第二三幕 ―決戦―
「行ってきます」
トーヤはラメドの屋敷の前でつぶやいた。
装備を整えて、愛用の剣を手に持って。
「トーヤ、大丈夫」
道中、ルナは心配そうにトーヤの顔を覗き込んだ。
「ああ、大丈夫……なのかな? 正直言うと、少し怖いのかもしれない。」
彼らしくない答えだ。
ルナはそんなトーヤに言う
「大丈夫よ。信じていれば勝てる。 トーヤだけじゃなくて、セフィルさんやフィアールさん」
「それに俺もいるしな!」
ルナの言葉の続きを言ったのはコウハだ。
「うん。そうだね」
トーヤはコウハの言葉にいつもの彼らしい笑みを浮かべた。
「……着いたぞ」
フィアールの言葉にトーヤはそこを見た。
何もない荒野。
それは10年前の大戦の凄絶さを物語っていた。
「……琳」
ぽつりとつぶやかれた声のほうを見るとそこには長い茶髪の青年―――クリフトルがいた
「答えは、もってきてくれた?」
クリフトルの言葉にセフィルは1歩2歩と彼に近づいた。
「セフィ!」
「セフィルさん」
仲間たちの声が聞こえないようにセフィルはゆっくりとクリフトルに近づく
フっとクリフトルが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
二人が両手を伸ばせば届く距離にまで二人が近づいたとき、クリフトルは右手を差し出した。
「さあ、おいで、琳」
セフィルはすっと目を細めると……
キィン!
気づいた時には二人は剣を抜き、刃越しに顔を見合わせていた。
セフィルが目を細め、剣を抜き……それに気が付いたクリフトルがそれを自分の剣で受け止めるまで、おそらく1秒もかからなかった。
「残念だよ、琳。 君だったら分かり合えると思ったのに」
「そうですね。クリフ様。 ですが僕はあなたの考えに賛同しかねます……」
「そうか!」
クリフトルは一気に剣を振り、セフィルと距離をとった。
「だったら力ずくでこちら側に引き入れようか?」
不敵に笑うクリフトルにトーヤはすかさず言い返す
「セフィルさんがお前なんかの言いなりになるものか!」
一瞬で魔方陣を完成させ、クリフトルに光の刃を降らせた
「……っく! 光の魔術!? 珍しい人材を見つけたものだ!」
刃を大半は弾き飛ばしたクリフトルだったが、思いのほか強力な祖の魔術は彼の白い衣装をところどころ裂いた。
「本人には当たらなかったか!」
悔しそうに言うトーヤにコウハは武器を構えて言った
「まずは俺に任せろ!」
「セフィル!我々が奴の隙を作る!その内に!」
フィアールも大剣をクリフトルにむけ、一気に彼と距離を縮めた。
「すごい」
トーヤは久しぶりに見るコウハの戦いぶりに呆然とつぶやいた。
村を出る前と比べ、格段に腕が上がっている。
これがレントの修行に耐えてきた成果なのだ。
「……たかが、二人の人間の攻撃、そんなもので私の隙を作れるとでも!?」
クリフトルは魔力を込めた刃を振りかざした。
真空覇が、トーヤたちを襲う
「さがって!」
ルナはトーヤとセフィルをかばうように、彼らの前に立ち、杖をかざし、空中に魔方陣を出現させた。
それはクリフトルの攻撃を吸収し、淡い光を放つ。
「返すわよ!」
魔方陣から、真空覇が放たれる。
攻撃が当たる直前、フィアールとコウハは危険を察知し、クリフトルから距離をとった。
「ぐわ!」
自身の攻撃をまともに受けたクリフトルに隙ができる。
「炎よ!わが敵を焼き尽くせ!」
ルナのその言葉に一瞬遅れてクリフトルの足元に魔方陣が現れる。
そこから現れる炎が彼を襲う
「ぐうう、人間どもが!」
彼が剣を一振りすると炎が消えた。
「まだ、私の魔力じゃ足りないみたい」
「いいよ、次は俺がやる!」
ルナの作ったチャンスにトーヤはクリフトルに光の刃を浴びせた。
「クリフトル!これで終わりだ!」
「ふっ、未熟な剣ごときで私を倒せるとでも……」
不敵に笑うクリフトルだが、トーヤは構わず突っ込み、クリフトルに正面切ってぶつかった。
ギリリ
剣と剣が交差する
バキン
折れたのはクリフトルの剣
「これで俺たちのほうが有利だ!」
「ちっ、」
クリフトルは距離をとると、複数の魔法陣を出現させた
「くらえ!」
彼の魔法がトーヤたちを襲う
もうだめだと、トーヤたちが魔法にあたる前に目をつぶった瞬間
「止まらず動く時よ……凍れ!」
セフィルの言霊によって間一髪、魔術はその動きをぴたりと止めた。
「我が障害は無へと帰り、我が道を示せ」
続く言霊で魔法は消失した。
「……琳、腕を上げたな」
苦しげに言うクリフトルにセフィルは口を開く
「我と契約せし闇の精霊。我が声を持って答えよ。今こそ断罪の時……我の障害となる罪人は等しく罰を……そして、抗うものには死を持って償うがいい―――すべてを無に帰すまで……」
非情なる言霊。
闇の炎がクリフとを襲う。
「ぐわぁぁぁああああ!!!」
地にひれ伏した彼にはまだ息があった。
「これで、最後だ!」
トーヤが彼の胸を貫いたとき、クリフトルの体はさらさらと砂のように消えていった。
「元々が偽りの生。無へと帰るが運命」
静かにセフィルが呟く。
トーヤはクリフトルのいた場所を見て、呟いた
「もう、終わったんだよね?」
トーヤの言葉にセフィルは笑顔で答えた。
「いや、――――――」