第四幕 ―旅立ち―
ルナが声をかけるその前に、トーヤは走りだしていた。
彼を追ってトーヤの家につくと、黒い鳥は玲の肩にとまっていた。
鳥の足に縛り付けてあった手紙をみて、アークは苦笑した。
「琳から、俺たちとお前にって」
『先日、僕の元に手紙が届いた。
すぐに、キャンセルの手紙が届いたが、どうせ姉さんが反対したんだろう?
少しは好きにさせてやら無いのか?
僕自身はかまわないが、トーヤは五月蝿いのではないか?
危険なのは分かるが、トーヤは恐らくその村で納まる器ではない。
トーヤの希望があれば、こちらに来てもかまわない。
まあ、それでも危険だなんだかんだというのならしかないが。
その時は手紙をこの人工精霊につけて飛ばしてくれ。
恐らく、許可しても保護者が付いてくるだろうから、部屋を余分に用意して待っている。』
まるで一部始終をみていたかのような文章にみんな苦笑した。
玲に関しては「どこかに隠れて、ずっとあたしたちのことを見ていたんじゃないでしょうね!?」と、手紙に当たっていた
「兄さん、琳さんもいいって言っているみたいだし…」
「仕方ないな。明日のあさから出発するといいよ」
そう言ってくしゃりと弟の頭を撫でた。
「……にしても、わざわざ人工精霊つかってまで返事だすなんて……」
玲は肩に止まっている鳥をつつきながら呟く
「来るなら早く来いって意思表示じゃないか?」
「ありえるわね」
アークの言葉に玲は、弟の性格を思い出しながら答えた
「あ、あの……」
二人の会話に疑問をもったルナが聞く
「人工精霊って何ですか?」
ルナの疑問に「この仔のことよ」と、鳥を指差して、玲は説明した
「まあ、文字通り、人工的に作った精霊のことよ。式神ともいうわ。使い魔とか、そういった類のものだと考えてくれていいわ。」
「空間が歪んで、そこから出てきたのは?」
「このこには空間転移の術をかけてあるからね」
簡単な説明にお礼をいうと、この人工精霊を扱う術は琳の十八番であることも話してくれた。
「これを扱う術士は少ないってきいたが、実物を見れるとは…」
コウハはしげしげと、とりをみて呟いた。
何でも、一般的には物語の中の存在として知られているらしい。
現にルナやトーヤも『自らの手で生み出した妖精を操る魔法使い』の話を幼きころから聞いていた。
「それより、玲さん! 琳さんもこういってくれていることだし、行ってもいいよね!?」
「玲、俺からも頼むよ。 俺もコイツは外に出して色々なことを学ばせてやった方がいいと思うんだ。」
「……はあ、もうあんた達には負けたわ。」
兄弟の説得に玲は頷いた。
「ただし、危険なことはしないようにね。兵士の人たちに迷惑をかけちゃだめよ。」
「わ、分かっているよ。」
かくして、彼等は帝都へ行くこととなった。
だが、このときトーヤは知らなかった。
まさか、ただただ兄のようにしたっていた人物に修行してもらいに行くこのことが、自分の運命の歯車を動かすことになるとは……
そして、十年前の大戦の秘密に触れることになるとは、気付くことはなかった。
いや、気付いていたとしてももはや手遅れだろう。
すべての運命は神様のレシピによって決定付けられていたのだから。