうか?
キィーンコォーンカァーンコーン
「よーしっ! 今日の授業はここまで。そのまま、SHRをやるぞ。
……連絡事項なし。気を付けて帰れよ。それじゃあ、解散!」
担任の先生が号令を掛けて、今日の学校が終わった。
「あーっ! やっと、終わったー!」
晃は体を伸ばしながら、リラックスをした。
「あきちゃん、帰ろ〜」
千夏が晃の席に近づきながら、声を掛ける。
「そうだな……。翔太、帰ろうぜ」
「はい。わかりました」
そうして、すぐに帰りの支度を始めた。
「あっ! あきちゃん、今日は用事があって途中までしか帰れないんだ」
「うん? そうなのか? それじゃあ、しかたないな」
「うん、ごめんね」
胸の前で手を合わせながら、かわいく謝ってきた。
「まあ、気にするな」
千夏のかわいいポーズをまったく気にしない晃であった。
(うっ〜〜、こんなかわいいポーズをしてるのに何で気にしないのよ!)
憐れな千夏であった。
「晃、日和さん。帰り支度が終わりましたので、行きましょう」
そうしている内に帰りの支度を終えた、翔太が声を掛けてきた。
3人で下駄箱を出て、校門前に差しかかった時、校門前には翔太の父さんがいた。
「ハーハッハッ! 3人とも今日も1日お疲れ!」
「あれ? 父さんどうしたんですか?」
当然の疑問だ。監督はまだ仕事の時間なのに小学校にいるのだから。
「うむ、今日は仕事が早く終わってな、それでたまには家族で外食をしようと思ってな!」
なんとまあ、いい親父さんじゃないか。家族のことを第一に考える……泣けるねぇ〜〜。
「わかりました。……晃、日和さん。申し訳ありませんが僕はここで……」
困った顔をしながら、俺たちに言ってきた。
「いや、気にするな。家族でおもいっきり楽しんで来い!」
「そうだよ。家族水入らずってね」
俺と千夏は笑顔で翔太に言った。
「ありがとうございます。では、ここでさようなら。晃、日和さん」
さわやかに挨拶をして親父さんと帰っていった。
「あたし達も帰ろっか」
(やった〜〜。あきちゃんと2人っきり!)
「おうっ!」
俺と千夏は下校の真っ最中。
「まだ、チームの人数が集まってないんだよね?」
「はぁ〜、そうなんだよな……。あと1人なんだけど……。そのあと1人が集まらないんだ」
そう、新学年が始まってから3週間。あと1人のメンバーがまったく集まらない。
深刻な問題だ。夏の大会まで、あと2ヶ月ちょっと、今年こそは大会に出たい。
「あきちゃん……。なんだったら、あたしが……入ろうか?」
(チームに入れば、あきちゃんと一緒にいる時間が増える!)
「えっ!? いやいや、お前野球できないだろ」
千夏の奴、なに考えてるんだ? まったく、野球できないのに?
あっ、そうか! 野球に興味をもったんだな!
うんうん、いい事だ。
「そうか! 千夏、やっと野球に興味をもって、チームに入ろうって決めたんだな!」
「えっ!! いや……そうじゃないんだけど……」
(う〜、あきちゃんと一緒にいたいから入りたいとは言えないよ〜)
「ありゃ、違うのか? じゃあ、何で?」
「えっ、え〜とね……。あ〜っと……、う〜んと……。…………」
「うん? どうした?」
何だ? 千夏、急に黙ったりして。
「や、やっぱ、チームに入るのやめるね。あっ、あたし、ここまでだから!」
「あっ、ああ」
千夏はチームに入るのをやめると言い、去っていこうとする。
「お、おい、千夏」
「バイバイ〜。あきちゃん!」
さっそうと帰っていった。
「何なんだ、あいつ……」
よくわからない千夏であった。
千夏と別れた俺はメンバー集めについて再び考えていた。
「うーん……。ホント、あと1人なんだよな……」
と、悩んでいて、空き地を通ろうとした時……
スパーン!
何か音が聞こえてきた。
「うん……この音は?」
音は空き地の方からする。
「……行ってみるか」
俺は空き地へと向かった。