第二四幕 ―旅―
「いや、違うなトーヤ。」
セフィルは言った
「やっとお前は一人前になれたんだ。ここからお前は始まるんだ」
よく頑張ったな
セフィルは金色の髪を軽く撫でた
「へへへっ」
照れくさそうにトーヤは笑った。
「もう、ラメドの屋敷に戻りましょ」
ルナの言葉に一同は頷いた
一人二人とその場を去っていく
最後にセフィル一人が残った
「あなたは、本気を出せば僕たちにかてるはずだった。なのにこんなにあっさりと……あなたは僕たちの成長のために自ら悪役に回ったのですね」
答えるように柔らかな風が頬を撫でた。
よく、クリフトルはセフィルにしたように柔らかく……
「セフィ、何をしているんだ。帰るぞ」
フィアールの声が聞こえ、セフィルはもう一度名残惜しそうに振り向いてから、彼らのもとへ走った。
よほど疲れたのだろう。
屋敷につくなり、彼らはすぐに眠ってしまった。
明け方ようやく目を覚ましたら、サラが笑顔の下に恐ろしい怒りの表情を隠していた。
「ちゃんと汗と汚れを流してから休みなさい!部屋が汚れて臭くなるのは嫌よ!」
そうやってシャワー室に押し込んで、汗と汚れを落とした彼らを正座させ長々と説教をくらわせた。
やっと一段落したところでサラはトーヤたちに言った。
「お帰りなさい。」
その言葉に長い説教のせいで床に突っ伏していた面々は笑顔で答えた
「ただいま」
そして、クリフトルとの戦いから数日後、トーヤは荷物をまとめていた。
「トーヤ?どうしたんだ?」
セフィルの言葉にトーヤは笑顔で答えた
「旅に出ようと思うんだ!」
「旅?」
見るとルナも同じように荷物をまとめている。
「コウハはクリフトルとの戦いの後、レントさんに“もう教えることはない”って言われて、しばらく将来を考えたいって一旦村に戻っちゃったし、俺も何か探そうかなって思って」
「で、旅に出るわけか」
セフィルの言葉にトーヤは元気よく頷いた。
そんなトーヤにセフィルは小さくため息をついた。
こんな彼を止めることはできないだろう。
―――姉さんが聞いたらヒステリーを起こすな
心中呟いてみるが、それもまたおもしろそうだと思うのもまた事実。
「そうか、じゃあ行って来い!」
「はい!」
トーヤはルナの手を取ると二人で外へとびさしていった。
「さてさて」
―――姉さんたちへの言い訳はどうしようかな?
部屋へ戻り便箋を取り出すとセフィルは文章を考えた。
『大変そうですね』
後ろから聞こえる人型人工精霊ハクアの声にセフィルは苦笑した。
「ああ、そうだな。」
その時、一羽の伝書鳩がセフィルの部屋の窓をたたいた
『お手紙、みたいですね』
「ああ、ちょっととってくれないか?」
『はいはい』
ハクアは窓を開け、ハトの足から手紙をとった。
『主!見てください!』
渡された手紙を読むと、アークと玲が結婚したという報告と、二人の間に子供が生まれたという文章があった。
『幸せそうですね』
「ああ、そうだな」
さて、この手紙の返信としてトーヤのことを伝えるべきかしばらく隠しておくべきか?
セフィルはペンをいじりながら考えた。