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ケース6~生意気少年~



 公園を散歩していると、どこからか唐突に少年が降って来た。

 思わず受け止めるも、重さに負けて尻もちをついてしまう。



「……ったた。

 あ。君、大丈夫?痛いところとかない?」

「ふん、余計な事を……。

 この程度、我一人でも対処できたわ。」



 そう言うと、少年はスッと立ちあがってこちらを向いた。

 って、うわぁぁぁぁ!やらかした!!私、やらかした!!



 生意気なのはまだいい。子供が生意気なのは普通だから許す。

 無駄に偉そうなしゃべり方もテレビの影響って事でギリギリ許容しよう。

 だけどっ……だけど、その顔はダメだ!!

 サラッサラの栗色の髪、透き通るような白い肌、長い睫にキリっとした大きな瞳、すっと伸びた鼻筋に形の良いツヤのある唇。



 そう、彼はとんでもなく美少年だった。

 それこそファンタジー世界における美の代表エルフと肩を並べる程に。



 自分から非凡に関わってどうする、私!!

 ……ま、まぁ、でも、ここで去っちゃえば問題ないよね?



「大丈夫ならいいのよ、おほほ。じゃあ、私はこれで……。」

「待て。」



 ひっ!何か呼び止められた!



「必要無かったとは言え、仮にも助けられた身としては礼をせねばなるまい。」



 やーっ!やめてよして関わらないでビビデバビデブー!!



 そのあとは、強引に彼の家に引っ張って行かれた。

 これ、君が少年じゃなかったら犯罪だと思いますよ!?





「ホグツ!ホグツはおらんか!ホグツ!

 ………チッ、肝心な時に役に立たん奴よ。」



 少年は吐き捨てるように言うと、リビングのやたら豪華なソファに腰を下ろした。

 それから、優雅な仕草で足を組んで、立ちっぱなしの私を横目で見ながら言う。



「さて、と。まずは名乗らせて貰おう。

 我はワタリュスカル王国、第一王子リューキッドだ。

 この国では渡里竜輝の名で通っている。」



 どこだよ、ワタリュスカル!最近の子のごっこ遊び怖っ!

 ……とりあえず、私は大人として彼の話に付き合ってあげるべきなのかな。



「では、本題に入ろう。我を助けた礼にお前は何を望む?」

「……いいえ。私は何も望みません、殿下。」

「何もという事は無いだろう。

 金か?宝石か?それとも地位か?」

「そんなもの、余計貰えませんっ。

 敢えて言うなら、感謝の言葉だけ頂ければそれで充分です。」

「……………お前、本気か?」

「本気です。

 別に私、見返りが欲しくて助けたわけじゃないですから。」



 少年の訝しがるような眼差しを私はまっすぐに見つめ返した。

 ふと少年が面白そうな笑みを浮かべて口を開こうとしたその時、傍に置いてあった大きな鏡が虹色に輝いて、中から一人の男性が現れる。



 って、えええええええ!?ちょっ、何ソレ!?

 男性は私のことをチラリとだけ見やると、すぐに少年に視線を向けて問いかけた。



「殿下。この女性は?」

「妃候補だ。」

「はぁ!?」



 さらりと少年が口にした言葉に驚愕して素っ頓狂な声を出してしまう。



「……どうやら話が通っていらっしゃらないようですが、ご説明は?」

「まだだ。我も今決めたばかり故な。」

「そうですか。それでは僭越ながら私からご説明させていただきます。

 そうですね。まず、我々はこの世界とは違う次元に位置する別世界に存在する者です。」



 わぁい!ついに地球どころか世界すら飛び越えたよ!次元の壁仕事しろーッ!!



 その後も説明は続き、王国は大陸で一番大きな国だとか、魔法や亜人が存在するファンタジーな世界だとか、聞きたくもない事を色々聞かされてしまいました。

 で、王族は見聞を広めるために地球へ1年間留学的な事をさせられるらしい。

 その際、こちらの女性を見染めて連れ帰り妃にすることも珍しくないようで、私もご多分に漏れず殿下に気に入られてしまったんですってよ。ナンテコッタ。

 しかも、殿下は「留学中は子供の姿で」って決まりがあるから魔法で変身してるだけで、本当は17歳とのこと。

 元の姿に戻ってくれやがった殿下は……死にたくなるくらいの美形でございました。



 少年の正体を知った私は、お断りの言葉を叫びながらダッシュで自宅まで逃げ帰ったんだけど……。

 その三十分後、なぜかアッサリ家をつきとめられた。

 へー、追跡魔法ですか。そうですか。ガッデム!





 以後、殿下は留学期間中に説得してみせるとか何とか言って、頻繁に私を訪ねて来るようになっちゃいました。

 ひーん!異世界なんか嫌いよ、ビビデバビデブー!!






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