第七幕 ―謎の少女―
少女は1人の倒れている兵士の手を踏みつけていた
ぼきぼきと骨の砕ける音がする。
「質問に答えろ。」
少女はキツイ言葉で兵士に問うた
だが、兵士は頑なに口を噤んだ。
少女は兵士の手を力強く踏みつけた。
ボキボキと骨の折れる音がする。
「早く言わないとお前の手は使い物にならなくなるぞ。」
少女はフッと悪魔のような笑みで言った。
コウハは激情のまま、片手鎌を振りかざしていた。
真っ暗な通路の所々にあるろうそくの明かりが無ければ簡単に迷っているだろうな、とどこか他人事のように思いながら、トーヤは薄暗い隠し通路を走っていた。
コウハとルナはどこへ行ったのだろうと考えながら走っていると前方に見慣れた少女の姿が……
「ルナ!」
「トーヤ?」
思わずトーヤはルナを抱きしめた。
「無事で良かった!」
「ト、トーヤ。 それよりコウハが……」
ルナは視線だけで通路の奥を示した。
「先に行っちゃって、はぐれたの。 見たところここは一本道だし、このままえいけば会えると思ったんだけど……」
そこでルナは口をつぐんだ
ひとりで心細かったのだろう。
それに気づいたのか気付かなかったのか、トーヤはルナに無邪気な笑顔で元気づけるように言った。
「大丈夫だよルナ。今はおれが付いているから。 とっととコウハ探しちゃおう」
その言葉にルナは大きくうなづいた。
風を切る音と共に空を切る感触。
コウハの振りかざした鎌は少女には当たらなかった。
彼女が瞬時に間合いを取ったからだ。
「新手か。」
少女はつぶやくともう一歩間合いを取ると、ドレスのすそをめくり、太ももに取り付けてあるホルダーから、ナイフを取り出し、コウハに投げた。
その間わずか2秒。
その驚異的なはやさに、コウハはそれをよけることができなかった。
……が、
トスッ
ナイフが当たった場所はコウハのカマの柄の部分。
助かったと思った瞬間、コウハは青ざめた。
―――“外した”んじゃあない。わざと“当てた”んだ。
そう。
少女は自らの力を見せつけるため、わざとコウハではなく、彼の鎌の柄に当てた。
力に差があることをみせ、こちらの戦意をそごうとしているのか……
わざわざ、的が細くて当てにくい場所を狙って。
そう考えている間に、第二撃が飛んできた。
今度はコウハの髪をかすって。
ぱらぱらと数ミリ程度の髪の毛が床に落ち、コウハの頬を赤い液体が濡らす。
ナイフは彼の頬をカスってはいなかったのに……
血が、地面に落ちた時、剣圧だけで切られたと悟った。
雫が落ちる音が脳裏にいやに大きく響いた気がした。