ケース2~一匹狼な同級生~
ある晴れた日曜日の夕方。
自宅近くのビルの建築現場の前の道を通りかかった時に、そこから不可思議な音がしたのでついと目をやった。
そこにはクラスメイトの田崎がいた。
彼は寡黙でどこか影があって、適度にイケメンなのでそれなりに女子にモテる男だ。
あんな場所で何をしているのかと思っていると、現場にあった鉄パイプの内の一本がひとりでに浮かんで、彼の手に収まる。
そして、次の瞬間。彼はその場から跡形も無く消え去った。
って、おいおいおい、あれってまさか超能r…。
いや、平凡な人生を望むならこれ以上考えるべきじゃない。スルーしよう。
そんな非現実的な事、あるわけ無いもの。きっと疲れて白昼夢でも見たんだ。
消える一瞬にこっちを見たような気がしたとかそんなの錯覚、錯覚!
しかし、そんな努力もむなしく翌日の月曜日に田崎から屋上に呼び出された。
しぶしぶ屋上に向かうと、田崎は腕を組んでフェンスに寄りかかっていた。
チラッと確認してみたが、どうやら二人きりのようだ。
彼は自嘲するような歪んだ笑みを浮かべて、静かに話しかけて来る。
「…まさか、クラスメイトにバレるなんてな。」
「はぁ。」
「見てたんだろ?昨日、俺が能力を使うところを。」
あーぁ、言っちゃった。
はっきり能力って言っちゃったよ、この人。
「はぁ、まぁ。」
「なんだよ、ハッキリしねぇな。」
微妙に眉間に皺を寄せて彼は小首を傾げた。
イラっとした。
「…田崎君がスルーさえしてくれたら夢でも何でも、とにかく見てない方向で自己処理する予定だったんだけどね。」
「は?」
「私は平凡に生きたいの。そういう非常識に関わらせないで欲しいの。
分かる?」
「…いや、え?」
いきなり逆ギレしだした私に、田崎は困惑しているようだ。
相手がろくに言い返して来ないのを良いことに、私はさらに言葉を重ねる。
「しかも、皆のいるところで堂々と呼び出しなんてするから、きっと一部女子の反感を買ったよ。
どうしてくれるの?」
「え、と、悪ぃ…っじゃなくて!」
あ、もう持ち直しやがった。
「遠坂…。お前もっとこう、驚いたりとか何とか無いのかよ?」
「そりゃあ、驚いたわよ。現実に超能力が存在したのよ?
驚くなって方が無理でしょ。」
「じゃあ、何でそんな普通なんだよ。
怖いとか何とか思わないのか?」
「はぁー?何それ、意味分かんない。何でそうなるわけ?」
「えっ…。あ…。そ、そうか。
あぁ、いや、別に、それならいいんだ。うん。」
田崎はそう言うと、自分の口に手を当ててあらぬ方向を見た。
何なの??
「…とにかく、私の人生の目標は平凡なんだから。
昨日は何も見なかったって事で、これから先も私に一切関わらないでちょうだい。
いい?」
この言葉を聞いた田崎は微妙に渋い顔になった。
「何よ。何か文句あるの。」
「同じクラスなんだから、一切関わらないっつーのは難しいんじゃねぇの。」
「…あぁ、そうね。別に単なるクラスメイトとしての会話なら問題ないわ。」
「ふーん。分かった。」
それ以後、何故か田崎はよく私に話しかけて来るようになった。
しかも他の人間には滅多に見せない笑顔で、だ。
約束が違うと文句を言ったら「クラスメイトとしてなら話して良いと言ったのは遠坂だろう。」と言い返された。
咄嗟に言い淀んだ私に勝利の笑みを浮かべ、彼は今日もまた嬉々として話しかけてくるのだった。
くっそー、いじめが起こったらアンタのせいだかんね!




