第十六幕―battle―
ミハルから聞かされた話はこうだ。
『まあ、簡単に言えば、ここは人間を試す試練場なのよ。
人間と私が戦って、ここに封印されている力を扱える人間かどうか試すの。
だから、ここには試練を受ける―――私と戦う人間しか入れないのよ』
つまり、セフィルがいつまで経ってもこのホールに足を踏み入れないのは、そういった理由があるから、らしい。
「僕は手出しできないからな。……お前はお前の力をすべて出して戦え」
『他に質問は?』
「それじゃ、セフィルさんはこの試練、ミハルさんと戦ったことがあるの?」
その質問にミハルは首をかしげた
『どういうことかしら?』
「特に理由はないけど、なんかセフィルさん、詳しいなって思って……」
『セフィルは、“私”とは、闘っていないわ。彼が試練を受けたのは別の祠。……もう質問はいいの?』
「はい。 お願いします!」
トーやは剣を構えた
『そう来なくっちゃ!』
ミハルはトーやに光の玉を飛ばした。
それを剣ではじき、ミハルに一撃を入れる。
『……ッ!』
ザシュッと、白いドレスが引き裂かれ、そこから赤い液体が流れ出た。
「あ、すいません!」
それを見て、トーヤは剣を引くと、ミハルと距離をとった。
『あら、やさしいのね!』
その隙の見逃さず、光の刃がトーヤの体を貫こうとする。
「うわ!」
間一髪で光の刃を避けたトーヤは、剣に魔力を貯めた。
「炎よ!」
アークから教えてもらった火の民の力。 剣に炎をまとわせて攻撃する。
『炎ね……光よ!」
だがミハルは炎の剣を光の壁でさえぎった。
「……!?」
光の壁の力で炎は消え、はじかれた衝撃でトーヤは後方へとんだ。
「防御魔術も使えるの!?」
『防御魔術は基本的に光の力よ。……それより……」
「??」
『貴方はこの試練の意味をわかっているの?』
え?と、つぶやく前に光の刃が飛んできた。
―――試練の意味?
―――ミハルと闘い勝つことじゃないのか?
「ちがうな。」
トーヤの考えを読み取ったように、セフィルは言った
「この試練はミハルに勝つことじゃない。 闘うことはそもそもお前の技量を見るためだけのもの。 試練には他に別の意味も含まれている」
「別の、意味??」
「そうだ。 簡単に言えばお前は負けてもいいんだ。 死んではいけないが、この試練に合格するある条件さえ満たされれば、お前は祠に封じられている光の力を手にする資格があるということだ。」
ある条件
一体何のことだろうか?
ゆっくり考えている暇はない
トーヤはルナのみようみまねの防御魔法を使い、防御に徹することにした。
とりあえず、自分の周りにバリアーをはり、考える時間を稼ごうとしたのだ
『へぇ~』
ミハルは防御魔法を使ったトーヤを見て、くすりと笑った
『試練の意味が解ったのかしら?』
「トーヤのような馬鹿がそう簡単に意味を察するとは思えないが?」
『それじゃあ、魔法を使ったのは?』
ミハルはトーヤを守るバリアーを指差す。
「単なる偶然だろう? それより、確かめなくていいのか?」
『何を?』
「あいつの力だ」
う~ん、とミハルは唸った。
『もうちょっと強力なのを出してほしいんだけど』
はあ、とセフィルはため息を吐いた
「仕方ないな」
トーヤに聞こえないようにミハルと会話していたセフィルはトーヤに言う。
「トーヤ! 一つヒントをやる」
「ヒント?」
「そうだ。 ここは何の祠だ?何の力が眠っている?お前は何の力を取りにきたんだ?」
「……ちから?」
トーヤはつぶやく。
そんなもの決まっているじゃないか。俺は……
そこまで考えてはっとする。
そうか“そういうことか”
やっと、試練の意味をつかんだトーヤは口元に笑みを浮かべ、意識を集中させた。
―――これが俺の全力だ!
あたり一面、光に覆われる。
光が収まると、ミハルはホールの結界を解いた。
『合格、よ』