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第十八幕 ―レントの修行―

 ようやくラメドのメンバーのいる屋敷に戻ったトーヤは、やっと休めるとほっとしながら門をくぐった。

 その時

 シュっ

「ぅわ!!」

 何かトーヤより一回り大きいものがトーヤの前を飛んで行った

 ドサリ

 門から100m先くらいに落ちたそれは

「コウハ!」

 まるでぼろ雑巾のようにズタボロにされたコウハだった

「一体何が……」

 呟いた瞬間今度はコウハの片手鎌が飛んできた。

 幸いそれは、トーヤの前髪を2~3本切断しただけだったが……。もしこれが当たったらと考えてしまったトーヤの背筋を冷たいものが走る

「何をやっている。立て!」

 そう言ったのは、長剣片手のいかにも真面目そうな青年、レントだ

「れ、レントさん?」

 トーヤは足元の目を回して倒れているコウハを見た。

「えっと、どういうことですか?」

「稽古だ」

 きっぱりとレントは言った

 つまり彼との稽古中に、コウハは吹っ飛ばされたようだ

「……いくらなんでもきつすぎんんじゃ……」

「いや、今日はまだ優しいほうだ」

 トーヤの言葉をさえぎって、セフィルが言った

「確か最短記録は30分だったな」

「何が?」

 トーヤが聞くとセフィルは、世間話をするような軽い口調で言った

「レントさんの弟子になって辞めた人」

「たった30分稽古しただけで辞めたの?」

 トーヤは驚いた。

 一体、どれだけ厳しい訓練を受けたのだ。コウハは!

「いや、今日はまだ優しいほうみたいだが」

「嘘!」

 これだけズタボロで優しい?

 セフィルの言葉にレントはほお……と呟いた

「こいつの状態を見ただけで、わかるとは腕を上げたな、セフィル。」

「……毎回あなたの訓練を受けてズタボロになった兵士を、回復させるのは僕やサラさん、フォンさんの仕事ですので」

「今月でもう10人以上やめていったからな。 今回はそれを反省して優しくしたのだが……完全に伸びきっているな」

 レントはコウハを見て、軟弱者めと呟いた。

 そんな彼に一言

「それはあなたが尋常でない体力の持ち主だと自覚してから言ってください。」

「尋常じゃない体力?」

 トーヤは首をかしげた

「この人にとってどんな断崖絶壁も、そこら辺の山を登ることと同じだ。」

「は?」

「フルマラソンを2時間以内で走り切って、息切れ一つせずに“もう終わったのか、もの足りない”なんて言った人だぞ。」

「……嘘」

 顔を引きつらせるトーヤに一言

「本当だ」

 そう言ったのはレントだった。

 彼はしかしと続ける

「俺よりフィアのほうが厳しいと思うが?」

「否定はしません」

 レントの言葉にセフィルはうなずく

 いったいどこまで厳しいのかと聞くと、レントは簡潔に言った

「今まであいつの修行を途中で辞めなかったのはセフィルだけだ」

「………厳しさの凄さがよくわかりません」

 セフィルだけというと……いったいどこまで厳しいのか……

 セフィルは過去を思い出しながら言った

「出だしがフルマラソン、そのあと魔術の訓練。腕の力だけで5mの上り棒を登るという訓練もやったな。そして2時間程試合をして、素振り。ここまでで午前中だ。午後はまあ、時と場合によって違うが……だいたい午前とあまり変わらないな。 あとはレベルの高いモンスターの森に一人置き去りにされたりもしたな。」

「……よく生きてこれたね。」

 トーヤは同情の眼差しをセフィルに向ける。

「真冬に薄着で訓練したり、真夏に分厚い防具をつけて試合したり……本当につらい毎日だった」

 なんでも、フィアの修行はレントの修行のように速攻で音を上げて辞める人間よりも、だんだんきつくなって辞める人間のほうが多いらしい。

「修行ってつらいんだね」

「当たり前だ。 つらくない修行は意味がない」

 セフィルの言葉にトーヤはこれからの日々を思い、溜息を吐いた












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