第一七幕 ―光の力―
『これで完了!』
ミハルの声とともに目を開いたトーヤは自分の体を見た
「何も変わっていないみたいだけど?」
「そうすぐに何かが変わるわけないだろう」
自分の体を触ったりつねったりして、どこか変わったところはないか調べているトーヤにセフィルはうんざりしたように言った。
「光の力を手に入れたからといってそれをすぐに使いこなせるとは限らない。」
「じゃあ、どうすればこの力を使いこなせるの!?」
「……アークは確か半年くらいだな。一日8時間の睡眠と食事、風呂やトイレの時間を除いて、ほぼすべての時間を修行につんで、だ」
「…………そんなにかかるんだ」
トーヤはがっくりと項垂れた。
人生そう甘くはないものである。
「お前は若いから、それくらいはあっという間にできるさ。」
「……なんか年寄りみたい。」
「お前よりは年上だ。」
……外見年れいはあまり変わらないけどね。
そう思ったが、トーヤは口に出さなかった。
そして、祠から帝都へ帰る途中……
自分たちの周りから不穏な気配。
「……モンスターか。」
冷静にセフィルは言うが、その数はおそらく10、いや、下手をすればそれ以上だ。
「セフィルさん!何でそんなに落ち着いているのさ!! 武器を構えてよ」
「いい機会だ。 ミハルからもらった光の力を試してもらおうじゃないか」
だから、一人でこれを何とかしろ。
そう言ってセフィルは木の上へ身軽に飛び乗ると、そこから高みの見物というような姿勢をとった。
「あ!セフィルさん、ずるい!!」
「何がずるいんだ?」
「手伝ってよ!」
「口を動かす前に手を動かせ。」
でないと……
セフィルが言った時モンスターの鋭い一撃がトーヤを襲った。
「うわ!」
間一髪でよけた。
トーヤがいた地面を見てみると、深く地面がえぐれている。
サアーっとトーヤの顔が青ざめる。
「……下手をしたらしぬことになる。」
「もっと早く言ってよ!」
言いながらも、トーヤは的確にモンスターを倒していた。
そしてモンスターと距離をとり剣を地面に突き立て、集中した
「おれの中に眠る光の力よ……」
小さくつぶやくと、地面に巨大な魔法陣が現れた。
そこから出現した光の刃が、モンスターの体を貫く。
最後の一匹を貫いたと同時に魔法陣は消え、トーヤは膝を折る
「はあ、はあ………なんとか、全部……たおし、た……よ」
自分の顔を覗き込むセフィルに、トーヤは得意げな笑顔を見せた
「………まずまず、と言ったところか」
「ちぇ、少しはほめてくれたっていいのに」
「甘ったれるな。これは力を無理やり引き出して爆発させただけにすぎない。 ちゃんと制御できないともろ刃の剣になる。」
「“もろはのつるぎ”?」
「そうだ。簡単にいえば、さっきのように魔法が発動したはいいが、発動後、体力の限界で倒れてしまう。もう少し魔力を抑えろ」
「えーと、こう……かな?
トーヤは自分の掌の中に光球を出してみた。
「……こんな感じ、かな?」
「そうだ。 そして小さな力を複数出す」
「ふ、ふくすう?」
「まだ無理があるだろう。 とりあえず、さっさと戻るぞ!」
「はい!」
トーヤは先を行くセフィルの背を、疲労のたまった体にムチ打って追いかけた。